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393号 2014年10月14日

”どんないいことを言ってみても、みんな、こぼしちまう”「器」にならないように

■おはようございます。紀藤です。

関東では夜の間に台風が過ぎ、
気持ちのいい晴天が広がっています。
今週も楽しく、頑張りましょう!

■さて、本日のお話ですが、
ちょっと前にご紹介した、
中村天風氏のあるストーリーをご紹介します。


■天風氏は第一次世界大戦後
当時は不治の病とされていた奔馬性結核を発病し
何としてでも治そうと欧米諸国を訪ねましたが、
手がかりはなく病は進行。

自らの死を悟った天風さんは、
「死ぬなら祖国で」ということで帰国の路に付きました。

その途中のインドで出会ったのが
ヨガの聖者”カリアッパ師”。

初めて会った際に、
カリアッパ師は天風氏に

「お前は救われる」

と言ったとのこと。

そんな中村天風氏と、
その師匠であるカリアッパ師のやりとりです。

少し長いので、お時間があるときにどうぞ。


(天風氏)
「お尋ねしたいことがあるのですが」

(カリアッパ師 ※以下交互に続く)
「なんだ」

「カイロでおっしゃったお話は、いつごろからうかがえるんでしょう」

「カイロで何と言ったっけな」

「えっ、お前はまだ救われる人間だ。
 だが、自分が助かる大事なことを一つ忘れている。
 それを教えてやるから、ついて来い。
 そのお言葉で、私はここまでついてきたのです」

「ああ、あれか。あれなら覚えているよ」

「いつごろから教えていただけるのでしょう」

「私の方は、ここへ着いた翌日からでも教えたいと、その準備が出来ていた」

「えっ、私はまた、ここへ着いた翌日から、教わりたい準備が出来ていたんですよ」

「いや違う。準備が出来ていたのは、私の方だけだ。
毎日毎日、お前の顔を見て、顔を見るたびに、まだ準備が出来ていないな、
と思うので、いったいこの男は、いつになったら本当に教わる気になるのかな、と思ってな。
私のほうから、それを催促したかったんだよ」

「全然話が違います。
私は来た日から教わりたくて、教わりたくて」

「お前はね、気持ちをそういうふうに偽って言うが、
私の霊感にうつるところは、お前はまだ、本当に教わる準備が出来ていない、と見るよ」

「いや、その準備は出来ています」

「ああ、お前は強情だな。
お前自身の心の中は、お前自身より、私の方がよけい知っている。
その証拠は、すぐ見せてやる。
あの水を飲む器に、水をいっぱい注いでおいで」

言われるままに、その器にいっぱい水を注いで、それを持ってきた。

すると、また今度は、「お湯をいっぱい持って来い」

それでまた言われるままに水をそこに置いて、またお湯を持ってきたら、
「そのお湯を水の上から注げ」
あまり馬鹿馬鹿しいことなんで、私はこう言ったんですよ。

「このお国ではどういうふうに考えているかしりませんが、
文明の民族は、いっぱい入っている水の上から湯を注ぎますと、
両方ともこぼれる、ということを知っております」
と言ってやった。

(中略)

そしたらね。

「それを知ってるのか」と言いやがる。

「存じていますよ」

「それがわかったら、さっき俺がお前に言った言葉はわかる筈だ」

「さっき私が言った事とこれは違うでしょう」

「違わないね。同じことだ」

「私は同じことだということを、どうしても了解できません」

「そうかい。それほどまでにお前の頭の中が愚かしいとは思わなかった」
と言うんです。

なんだ。こっちは文明民族なのに、野蛮人から冷やかされていると思ったから、言いました。

「その理由をうけたまわらせていただきましょう」

「聞かせよう。
私が毎日毎日、お前をつれて来た翌日からでも教えたいと思って、お前をじっと見ていると、お前の頭の中はな、私がどんないいことを言って見ても、そいつをみんな、こぼしちまう。
さっきの、水のいっぱい入っているコップと同じようにな。
そういう状態だと見ているんだ。
いつになったらコップの水をあけて来るかな。
水をあけて来さえすれば、そのあとで湯を注ぎこんでやれば、湯がいっぱいになるんだがな。
と思っているんだが、いっこうに水をあけて来ない。
お前の頭の中には、いままでの役にも立たない屁理屈がいっぱい詰まっている以上、
いくら俺が尊いことをいって見ても、
それをお前は無条件に受け取れるか。
受け取れないものを与える。
そんな愚かなことは、俺はしないよ。
わかったかい?」

中村天風氏 座談会より


■「何か新しいことを学ぼう」と思っても、
自分の考え方、想いにとらわれ過ぎていると、
それが邪魔になり吸収することができない、
そんなお話でした。

「7つの習慣」では、”パラダイム”というものがあり、
それは自分の中での、「こうに違いない」という”物の見方”であると言います。

そして、その”見方”を変えることこそが、
行動を変え、
そして結果を変えることに繋がる、
そのように伝えています。


■天風氏、カリアッパ師のやりとりは、
だいぶ超人的なレベルでの話かと思いますが、
私たちも何かを新しいことを学ぶときに、
表面的に「学ぼう」とは思っていても、
実は今までの自分のやり方に固執しており、
新しい学びを受け取れていないことがあるのかもしれません。

経験を重ねても、
柔軟で素直な心を忘れないようにしたい、
そのように感じた次第です。


最後までお読み頂き、ありがとうございます。
今日が皆様にとって、素晴らしい一日になりますように。

【本日の名言】 誰もが自分自身の視野の限界を、
世界の限界だと思い込んでいる。

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