177キロマラソン体験記 ~ 超ウルトラマラソンを走ると、どんな感情が生まれるのか? 中編~

超ウルトラマラソンの真髄は深夜からはじまる。元気をもらっていた応援が途絶え、疲労が蓄積していく中、いつもなら寝る時間に休めないストレス。3大欲求の一つである睡眠欲を満たさず動き続けると、人間はどうなっていくのか。「第四回 みちのく津軽ジャーニーラン 177キロの部」参加の記録、中編です。

177キロマラソンをまだ楽しめた、スタートから序盤の様子を振り返る、前半

 

突然の闇、頭に浮かぶもの

 

トライアスロンチーム「ポセイ丼」の仲間でもあるAKB氏と。「総合文化センターパルナス」の前の補給所である「鰊御殿」にて。

 

 

7月15日(月)深夜1時。

漆黒の闇の中で走っていると、突然ヘッドライドが切れました。

 

当たり一面真っ暗です。

 

そして真横には深く生い茂る森があります。

もし元気な時に来たら、すぐにでも立ち去りたいほどなにか出そうな雰囲気が漂っています。

 

しかし、そんなことはどうでもよい。早く終わらせたい。早く休みたい。

 

その事ばかりが頭に浮かびます。

 

手探りで調整すると接触不良になっていたようで、なんとか復活をして走るのを再開します。

 

そして、補給場である「総合文化センターパルナス」になんとか到着。走る中で感覚が麻痺したのか、寒気はなくなっていました。

 

しかし、咳と痰が喉に絡みます。ですが、もはやそんなことすらどうでもよい。

 

この時、7月15日(月)深夜3時。

あと1時間で夜明けです。

 

 

 

 

 

 

超ウルトラマラソンだから起きる、本当の戦いとは

 

私が想像していなかった150キロ以上の夜を越えて走る超ウルトラマラソンの恐ろしさは、走る以外のまた違う要素が絡んでいました。

 

疲れている。かと言ってしっかり睡眠をとったりしたら、タイムアウト。

 

走るのをやめても、ゴールに辿り着かずアウト。

 

食事補給を失敗して胃袋がやられて食べられなくなっても、エネルギー不足でアウト。

 

 

なんとか栄養を補給しておこうとスタッフさんが出してくれるチキンラーメンを食べて、床に敷かれているビニールシートに目をやります。

 

軽く休んでおこう。

そう思って身体を横たわらせると、吸い込まれるように眠りに入ります。

 

しかし、熟睡などできるはずもありません。

熟睡してもどちらにせよ走らないといけないし、誰かが助けてくれるわけでもない。

 

胸に携帯を抱えて、タイマーを30分にセットして目を閉じます。

 

あっという間に30分。もう少し寝たい…。

 

横にいるほかのランナーも、きっとそう思っているはず。

 

ポツポツと屍のように起きはじめて外が明るみだした頃、それぞれのペースでトボトボと会場を後にします。

笑顔はありません。ただ、疲労だけが見えます。

 

 

 

 

起きてすぐ、走ることはできません。

足が固まっているからです。

 

30分や1時間寝ても、足は回復しないのです。

だから皆歩いている。

 

ここからは、263キロの部の人たちと合流です。

 

この長い方に出た方は、もうすでに45時間近くほぼ不眠不休で走っています

その「先輩」が私を抜き去っていきました。

 

おそらく多くの人にとっては、177キロも263キロもよく分からない世界かと思いますが、この時、私は心から尊敬しました。

 

ありえない…

この状態を追加で14時間経てきて、なぜ走れるのか…不思議でなりませんでした。

 

現在118キロ。あと60キロです。

 

 

 

 

 

 

最大の敵との攻防戦

 

太宰治記念館「斜陽館」にて。125キロ地点付近。

 

 

心とは裏腹に明け方の太陽が近くの湖を照らし、美しく荘厳な景色が広がっています。

 

暗闇が終わったのは喜ばしかったのですが、本当に辛いのはここからでした。

 

 

7/15(月)朝4時。

 

空が明るくなりはじめても、変わらないものがあります。

 

それが人間の本能の

 

睡眠欲求

 

寝ることを奪われた動物は、何もできなくなります。

 

走り続けよう、その気力を根こそぎ奪われるのです。

 

食べないと体がもたない。

しかし先ほど食べたチキンラーメンを消化しようと、少しでも血液が胃に集まると、途端に暴力的なほどの眠気が襲います。

 

道をふらふらと走りながら、右へ左へとよろめきます。

それが、ずーっと続くのです。

 

「太陽が出たら、体内時計がリセットされるよ」

 

そんな話をどこかで聞いたことがあり、期待しながら太陽を見つめましたが、リセットの気配はまるでありません。

 

ただただ、眠い。

 

気づいたら一人走りながら、

 

「眠い眠い眠い眠い!」

「あーー!」

「ううー!」

「なんでだよ!」(意味が分からない)

 

などと喚きながら走っていました。

 

レース終了後に友人と話をしていると、友人も他のランナーも全く同じように呻いたり、叫んだりしていたそう。

 

でも気持ちが分かるから、他のランナーもそっとしているのです。

 

 

 

 

 

 

 

睡魔に抗う中で現れたもの

145キロ地点「道の駅つるた」付近にて。

 

 

肉体的に迫ってくる「睡魔」は、意志の力ではどうしようもできないほど強烈なものです。

 

ブロック塀の影で、体育座りをして、5分だけ…と目を閉じます。

 

そうすると不思議なことに、少しだけ回復します。

 

そしてまた2キロほど走ると、強烈な睡魔が襲ってくる。そうして、ひたすら耐えながら走るのでした。

 

ここからしばらくは、眠い以外の記憶がありません

 

 

次の記憶は、7月15日(月)昼12:00時頃。

 

146キロ地点。

あと30キロほどまでやってきたとき。

 

空が明るいと、幾分か気持ちも和らぎます。

他のランナーとコンビニで偶然会い、プリンを食べながら話します。

 

「あと30キロですね。ただ、猛烈に眠いですね。ここまで辛いとは思いませんでした」

 

すると、ランナーの方はこう返します。

 

「幻覚は見ましたか?」

 

…一瞬「?」がよぎります。

 

「いやこのレースに出ていると、脳が疲れすぎて幻覚を見ることがあるんですよ。私は夜中、花火が上がったのを見ました。あと、太ももに耳なし芳一のように呪文が書かれているのが見えました。」

 

とのこと。

 

「…そうでしたか」

 

としか返せず走っていると、確かに私の身にも妙な現象が起こりました。

 

止まっている白い乗用車が、急に横に移動したように見えました。

 

そしてこの話は一緒に走った仲間にも聞くと、同じように幻覚のようなものが見えた、と言っていました。

 

 

7月15日(月)昼12:00時。

146キロ地点。ゴールまで、あと30キロ。

 

 

 

次回、いよいよゴールへ。後編に続けます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本日の名言

健康で、借金がなくて、しっかりした意識があるという幸福以外にいったい何が必要だというのだ。

アダム・スミス(スコットランドの経済学者/1723〜1790)

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