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3688号 2024年3月30日

「エンゲージメントとは何か」を紐解いてみる(5) ~エンゲージエントと心理的資本の関係~

(本日のお話 3715字/読了時間7分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は10kmのランニング。
その他3件のアポイント。
また研究プログラムの開発などでした。



さて、本日のお話です。

今日も注目のキーワードの「ワークエンゲージメント」について、より深く紐解いてみたいと思います。
今回の記事では、ワークエンゲジメントに関連する「心理的資本」というキーワードについて、紐解いていきたいと思います。本日は、以下書籍の第五章がテーマです。

タイトルは、

【「エンゲージメントとは何か」を紐解いてみる(5)
~エンゲージエントと心理的資本の関係~】

それでは、どうぞ。

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※参考書籍:『ワーク・エンゲイジメント -基本理論と研究のためのハンドブック(第5章)』
アーノルド・B・バッカー (編集), マイケル・P・ライター (編集), 井上 彰臣 (翻訳), 大塚 泰正 (翻訳), その他
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■ワークエンゲージメントとポジティブ組織行動学

2000年になり、ポジティブ心理学が登場したことがきっかけで、4D(病気:Disease、損害:Damage,Disoroder:障害、不具合:Disability)への対処のかわりに、人間の可能性に注目するような流れに、組織行動学における焦点も変化をしてきました。

そ中で「ポジティブ組織行動学(Positive organizational bahavior(POB)」という、組織にける従業員のパフォーマンスを高めるためことを学問とした領域があります。そしてこの中に、本日のテーマである「心理的資本」があります。

■心理的資本とは何か

そして本書の研究者等は、”ワークエンゲージメントの課題に、心理的資本が役割を果たす”という概念モデルを提唱しています。

では、心理的資本とは一体どのようなものでしょうか?以下のように定義をされています。

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(1)困難な課題を達成するために、必要な努力ができる自信をもっていること(自己効力感)
(2)現在と未来の成功について、ポジティブに考えること(楽観性)
(3)目標に向かって粘り強く取り組み、必要があれば、成功するために、目標達成までの道のりを軌道修正すること(希望)
(4)問題や逆境に悩まされたときも、成功するために、屈せず、立ち直り、乗り越えること(レジリエンス)これらによって特徴づけられる、個人の成長におけるポジティブな心理状態。(Luthans ea al., 2007b, p.3)
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■心理的資本とワークエンゲージメント

さて、ワークエンゲージメントの3次元は「活力・熱意・没頭」であることをこれまでの記事でもお伝えしてきました。
この3次元の要素に対して、心理的資本の4つ「自己効力感・楽観性・希望・レジリエンス」が影響を与えるというモデルを示しています。かつ、その間に「ポジティブな情動」が媒介するとしています。

では、具体的に心理的資本がワークエンゲジメントにどのように影響を与えると考えられるのでしょうか。

◯自己効力感とワークエンゲージメント

自己効力感は、以下の4つから生み出されます。
1)直接的達成経験、2)代理経験、3)言語的説得、4)生理的・情動的喚起の4つです。それぞれ以下解説をします。

1)直接的達成経験
「自らやり遂げた」という実感を得ること。身近な目標を打ち立てて、それを達成することで直接的な達成経験が培われていきます。
2)代理経験
第三者の成功体験を見たり、聞いたりすることでも自己効力感は高まります。たとえば、近しい能力の同僚が達成した、となると「彼/彼女ができたなら、自分もできるかも」と思えることがあります。
3)言語的説得
自らのスキルや能力を、他人から褒められると、肯定された気分になることです。
「あなたならできる」「あなたはすごい!」そう褒められると(=言語的説得をされると)、そんな気がして、自己効力感が高まる、ということです。
4)生理的・情動的喚起
感情的な変化の状態によって自己効力感が形成されることもあります。自己効力感は、「日常の気分や体調」により影響されるという特徴を持ちます。
たとえば、お酒を飲んで気分が大きくなっているときは「自分ができる!」と思えたり、逆に他の事に失敗して落ち込んでいるときは自己効力感が下がったりします。

そして、結論、「効力感」は、ワーク・エンゲージメントの「活力・熱意・没頭」にそれぞれ直接関連していると考えられます。

◯楽観性とワークエンゲージメント

次に、楽観性ですが、「楽観的な人々とは自分に良いことが起きると予期する人たちであり、悲観的な人々とは、自分に悪いことが起きると予期する人たちである」(Carver & Scheier, 2002)と言われます。

そして、良い結果を期待すると、それによって心理的な余裕を持つことができる。そのことによって、眼の前の課題を引き受ける可能性が高くなる、と考えられます。よって、心理的に余裕を持つことは、没頭を通じてエンゲージメントを高めます(Kahn, 1990)。

結論、「楽観性」はワーク・エンゲージメントの「熱意・没頭」という構成要素と直接関連していると考えられます。

◯希望とワーク・エンゲージメント

希望は、「成功するための(1)力(目標に向けて方向づけられたエネルギー)」と(2)方向性(目標を達成するための計画)の相互作用によって引き出された感覚によって、ポジティブに動機づけられた状態」と定義されています(Snyderra, 1991)。

希望は、溜間なく目標を追求する力であり、目標を達成するための方法を見出す力である、とのこと。そしてこれは困難な状況に遭遇する中でも、動機づけを行いエネルギーを注ぐことを可能にする力でもあります。

よって、「希望」はワーク・エンゲージメントの「活力・熱意」という構成要素と直接関連していると考えられます。

◯レジリエンスとワーク・エンゲージメント

レジリエンスは「逆境、不確実性、葛藤、失敗、あるいはポジティブな変化、発達、責任の増加からさえも立ち直る、または『跳ね返る』ポジティブな心理低能力」と定義されています(Luthans, 2002a, p,702)。

逆境に対して生き残るだけでなく、ポジティブに順応することによって、人は成長していきます。レジリエンスのある人は、自分にとって快適な空間以外の場所でも、自分の気持が安らいでいることに気づくことがあるそう。

レジリエンスを含む心理的資本は「心理的資源における『貯水池』や『銀行』のようなもので、困難に直面したときでも、心理的資源を引き出すことができると考えられる(Avolio & Luthans, 2006)そう。

そして、心理的資本のうち、「レジリエンス」の資源は、困難な状況に対する”緩衝効果”を生み出すことから、バーンアウト(燃え尽き)を誘発する仕事の要求度があってもワーク・エンゲージメントを維持することができる(Bakker, Demerouti, & Euwema, 2005)と述べられています。

このように、仕事の要求度によるネガティブな影響を打ち消す資源がレジリエンスであることから、「レジリエンス」はワーク・エンゲージメントの3つすべての要素「活力・熱意・没頭」の全てに影響を与えると考えられます。

■「ポジティブな情動」が影響を与える

上記のように、心理的資本がワーク・エンゲージメントに影響を与えることが考察されましたが、もう一つ重要な概念が「ポジティブな情動」というものです。

このことを考える際に、「同じ出来事がおこったときに、ある人にとってはストレスフルな情動を引き起こすのに対して、別の人には引き起こさないことがある」という、事象を考えてみるとわかりやすいです。

たとえば「やったことがない仕事のアサインがあった」とします。その際に、”心理的資本が低い(楽観性が低い、希望が低い等)”としましょう。すると、「ああ、失敗しそう」「重たい仕事屋だなあ」と、ネガティブな情動を引き起こす可能性が高まると考えられます。

逆に、”心理的資本が高い(楽観性が高い、希望が高い等”)とすると、「まあ、なんとかなるっしょ」「良いチャンスになるかもな」と、『ポジティブな情動』を引き起こす可能性が高まると考えられます。

人は「自動的な解釈」をするもの。そして、その解釈により「情動が起こる(感情が生まれる)」するものですが、その解釈に「心理的資本」が影響する、ということになるようです。

そして、ここまでの話をまとめた概念モデルが以下になります。

■まとめと個人的感想

ワーク・エンゲージメントも心理的資本も、それぞれ理解はしていましたが、その構成要素間で、直接影響があるものはどれなのか?そのような考えはしたことがなかったので、大変勉強になりました。

研究においては、概念を一つずつ明確にしていって、そして相違点・類似点を検証していくことで、それが実践にいかせれるものに磨き上げられていくように感じます。

実際に時間がなく、成果を重視する世界においては、遠回りに感じる話なのかもしれません。ただ、こうしたことを丁寧に考えることで、起こっている事象を観察し、分析する力も磨かれるのではないだろうか、そんなことも感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

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