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4212号 2025年9月6日

「強みに基づくリーダーシップ」は、エンゲージメントを媒介して、成果を高める ー中国104チームへの縦断研究ー

(本日のお話 2675字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。

強みの研修動画の作成などでした。
計画的に進められず、なんとも自分に不甲斐なさを感じておりますが
なんとか週末で形にできました。
もう少しブラッシュアップしたいと思います。

その他、11kmのランニングなど。



さて、本日は、強み論文のご紹介をしたいと思います。

本日の論文は「強みに基づくリーダーシップ(Strengths-based Leadership:SBL)」に関する2023年の新しい研究です。
従業員556名、そして上司104名を対象とした104チームに対して、1ヵ月ごとに縦断研究を行い、従業員と上司の双方の評価を重ねた研究ということで、なかなかに精度が高そうなものです(結論、まだまだ甘いというツッコミが論文の最後に出てきますが…汗)

最初に、読んでみた感想をお伝えすると、「これまでの強みの研究で語られてきた様々な理論が統合されていて、めっちゃ面白かった…!」と思いました。

結果としては、「強みに基づくリーダーシップ(SBL)」はワーク・エンゲージメントを媒介し、タスク・パフォーマンスにつながることが示されています。
さらに、上司と部下の関係が高い時ほど、強みに基づくリーダーシップがワーク・エンゲージメントに与える正の関連が強いことも明らかになっており、SBLの効果も示されている論文です。

…と冒頭から色々述べてしまいましたが、以下、論文の内容をまとめてみたいと思います。

それでは、どうぞ!

■今回の論文

Title:Strengths-based leadership and employee work engagement: A multi-source study(ストレングス・ベースのリーダーシップと従業員ワーク・エンゲージメント:マルチソース研究)
雑誌名・出版年:Journal of Vocational Behavior, 2023年
著者:Jixin Wang, Shiyong Xu
所属:Department of Psychology, Education, and Child Studies, Erasmus University Rotterdam, the Netherlands

■論文のポイント

◎背景
・ポジティブ心理学に基づく研究では、従業員は弱みに注目するよりも強みに注目することで、最適なパフォーマンスを発揮しやすいとされます。

・SBL(Strengths-based Leadership)は従業員が自身の強みを特定・活用・発展させることを支援するリーダーシップのことで、従業員の幸福感や創造性、パフォーマンス向上に寄与することが示唆されてきました。

・しかし、先行研究は主に横断的データであり、因果的メカニズムや境界条件(LMX)に関しては未解明でした。

◎研究の概要
・本研究は、ストレングス・ベース・リーダーシップ(SBL)が従業員のワーク・エンゲージメントを通じてタスク・パフォーマンスに影響を与えるかを検証し、さらにリーダーと部下の交換関係の質(Leader-Member Exchange, LMX)がこの関係を調整するかを調べました。

・中国の556人の従業員とその上司104名(104チーム)を対象に、1か月間隔で2波の調査を実施しました。

・経路分析の結果、SBLは従業員のワーク・エンゲージメントを介して、上司評価によるタスク・パフォーマンスと正の関連を示しました。さらに、この関係はLMXの質が高い場合に強まりました。ただし、想定された「調整された媒介効果」は支持されませんでした。

■研究の方法

・対象: 中国の従業員556名(平均年齢33.5歳、女性51.8%)と上司104名

・調査: 2波(1か月間隔)

・測定尺度:
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・強みに基づくリーダーシップ尺度(8項目, α = 0.97)(※)
・ワーク・エンゲージメント(UWES-3, α = 0.93)
・タスク・パフォーマンス(3項目, α = 0.94, 上司評価)
・LMX(LMX-7, α = 0.92)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・分析: 確認的因子分析、経路分析(Mplus)、制御変数=年齢・教育・在職年数

◎結果
⑴ SBL → タスク・パフォーマンス:直接効果は有意でなかった
⑵ SBL → ワーク・エンゲージメント:有意に正の関連
⑶ ワーク・エンゲージメント → タスク・パフォーマンス:有意な正の関連

■本論文でわかったこと
・ポイント1:SBLがエンゲージメントを媒介してパフォーマンスに影響していた
・ポイント2:LMXが調整効果を示していた(SBL → エンゲージメント関係でLMXが有意に調整していた)

◎考察
・SBLは直接的に従業員のタスク・パフォーマンスを高めるわけではないが、ワーク・エンゲージメントを介して間接的に効果を及ぼす。
・また、リーダーとの関係(高LMX)がこのポジティブ効果を強めることも示された。
・従って、SBLは従業員の心理的資源を高める「ジョブリソース」として機能すると言える。

■まとめと感想
これまでの論文でも「職務資源要求モデル」や「調和のとれた情熱」といった概念は語られてきましたが、ワーク・エンゲージメントを通じてタスク・パフォーマンスにつながることを明確に示した研究は、ありそうでなかったような気がします。

やはり「エンゲージメントが成果(タスクパフォーマンス)につながる」という疑問が明確に示されており、強みに基づくリーダーシップの効果を、後押ししてくれるような論文だったように思います。

加えて「やっぱり関係性(LMX)が影響している」という点も納得感があり、上司とメンバーの関係性の重要さを改めて感じさせられる内容でした。

そして最後に、やっぱり自分は「強みの論文」を読むとテンションが上がるのだなあと感じ、改めてこのテーマが好きなんだと、自分自身のことを再確認した次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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