世界で使われる「強み診断3選」を徹底比較してみた
(本日のお話 2854字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き、沖縄に来ております。
昨日は3件のオンラインの打ち合わせ。その他執筆など。
また5kmのランニングでした。
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さて、本日のお話です。
本日も「強み」についてのお話をお伝えしたいと思います。
それでは、どうぞ!
■なぜ人は「強み」を言い表せないのか?
世の中には、自分のことを知るための様々な診断があります。
血液型、診断動物占い、MBTIテストなど…。
自分というわかりそうでわからない存在を「〇〇タイプ」などと表現されることは、自分の知らない自分に出会うことができるようなそんなワクワク感があります。いつの時代も根強い人気です。
「自分を知る」上でムズいのことの1つが、「自分のことを上手く言い表せない」ことです。たとえば、小学生に「あなたの性格はなんですか?」と聞くと、みんな一様に「明るいです」「優しいです」と書いたりします。その理由は、「明るいとか優しい以外の性格の言葉を知らないから」です。
そしてこれは「強み」についても同じです。
たとえば、私たちが「強み」を表す言葉には、こんなものが並ぶのではないでしょうか。
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・頭がいい
・優しい
・頑張り屋さん
・シゴデキ(仕事ができる)
・リーダーシップがある
・まじめ
・コミュ力がある
・気が利く
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こう並べてみると思うのですが、私たちが「強み」を表現する語彙は、思っている以上に少ないです。また抽象的で漠然としています。
人は「自分を表現する言葉」を多く知らなければ、自分の内面を適切に表現できません。強みも同じで「強みを表現する言葉」を多く知らなければ、自分の強みを適切に表現できないのです。
■強みを見つけるには「強みを表現する言葉」を手に入れること
発達心理学では「言葉の発達=自己理解の発達」と考えられています。
小中学生を対象にした「強み見つけて育てる介入:ストレングス・ジム」なる研究では、「強みを表す言葉を教える」ことが、カリキュラムに組み込まれています。
つまり「強みを見つける」ためには、まず「強みを表す言葉を手に入れる」ことが重要ということです。そして、強みを表す言葉を手に入れる上で役に立つのが「強み診断」なのです。
■世界で使われる「強み診断3選」を徹底比較
2020年ケベック大学をはじめとした研究者らが発表した論文において、「科学の文献における強みの3つの学派」についてまとめられています(Miglianico et al., 2020)。
それによると、「世界3大強み診断」とも呼べるものが以下の3つです。
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(1)クリフトンストレングス(ストレングス・ファインダー)
(2)VIA-IS(Value in Action Inventory of Strength)
(3)Strength Profile
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それぞれの診断は特徴がありますが、いずれも「えっ、こんなのも強みって言えるんだ!」という「強みを表す新しい言葉」を私たちに与えてくれることは共通しています。
「あなたは自分で気づいてないかもしれないけど、こんな強みがあるんだよ!」と言ってもらえると、それだけで「自分の見えない強み」が立ち現れる気もするのが不思議です。(これを心理学では「言語的説得」なんて言います)
では、どのような強み診断があるのか、ポイントを見てみましょう。
■(1)クリフトンストレングス:成果とつながる"資質"を知る
まず紹介するのは、米Gallup社が開発した「クリフトンストレングス(通称:ストレングス・ファインダー)」です。世界3500万人が受けており、日本でも一番人気の強み診断です。やったことがある人もいらっしゃるのではと思います。
このツールの一番の特徴は、「優れた成果を上げる人々(教師・営業・マネージャーなど)へのインタビューと行動観察」を通じて、成果と相関する思考・感情・行動のパターンを抽出している点にあります。
つまり、成果に直結する強みを測る設計になっているため、仕事において非常に活用しやすいツールです。
私(紀藤)も、米Gallup社認定ストレングスコーチとして、これまで3000名以上の方に研修を提供してきました。
企業において「強みの研修」を行う時は、クリフトンストレングスを最も多く活用していますし「強みを活かす人材開発・組織開発」において、非常に有用だと感じています。
ただし、Gallupは民間企業のため、研究データは非公開でピアレビューされていないという点は、信頼性の担保という観点では、ややマイナスポイントです。
■(2)VIA:人間の「美徳」から導かれた24の性格の強み
次に紹介するのは、ポジティブ心理学の中心人物であるセリグマン博士たちが2004年に開発した「VIA」です。こちらは「性格の強み(Character Strengths)」に特化した科学的なアセスメントです。
開発の背景はユニークで、古今東西の宗教・哲学・思想(キリスト教・イスラム・仏教・アリストテレス・孔子など)に共通する「人間的美徳」を文献から抽出。その結果、55名の研究者により24の「性格の強み」が定義されました。
このツールの視点は「成果」ではなく「人間の良さ、人間らしさ」です。自己理解やレジリエンス、幸福感、ウェルビーイング向上との相性が抜群です。
また、ピアレビューされ、信頼性の高い論文として公開されているため、心理学的な信頼性は非常に高いことも特徴です(クロンバックのアルファ.75〜.90)。
■(3)Strengths Profile:60の強み+弱みでビジネス活用がしやすい
最後に紹介するのが、イギリスのポジティブ心理学者リンレイ博士が2008年に開発した「Strengths Profile」です。
これは、最も細かく具体的な「強み」の分類を持ち、ビジネスやリーダーシップ開発での活用に優れたツールです。60の強みを「実現された強み/未活用の強み/学習された行動/弱み」という4分類でレポート化する点が特徴です。
強みは5つのカテゴリ(あり方、コミュニケーション、モチベーション、関係づくり、思考)で分類されています。さらに、「時間の有効活用」「書く力」「フィードバック」など、現場でそのまま使える強みも多いのが魅力です。
ただし、カテゴリが細かく読み解きが大変です(日本語もない)。よって、個別のコーチングと掛け合わせて、中長期的に自分の強みを開発をすることがお薦め活用方法だと感じます。
実際、Strengths Profileを使って管理職の変革型リーダーシップが向上した研究(Mackie, 2014)もあるなど、組織開発や人材開発の実践に効果を発揮した事例があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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