私たちが見る「夢」には、どんな意味が隠されているのか? ーユング心理学の夢分析を読み解くー
(本日のお話 2604字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、本日のお話は「ユング心理学の夢分析」について。
誰もが見る「夢」。
何か衝撃的な内容だったけれど、起きると蜃気楼のように消えてしまう寝ているときに見る「夢」。
一方、「夢」は、こうなったらいいなという願望の意味もあります。
それはビジョンや目標などとは違い、どこか叶う確率はやや低そうだけど、こうなったらいいなという妄想のようなニュアンスも含みます。
夢は科学なのか、非科学なのか。
この「夢」の重要性をはじめにフロイトが示し、そして心理療法として役立てようとしたのがユングです。
そしてユング派の分析ではこの「夢分析」が中核を占めるほど重要な要素を占めているとのこと。
今日はこれまで読み進めてきた「ユング心理学入門」の、「夢分析」についての語られている章を読み解いていきたいと思います。
みなさんが見る「夢」がどんな意味があるのか、
それを読み解くためのヒントになる、そんなお話かと思います。
ということで、早速まいりましょう!
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『ユング心理学入門』
河合隼雄
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■「夢」の重要性
本書より「夢分析」の重要性について語られている一節を引用しますと、著者の河合隼雄氏はこのように述べています。
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非現実的な夢を、大切な「現実」として、われわれは心理療法の場面に生かしてゆこうとするのである。
確かに、これは少しでも誤れば奈落に落ち込んでしまいそうな、現実と非現実の境を歩む危険な仕事である。
しかし、今まで第一章から第四章までながながと述べてきたことは、
いってみれば、この危険な夢分析の領域に入ってゆくための準備であったとさえみられるもので(中略)、この章を理解して下さるものと思う。
P142-143
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ここまでお話、「タイプ」「コンプレックス」「無意識」「心象や象徴」というような話は「夢分析」への入口だったのか⋯!と思うと、何やらものすごく重要な予感しかありません。
フロイトは1900年に出版した『夢判断』において、「夢は結局は、ある(抑圧された)願望の、(偽装した)充足である」と述べました。
私なりに解釈すると、”夢は私達が普段ガマンしている本音が形を変えて出てきたもの”ということでしょう。
■夢分析「尖った鉛筆なんて大嫌いだ」
たとえば、ユングの夢分析のある例では、「合理的に生きてきた思考タイプ」の女性が、夢でこんな話を見た、と紹介されます。
・”幽霊協会”なるものからの電話がかかってきた
・「幽霊新聞は読んだか?あなたは”硬くて尖った鉛筆”があればいいのでしょう?」と話をされる
・その女性は「幽霊なんてものは信じない、硬くて尖ったものなんて大嫌いだ」と”感情的”につっぱねて切ってしまった
という場面。これを「夢分析」的に読み解くと、こうなります。
・硬くて尖った鉛筆 ⋯ 合理的で思考的な考えであり、女性の武器
・感情的につっぱねて切る ⋯ 冷静な彼女が感情的になる
これらのことを検討すると、心の発達において夢をみた女性が「思考機能から感情機能を発達させてゆこうとする葛藤と困難さ」の可能性を読み取ることができる、とのこと。
夢では「抽象的なもの」も「具体的な何か」として創造されます。
たとえば、「思考機能が優位である女性の葛藤」という抽象的なものは「硬くて尖った鉛筆」と表現されたり「殺人犯」という別の夢で表出したりするわけです。
こうしたものが「表現された心像(第4章)」を検討することになり、
「自分の無意識(第3章)」の状態を明らかにすることにつながるとのこと(解釈がめちゃくちゃ難しそうですね)
■夢の機能
さて、そうした「夢の意義」については、このように述べられています。
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夢の機能のもつ最大の意義は、「意識に対する補償作用」である。
(※補償作用:心のバランスを保とうとすること)
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つまり、夢によって、心のバランスを保とうとすることで、思考優位で感情を押し殺しているものが、夢では感情性になってそのバランスを取ろうとしている、などです。
その中でも、夢には「わかりやすいもの」「不明確なもの」「フクザツなもの」などいくつかのパターンがあるそうです。
ここで、そうした夢の機能について一応の分類としてまとめられていました。以下、抜粋いたします。
◯⑴ 単純な補償
意識の態度を補償したり、あるいは意識的な体験のたらないところ、みかんのところを補う夢で、比較的わかりやすい。
(例:自分の知能を過小評価しているときに、「知能検査を受けて高い知能指数が出て驚いている」など)
◯⑵ 展望的な夢
遠い将来への一つのプランのような意味をもって現れるもの。通俗的にいわれるビジョンがあてはまる。
(補足:心理療法の場面では、治療を始めたときの最初の夢は「初回夢」とよばれ、治療の予後をある程度示すとされる)
◯⑶ 逆補償
否定的な補償といえるもので、意識の態度を引き下げようとするもの。意識の態度があまりに良すぎたり高すぎるため、下に下げるような機能を夢が示す。
(例:現実では完璧な父親が、夢ではのろまで馬鹿すぎて、それを息子である自分が叱責している)
◯⑷ 無意識の心的過程の描写
無意識過程の自発的な発現。精神病の人や、未開人のいわゆる大きい夢などに認められ、普通の人でも意識の力が弱くなったとき(病気や疲労など)で認められる。
(例:思いがけない奇妙な夢。肉の渦、神話的なモチーフを見出す事が多い)
◯⑸ 予知夢
夢が予見的な意味を持つことがあるが、まったくの細部に至るまでの予見的な夢。不思議な現象であり、心理療法家自身も驚かされることもあるが、実はそうではない可能性にも注意する必要がある。
(例:息子が崖でFに殺される夢を、S夫人が見る →実際にそれが起こっていた)
◯⑹ 反復夢
現実場面でのことがそのまま夢で反復されるもの。とはいえ現実とは少し異なる場合が多い。その異なった部分が補償的であり、補償夢であることもある。
(例:戦争場面でのショッキングな出来事を繰り返す。自我にその出来事が統合されていないため、繰り返すことで自我への統合を図ろうとしている)
■まとめと感想
ふと思うと、私も「享楽に耽溺する」「ものすごく残酷なことをする」みたいなことが夢に出てきたことがあります。
「自分はとんでもない夢をみてしまった⋯」と焦ったことがあったのですが、夢の意義を考えると、もしかすると「少し抑圧しているものがあるんじゃないですか?」と自分に教えてくれているのかもしれません。
自分の「夢」が、自分の意識を補償する何かなのではないか。
そう思うことで、自分の心が求めていることに、アンテナを立てることもできるのかもしれない。そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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