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2570号 2021年3月4日

「学習性無力感」に気をつけよう ~やる気を殺す上司の振る舞い~

(本日のお話 2059字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は3件のアポイント。

夜はキックボクシングのジムへ。
体のコリがほぐれました。

運動って大事ですね。



さて、本日のお話です。

「学習性無力感」という言葉があります。
(聞いたことがありますでしょうか)

今日はこの言葉を、
友人からの相談からふと思い出しましたので、

皆さまに学びと気づきを
ご共有させていただければと思います。

タイトルは

【「学習性無力感」に気をつけよう ~やる気を殺す上司の振る舞い~】

それでは、どうぞ。

■先日友人と話をしたとき。
こんな相談をされました。

その方曰く、

「何をやっても変わらなくて
やる気がでない(転職しようかな)」

とのことでした。

ちなみに、職場でも
立て続けに退職しているそう。

彼曰く

「理由は、部長のマネジメントスタイルだ」

とのこと。

■彼(友人)も、
やる気に溢れているタイプです。

やりたいことを提案したり
自分なりのアイデアを出す、攻めるタイプの人間。

しかし、そこの部長は
細かい部分に目がいく方で、
かつちょっと強面。

対立も恐れず
直球でモノを言うタイプです。

部下が何か意見を言うたびに、
倍くらい部長からツッコミが返ってくる。

ゆえに、友人を含め
いつからか部内でも意見がでなくなっている、

とのことでした。

■起こっている事象としては、

・毎回、何かアクションするたびに、
部長から倍くらいの指摘が入ってくる。


・その指摘の1つ1つを見れば、
間違ってはいない。


・しかしその指摘は、
全体の優先度からすると
あまり高いとは思えない。


・自分から何か提案をしてアクションをすると、
ツッコミがくる。それに対応しないといけない。


・段々と疲れてきた。
ゆえに「言われたことだけやろう」という空気になってお
そんな自分も好きになれない

というのがまとめです。

(職場内のこのケース、
最近、実によく出会います)

■さて、この状況、
どのように感じられますでしょうか?

「もっと部長が本人に任せて
主体性を大事にすべきだ」

という考えもあるでしょう。

一方、

「いやいや、当人が粘り強さを持って
取り組むべきだ」

という考えもあるでしょう。

あるいは、

「そもそもツッコミをもらわないような、
提案をすればいい。脇が甘い」

という見方もあるでしょう。

■しかしながら、
私の友人の職場のケースでは

「友人も皆も、部長の対応により
やる気がやくなっていった」

「どうにもならない感じがしていった」

という感覚が生まれていたことは
事実のようです。

これらの一連のことから
一つ推察されることが一つあります。

それが、

『学習性無力感』
(learned helplessness)

という状態です。

■「学習性無力感」とは、

アメリカの心理学会の会長であり、
ペンシルバニア大学教授のセリグマン、
そしてメイヤーが提唱した概念で、

”無気力は性格ではない。
人は学習して無気力になる”

という考え方です。

■こんな実験がありました。

犬に箱の中で
電気ショックを与える実験です。

その際に、犬は当然、
苦痛から逃れようと
あれやこれや試します。

箱の中を歩き回ったり、
そこにあるボタンらしきものを
押してみたり。

、、、しかし、何をしても
変わらない。ただひたすらに
電気ショックは定やってくる。

そうすると、犬はどうなるか。

「諦める → そして苦痛を受け入れる」

のです。

この

「何をやっても変わらない」
「この状況を(受け身的に)受け入れよう」

という状態を「学習性無力感」と呼びます。

■そして人間にも同じ条件が
当てはまることが知られています。

それが

”「自分の努力の結果」 上手く行かなかった”

のであれば、

また頑張れば変えられると思えます。

(この状態は「内的な統制」の状態にあると言います。
”変えられるものが内部にある”ので
学習の意欲も湧いてきます)

しかし、

「”この部長”には何を言っても、
どんな工夫をしても変わらない」
とか、

「”この職場”では何をしても
結局かわることはない」

と原因を外部にあると思うと、

(この状態を、「外的な統制」の状態にあると言います。
外部にあり、変えられないと感じていることですね)

段々と、

「学習性無力感」

が生まれていき、
主体的な行動がされなくなっていくのです。

■この内的な統制、外的な統制は、

人により違い、
どんな状況でも「内的な統制」に
目が向けられていればよいのですが、

そうとも限らない状況も
やはり訪れるわけです。

■とすると、今回の出来事を、

「部下が何度かアクションを試みたけど、

部長より全部叩き落されたことによって
”学習性無力感”が生まれた」

と問題の原因を仮定すると、
上司のやり方を変える必要がありそうです。

■確かに、確実な仕事をすること、

クオリティを大事にすること、

ルールを大切にすることなど、
重要なことでしょう。

ただ、人は機械ではなく、
”感情”で働くものです。

「ルールで決まっているから」、
で淡々と働ける人ばかりではないのです。

組織へのコミットが
強ければより一生懸命働くし、

そうでなければ社員が
手を抜いて働くことだってある。

人間、そういうものなのです。

■実際に、『組織行動学』の世界では

「マネジャーは「感情労働」である」

と言われるように

メンバーのモチベーションを意図して
高めることは重要な役割とされています。

■そんなことを考えたときに、

「やる気を殺す上司の振る舞い」

が職場で起こっていないか、

良かれと思ってツッコミ過ぎて、
学習性無力感を図らずも引き起こしていないか、、、

こんなことは今回の友人の職場の話から
考えてみる必要がある、

と思います。

良かれと思って、あえて厳しく、踏み潰すなかで
雑草魂の伸ばしてほしいと思っていたのに、

芽を伸ばそうとする意図ごと
踏みつけて挫いてしまった、、、

ということにならないよう、
注意が必要だと言えそうですね。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

理性をむき出しに表さないで、愛嬌というか、人情というか、
ともかくそうしたたぐいの衣装を着せて出すことが必要である。

本多静六(林学博士・造園家/1866-1952)

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