「優しさ」という名の”経験値どろぼう”
(本日のお話 1660字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
また夕方からは、クライアント企業の管理職の方とお食事をご一緒させていただきました。(K山さん、Kさん、楽しい時間をありがとうございました!)
いろいろな話をさせていただいたのですが、その時の「後輩が育たないと嘆く先輩社員の話」が、「めっちゃあるある!」と思い、共感・納得するものでした。
今日はそんなお話からの気づきを、ゆるりと書いてみたいと思います。
それでは、どうぞ!
■後輩が育たないと嘆く中堅社員
IT会社で部長を務める方が、現場あるあるのお話で、こんなお話をされていました。
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「後輩が育たないんです」と嘆く、メンター役の中堅の社員がいます。
彼は「若手が難しい仕事に直面すると、色々助けてやってしまう」。
”優しい”から、つい手を出したくなるのでしょう。
しかし、若手が「新しい仕事を経験する機会」を奪っていることに、実は、本人が気づいていない。知らず知らずに「経験値どろぼう」になっている。
それで「後輩が育たない」というので、そりゃそうだと思いますよね。
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というお話。
本人は、後輩が困っているから、善意で助けているつもりになっている。
しかし、それが結果的に、本人の成長を妨げていると相反する結果になっているわけです。
でも、こういうことめちゃくちゃ現場であるよな…とも思います。
■社会人の学びは「経験が7割」
さて、有名な学習理論の一つに「経験学習」というものがあります。
これは、「人は経験から学ぶ」というシンプルな理論です。
より具体的には「経験→省察→教訓化→実践」という4つのプロセスで成り立ちます。
何かしら経験をして、成功体験でも、失敗体験でも得る。
そうして、失敗や成功の理由を振り返ると、失敗は繰り返さないように、また上手くいったことは再現できるように、教訓化することができる。
そうした教訓が、自分のこれからに役立つ「武器や防具」になりうるわけです。そして、その起点はやはり「経験」です。
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経験学習モデル
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0046-experiential-learning.html
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また、別の角度からでは、こんな話もあります。
米ロミンガー社の調べによると、「何がリーダーとしての成長に役立ったのか」を調べた際に、「経験」が70%、「他者からの薫陶」が20%、そして、「研修」が10%であったという結果があります。
ここでも、やっぱり「経験」が大事なわけです。
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70:20:10の法則
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0046-experiential-learning.html
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■「経験資源」という共通認識を持つ
上記の話も、当たり前の人にとっては、当たり前の話です。
しかし、知らない人は、知らないものである。
そうすると、はからずも「経験値どろぼう」となり、相手が育つ機会を奪ってしまうことにもなりかねません。
ロールプレイングゲームでも、強敵を自分の手で倒すから「経験値」が手に入るわけですが、こうした「強敵との遭遇」は『経験資源』とも呼べる、貴重なものであるという共通認識を持つのが大事なのでしょう。
もちろん、必要なアウトプット(品質と期限)を達成するために、手を差し伸べなければいけないところはあるでしょう。
でも、ギリギリまで戦わせて経験を積ませようと思えるかどうかは、こうした「経験が人を育てる(経験学習)」という考えが、理解されていないとも言えるのかもしれません。
だからこそ、
「経験こそが人を育てる」
「経験は貴重な資源である」
ということを、職場の共通認識にすることが大事なのだろうな、そんなことを思った次第です。
■まとめと感想
ということで、まとめです。
・「経験値どろぼう」は無自覚に起こる
・経験学習の理論では、「経験→省察→教訓化→実践」のサイクルが重要
・リーダー育成の7割は「経験」によるものという調査結果も
・経験は“資源”であり、それを奪わない仕組み・文化が必要
善意でつい手を出してしまう気持ちは、よくわかります。
でも、未来を担う若手の「強敵との遭遇」を奪わないようにしたいものですね。
私自身も気をつけたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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