会社の「福利厚生」は、そもそも何のためにあるのか? ー第10章 福利厚生と退職給付ー
(本日のお話 2256字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は早朝から10kmのランニング。
また午前は、2件のアポイント。
お昼にオンラインでの勉強会に参加し、
午後からは、外部人事パートナーとして関わらせていただいている企業様へのコーチング&コンサルティングの時間でした。
また夜は大学の授業の学生スタッフとの打ち合わせなど。
*
さて、本日のお話です。
毎月、外部人事パートナーとして関わらせていただいている企業様との勉強会を行っています。
今日はその課題本の『人事管理入門』の中から「第10章 福利厚生と退職給付」からの学びを共有いたします。
「福利厚生」というと、私個人としては「なんだか贅沢なもの」という印象を実は持っています。
自分で独立・起業してみて気づくのが、「福利厚生などは基本ない」ということです。
交通費も、携帯代金もなければ、退職金も、読書手当も、住宅手当も、家族手当ももちろんない。すべて自分で賄わなければなりません
改めて考えると、「もらえて当たり前」と思っていた福利厚生というのは、実はとても恵まれた仕組みだったのかもしれないな、と。
そんな「福利厚生」と「退職給付」について、今日は本書からまとめてみたいと思います。
それでは、どうぞ!
■そもそも「福利厚生」とは何か?
福利厚生は、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに分かれます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・法定福利厚生:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など、法律によって義務付けられているもの。
・法定外福利厚生:住宅手当・慶弔見舞金・スポーツ施設の利用補助など、企業が独自の裁量で提供するもの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この2つをまとめた「付加給付費」は、2016年時点で労働費用全体の約19.1%を占めています。
内訳としては、法定福利費が11.4%、退職金等が4.5%、法定外福利費が1.6%——という構成となっています。
◯日本は福利厚生が手厚いは本当か?
ちなみに、「日本企業は福利厚生が手厚い」というイメージがありますが、国際比較をしてみると、実はそうでもないようです。
現金給与以外の割合では、日本はイギリスとともに最低水準にあります。フランスやドイツ、アメリカのほうが高いです。
ただし内訳は国によって異なり、フランス・ドイツ・日本は法定福利費が大きく、アメリカ・イギリスは法定外福利厚生(特に医療保険)が大きい、という違いがあります。
◯企業規模の格差がすごい
また、もう一つ重要なのが、企業規模による格差です。5,000人以上の大企業と30〜99人規模の小企業を比べると、付加給付費は約2倍もの差があります。
特に法定外福利厚生と退職給付の分野で格差が大きく、「給与の見かけ以上に、大手企業の社員が受け取っている経済的な報酬は多い」というのが、この章が示す現実です。
(大企業に惹かれるのもわかる気がしますね⋯)
■退職金は何のためにあるのか?
退職給付については、長らく2つの考え方が対立してきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・「功労褒賞金説」:会社が「長年お疲れ様でした」と温情で渡すもの、という考え方。
・「賃金後払い説」:若いうちに低く抑えられていた給与の後払いとして、退職時に受け取るもの、という考え方。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現在は、後者の「賃金後払い説」が主流になっています。
理由は明確で、退職給付の支給額はあらかじめ制度として決まっており、会社が温情的に、自由に決められるものではないからです。
さらに、退職金を毎月の給与として前払いする「退職金前払い制度」を導入する企業も出てきており、経営側も事実上、この考え方を認めつつあります。
本書にある図(noteURL参照)は、この「賃金後払い説」を非常にわかりやすく整理しています。
若いうちは成果より低い給与をもらう(=会社に「A」を貸す)。
中高年になると成果より高い給与をもらう(=「B」として返ってくる)。
退職時に退職給付「C」を受け取る。
そして「A=B+C」が成立する、というモデルです。
つまり退職金とは、キャリア全体を通じた「精算」とも言えそうです。
■カフェテリアプランという「新しい福利厚生」
本章には、パソナの「カフェテリアプラン」の事例が紹介されています。
従来の福利厚生は、全社員に一律でサービスを提供するものでした。
しかしカフェテリアプランでは、業績・能力・資格などに応じてポイントを付与し、社員が自分のニーズに合った福利厚生サービスを選択できる仕組みになっています。
つまり、成果を出した人、学び続けた人に還元される福利厚生という発想です。
ちなみに、これは読書会でも話題になったのですが、株式会社HQが提供する新しい福利厚生サービス(リモートワーク用の高品質な椅子や昇隔デスクを選べる「リモートHQ」、キャリアに迷ったときに会社の福利厚生費でコーチングを受けられる「コーチングHQ」なども、この流れに沿ったものだろうと話になりました。
他にも、2〜3万円の範囲で自分の健康に資する物品(ランニングシューズなど)を購入できる制度などもあるらしく、同様の考え方に基づいています。
「社員が自分で選べる、成長に資する福利厚生」という考え方は、多様化する社員のニーズに応えるだけでなく、経営としての合理性とも一致しています。
既得権として誰もがもらえるものではなく、頑張りや学びに応じて還元される、そのほうが、組織としての活力を維持しやすい時代になっているのかもしれないな、と思いました。
■まとめと感想
改めて感じたのは、「福利厚生は単なる待遇ではなく、経営の仕掛けである」ということです。
これまでは退職金が「賃金の後払い」として機能し、長期勤続を促す設計になっている点も、それらが機能しない時代、あるいは市場(アメリカなど)では当然違う形になります。
そしてまさに、今の時代はその仕組みが転換期にあります。少子高齢化による法定福利費の増大、退職給付の企業負担増、および社員ニーズの多様化。
こうした変化の中で、「全員一律」から「選択と集中」へ、「既得権」から「成果連動」へと、福利厚生の設計思想そのものが変わりつつあるな、と感じています。
独立して、私の生活には実質関わらないものの、組織を形作る重要な人事の仕組みとのことで、大変勉強になった次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。
<noteの記事はこちら>
