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4391号 2026年3月4日

タイミングを逃さす行動を起こす「if-thenプランニング」の強力な効果【

(本日のお話 3002字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

本日は、ある有名な論文のご紹介です。

「if-thenプランニング」という有名なテクニックがあります。
こういうものですが、見たことがある方も多いのではないでしょうか。

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もしXという状況になったら(if)、そのときはYをする(then)
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これは「実行意図(Implementation Intentions)」と呼ばれるもので、この実行意図を予め決めておくことで、実際に行動に移すことができる可能性が高まるという手法です。

とても有名なので、私自身数々のビジネス書でも目にしてきましたが、実際どのような論文なのか、そういえば見たことなかったな…と思い、実際に読んでみたところ「なるほど、こういう実験をやったのか」と納得度がぐっと高まりました。

たとえば、

・「困難な目標」のほうがより、実行意図は効く
・議論や対立などで「自分の意見を即時に表明するような場面」で効く

というような、ポイントを切り取っただけではわからないような話も見えてきて、実に面白いなあ……と思ったのでした。

ということで、早速中身をみてまいりましょう!

■今回の論文

・タイトル:Implementation intentions and effective goal pursuit(実行意図と効果的な目標追求)
・著者:Peter M. Gollwitzer / Veronika Brandstätter
・ジャーナル:Journal of Personality and Social Psychology、1997年
・所属:コンスタンツ大学(University of Konstanz)、ミュンヘン大学(University of Munich)

■30秒でわかる論文のポイント

・単なる「~を達成する」という目標意図だけでなく、「いつ、どこで、どのように行動するか」を具体化する「実行意図」の効果を検証した。

・クリスマス休暇中の課題を用いた実験で、実行意図を持つと、困難な目標の達成率が約3倍(22%から62%)に跳ね上がることが判明。

・実行意図は、行動の開始を「自動化」し、適切なチャンスが訪れた瞬間に即座に行動を引き出す強力な自己調整ツールである。

・特に「反論のチャンスを逃さない」といった、一瞬のタイミングが重要な場面で即時性を高める効果がある。

とのことです。

■研究の背景と目的

私たちは「痩せたい」「レポートを書き上げたい」といった目標(目標意図)を立てますが、それだけではなかなか行動に移せません。
誘惑に負けたり、絶好の機会を逃したり、あるいは開始を先延ばしにしてしまうからです。

本研究の目的は、こうした「行動開始の障害」を克服するために、「実行意図(Implementation Intentions)」がどれほど有効かを明らかにすることです。

実行意図(if-thenプランニング)とは: 「私は目標zを達成するつもりである」という抽象的な目標意図に対し、
「もし状況xに遭遇したら、私は目標指向行動を行う」という形式で、特定の状況と行動を事前に結びつけておく心理的な戦略のこと。

ちなみに、目標追求においては、4つの行動段階があると述べられています。
そして、上記の「実行意図」がそれぞれの段階の移行期における課題に効くのでは、というのが本論文の仮説です。

<目標追求における4つの行動段階>
⑴.決定前段階
ー↓(課題:目標意図の形成ができるか)
⑵.行動前段階
ー↓(課題:目標に向かった行動が開始できるか)
⑶.行動段階
ー↓(課題:目標達成の好機を逃してしまう)
⑷.行動後段階

■研究の方法

本論文では、3つの異なる研究が行われています。

◯研究1:クリスマス休暇中の個人的プロジェクト(相関研究)
・デザイン: 大学生を対象とした追跡調査。
・参加者: ミュンヘン大学の学生111名(分析対象は70~85名)。
・手法: 休暇前に「達成しやすい目標」と「達成しにくい目標」を挙げてもらい、それに対して実行意図(いつ、どこでやるか)を形成しているかを測定。 休暇明けに達成状況を確認しました。

◯研究2:クリスマスイブのレポート作成(実験研究)
・デザイン: 介入群と比較群(対照群)によるランダム化比較試験。
・参加者: 大学生86名。
・介入条件: 全員に「クリスマスイブの過ごし方を記したレポートを休暇中に書く」という目標を割り当て、半数のグループには「いつ、どこで書き始めるか」という実行意図を具体的に決めてもらいました。
・比較条件: 目標だけを与え、実行意図の指示は行わないグループ。

◯研究3:ビデオへの反論課題(実験室実験)
・デザイン: 行動の「即時性」を測る実験室実験。
・参加者: 男子大学生60名。
・内容: ビデオ内の人物の人種差別的な発言に対し、あらかじめ決めた「好機」が来たら即座にボタンを押して反論を録音する課題。 実行意図群(ここで発言すると約束する)と比較群(好機に印をつけるだけ)で反応速度を比較しました。

■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:困難な目標ほど「実行意図」が劇的に効く

研究1において、容易な目標の達成率は実行意図の有無で大きな差はありませんでしたが、
困難な目標(レポート作成など)では、実行意図なしの達成率が22%だったのに対し、実行意図ありでは62%と約3倍に向上しました。
容易な目標は放っておいても達成されますが、難しいことほど「いつ、どこで」を決める効果が大きくなります。

◯わかったこと2:行動の開始が「早く正確に」なる

研究2では、実行意図を形成したグループの71%が指定期間内にレポートを提出したのに対し、比較群は32%にとどまりました。
また、提出までの日数も実行意図群の方が圧倒的に早く(平均2.3日 vs 7.7日)、後回し癖を防ぐ効果が確認されました。

◯わかったこと3:絶好のチャンスを逃さず「即座で」動ける

研究3では、実行意図を形成した参加者は、自分が「ここだ」とマークした瞬間に、比較群よりも有意に素早く反応して反論を開始しました。
迷いや躊躇が生じやすい対立的な場面でも、事前に「状況と行動」をリンクさせておくことで、脳が自動的に行動を引き起こすことが示唆されました。

■まとめと感想

こうした「目標を達成する」ことに関する悩みは、多くの人が直面する課題のようです。

論文の冒頭に、様々な目標達成のために、自分をどうコントロールするのか(目標達成の自己調整理論)の歴史と、代表的なものも紹介されており、個人的にその内容も興味深かったです。
たとえば、注意散漫を回避するマインドセット、困難に直面した際の努力強化、失敗や欠点の補填、目標間の葛藤の調整などなど。

また、読みながら「タイミングと即時性」が大事な場面で、特に実行意図は効く、とのことでしたので、私はこういう「if-thenプランニング」を立てたいな、と思いました。

『会議やミーティングで意見が出なかったら/止まったら、まず自分が発言する』
(こうした行動は「ボイス行動」として評価されることもわかっているので、組み合わせたらよりポジティブな行動習慣になりそうです)

改めて細かい内容についても、やはり論文を丁寧に読まないと見えてこないことがあります。
最近はAIを使って概略を読む→精読する、というパターンに変わってきましたが、やはりじっくり読んでこそ見える事があるな、と思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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