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3069号 2022年7月17日

今週の一冊『実践アクションリサーチ』

(本日のお話 2815字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、
日中友人家族が転勤されるとのことで
家族での懇親会でした。

また夜は、大学院の別学年の方に
お声掛けいただいての会食。

刺激的かつ、楽しい時間でした。
こういった繋がり、これからも
ますますつなげていきたいと思った1日でした。

(河合さん、栗原さん、小谷野さん、副田さん、
ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

=========================

『実践アクションリサーチ』

デイビッド・コフラン(著)


=========================

です。

■『アクションリサーチは

”組織開発実践者を育成するためのプログラム”である』。

今回ご紹介する、
あまり聞き慣れないと思われるこの言葉、
一言でいうと、こういうことかと思います。

さて、2週間前、
立教大学大学院の中原先生ゼミの
10名程度の読書勉強会に参加させていただきました。

その中で皆で題材にしたのが
今回ご紹介の一冊です。

組織開発実践者にとっての、
やや専門的な書籍になります。

■では、この書籍、
一体何が書かれているのか?

というより、そもそも
「アクションリサーチ」とは
厳密にはどのような定義なのでしょうか?

このことについて
まず紐解いてみたいと思います。

著書では定義として、
このように引用されています。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・アクションリサーチは、「創発的な探究プロセス」である。

応用行動科学の知識は、組織の自前の知識と統合され、
現実の組織の問題解決に応用される。

・同時にアクションリサーチは、
組織内に変化を引き起こし、
組織メンバーの自助能力を高め、科学的知識を増やす。

・そしてアクションリサーチは
共同と共同探究の精神をで行われる進化的プロセスと言える

(Shanni&Pasmore,2010)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

、、、うーん、
さっぱりわかりませんね。。。(苦笑)

■ちょっと乱暴ですが、
私なりに解釈してみると

『”組織の内部の人”によって、

”組織開発のアクションを泥臭く行い”ながら、

”科学的知見を用いて、組織を良くしていくプロセス』

と理解しています。

アクションしながら、リサーチするのか
リサーチしながら、アクションするのか、、、。

もうどっちがどっちかわかりませんが、

とにかく

・内部支援者が汗をかきながら、
・科学知も実践知も総動員して
・組織探究を行うの総合格闘技的な(しかも12ラウンドある)長いプロセス

と言うことかと。

■さて、
そんなアクションリサーチですが、

そのポイントが書籍にて
3つ紹介されています。

もう少し厳密に紐解くために、
以下、まとめてみます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<アクションリサーチの3つのポイント>

1)”アクションの中”での研究である

・組織に属する”内部者”が、
渦中にいる人々とともに研究する

・組織でのアクションをより効果的にするとともに、
多くの科学的知識を積み上げる

2)協働的で民主的なパートナーシップ

・研究対象である組織システムのメンバーが協働し、
積極的に参加する

3)一連のステップからなる出来事であり積極的に参加する

・実践的な課題に対峙し、
”課題の解決策”を生み出しつつ、
”実践家にとって有益で、学者にとって頑健な知識”を生み出す
ことを成果とする

※『実践アクションリサーチ』P6-7

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのことです。

要は、やっぱり、

『”組織の内部の人”によって、
”組織開発のアクションを泥臭く行い”ながら、
”科学的知見を用いて、組織を良くしていく”プロセス』

といっても、
おおよそズレていないのでは、
とも思います。

■さて、ここで繰り返し
「内部者」というキーワードを繰り返していますが、
組織研究をするにあたって、

”外部から関わるか? or 内部から関わるか?”

は、違った関わりになります。



「外部者」としての組織探究は、
一定の距離をおいています。

いわば、”高地”から関わるイメージ。

言ってしまえば、
組織にディープな部分(裏舞台)には
関わることがありません。

一方、

「内部者」としての組織探究は、
自分が中に組み込まれています。

いわば”ぬかるんだ低地”に浸るイメージです。

組織内には、理論や理想だけでは語れない
生々しい話(社内政治、人間関係、力関係、それぞれの利害等)
がたくさん充満しています。

そんなカオティックな状態で、
表舞台にも、裏舞台にもアクセスしつつ、
組織探究を行っていく。

この2つは求められるものが
まるで違ってくる、と言えるでしょう。

■そんな、

ぬかるんだ低地に浸りつつ、
アクションを重ねていき

でも浸るだけではなく、
少し距離をおいて科学的知見も
捉えていこうとするのは、

ぶっちゃけ、「超大変」です。

それらの内部者である
アクションリサーチャーが、

・自分自身(私)のために
・組織(私達)のために
・社会(彼ら彼女ら)のために

どのようなスタンスで、
どのような視点を持ち、
どのように実践していけばよいか、

、、、これを
まとめているのがこの書籍です。

この本を読んだある参加者の方は
(まさに内部者のアクションリサーチャー)

「自分だけじゃないんだ、と
救われた気がした」

というようなお話をされていました。

■書籍の中では、
以下のような話が紹介されています。

・「ぬかるんだ低地」で研究するには
どのような方法論が適切か?

・アクションの渦中で研究するのはなぜか?

・アクションリサーチの課題に取り組みながら
学習していることにどのように注意を向けるのか?

・アクションリサーチの哲学とはなにか?
そもそも「知る」とか「振り返る」とはどういうメカニズムか?

・アクションリサーチをどのように実践するのか?
(プロジェクトの構築、選択、計画書の作り方など)

・アクションリサーチを回すサイクルとは?
(課題構築→計画→実行→評価の流れ)

・アクションリサーチをする際に、個人/課/部門/全社などの
組織レベル間のダイナミクスをどう捉え、扱うか?

、、、などなど。

アクションリサーチにまつわる背景から、
その実践まで網羅的に伝えてくれています。

■正直読むのは少し大変な本です。

ただし、

・人材開発・組織開発に
内部支援者として関わられている人事関連の方

・自部門の事業責任を持ちつつ
組織開発を行う必要があるマネジャー・責任者

・研究的な視点を持ちつつ、
組織に介入しているあらゆる支援者

にとっては、

組織への関わりについて多くの示唆と
基準を与えてくれる一冊だと思います。

この本を読んで、私も

「外部支援者」だけではなく
「内部実践者」としてのアクションも
(大変そうですが)挑戦してみたくなった一冊でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『実践アクションリサーチ』

デイビッド・コフラン(著)


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