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4185号 2025年8月10日

今週の一冊『プレイフル・ラーニング』

(本日のお話 1897字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日より、大阪に来ています。
万博会場のとなりにある「舞洲」というところで
とあるワークショップに参加をしているところです。



……というお話に繋げつつ、本日のお話です。

毎週日曜日は読んだ本の中から1冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。
今週の一冊はこちらです。

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『プレイフル・ラーニング』

上田 信行 (著), 中原 淳 (著)
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2012年に出版された本書。
13年前となりますが、今なお色褪せず、むしろコロナ禍を経て、
対面の希少性を自覚した今だからこそ、ますます輝きを増している内容のようにも思います。

ちなみに、本書のキーワードのプレイフルとは
「本気で取り組むときのワクワク・ドキドキ感」「興奮と楽しさ」です。
そして、

「プレイフル・ラーニング」とは?・・・
人々が集い、楽しさを感じられる活動やコミュニケーションを介して、
学びや気づきを得ること。

となります。

言葉にすると、実にシンプル。
しかし、プレイフルほど、言葉を知っていることと体験することの差が大きい言葉も
少ない気がします。

実はこの土日に、本書の著者である上田先生が主催される「プレイフル・ラーニング」の1泊2日のイベントに参加しました。そこで、本書の内容をより深く理解できた気がします。

初めて参加しましたが、驚きの連続でした。このお話は改めて共有させていただくとして、本日はまず、本書に書かれている内容についてご紹介してみたいと思います。

それでは、早速参りましょう!

■本書の概要
本書では、「プレイフル・ラーニング(楽しさの中にある学び)」という学びのあり方を、教育研究と実践の両面から体系的に紹介しています。

著者の上田信行先生は、ハーバード大学やMITメディアラボでの学びを基にネオミュージアムを構築し、ワークショップを通じて「楽しさが学びを生む」場づくりを探究してきました。

そんな上田先生のワークショップづくりの真髄を、中原淳先生がナビゲーターとして学術的視点を補い、理論と体験を融合させた一冊となっています。

■プレイフルとは、学術と体験の融合である
この本で特に印象的だったのは、「プレイフルラーニング」という概念の生みの親である上田先生が、どのようにしてこの概念を育んできたかという軌跡です。

1970-80年代の日本の教育はまさに「道場」という名の通り、楽しく学ぶという概念がほとんどありませんでした。音楽などにのめり込んでいた上田先生は、その頃、アメリカのセサミストリートに衝撃を受けます。
アメリカでは子供が「興味を持ちながら学べる方法」が研究されたことを知ったからです。

たとえば「子供がつい注目してしまうのはアルファベットか、クッキーモンスターか?」といった認知的な研究をします。
その結果、クッキーモンスターの上にアルファベットを提示するのではなく、アルファベットの裏側にクッキーモンスターがいる形にすると、確実にアルファベットを読んでもらえる、そんな学習設計の工夫が、実際の教育に活かされていました。

あるいは、子供が自分で遊べるプログラミング(亀が移動して図形を描くアルゴリズム)により、「自分で描いて学ぶ」という構築主義が注目されました。子供は円を見て覚えるのではなく、自分で描いて体験として学んでいく、などもあります。

さらには、他者との関わりの中で学ぶ「社会構成主義」も研究が進みました。他者と共に学び、支援を受けながら学んでいく理論です。

「人が学ぶ」ということは、導管で人の器に知識をいれるものではなく、自ら能動的に働きかけ、他者や環境の相互作用で学んでいくことを上田先生は、学びの最前線でハーバード大学の博士号を取得します。

▽▽▽

そんな学術的なバックボーンにかかわらず、実際の上田先生のエピソードは実に破天荒です。
学びのコミュニティハウスを作ったり、学びが自然と深まる建造物を自宅売却の資金で作ったりと、その探究心は尋常ではありません。

そして実際の雰囲気も、堅いアカデミックな印象は全くなく、実に自然体で、とても若々しくチャーミングです。こんなふうに歳を重ねたいと思わされます。

しかし実は、学術を実践に融合させる実験者であり、その結果が「全力で遊び、学ぶワークショップ」として形になっていることに気づくと、驚嘆せずにはいられません。

表層で見えている裏側にある、膨大な知見のすごさを、上田先生の半生と共に本書の前半で感じられるのが印象的な部分の一つでした。

■「楽しく学ぶ」の重みを知る
近年では「ワークショップ」という言葉も広く知られ、アイスブレイクや楽しいアクティビティなどリラックスできる学びの場も増えました。

私も感覚的・経験的に、皆が自由に話せる空気を感じて取り入れてきています。しかし、この本を見て、そして上田先生のワークショップに参加して、自分は「自分の楽しめる要素は、まだまだ表面的であった」と思わざるを得ませんでした。

本書の感想でこんなのがありました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・学びは楽しくというけれど、”重み”が違っていた
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まさに、この本を表している言葉だと感じます。

「楽しく学ぶ」とは、単に和やかに進めたり、楽しいアクティビティをいれることではありません。裏側に骨太な学習理論があり、それに真摯に向き合い、準備を惜しまず、学びを最大化する結果として形づくられたものです。

この文脈を理解した上で空間を設計するか否かで、ワークショップにおける「学びの体験」の深さは大きく異なるのだと感じさせられます。

また明日、この著書で書かれている「プレイフルな学びの場」の一つが、どのようなものだったのかは、書き記してみたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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