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4347号 2026年1月19日

「恋に落ちる36の質問」を妻とやってみた ーニューヨーク州立大学らの研究ー

(本日のお話 4302字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日日曜日は、21kmのランニング。
その他、子どもと公園で遊んだりなど。

3週間後のフルマラソンに向けて、
まだ足は治ってはいませんが、良い練習ができた週末でした。



さて、本日のお話です。

「人と深い関係を築く」ということ。これは、私たちが生きていく中で、最も普遍的で、かつ深い関心事の一つではないでしょうか。

人との距離を縮めたい、もっと分かり合いたい。

…とはいいつつ、何をどう進めたらよいのか、よくわからない。そんな風に、一緒に過ごす時間だけ過ぎていくこともありがちです。

そんな中、興味深い研究を見つけました。なんと、わずか45分間のセッションで、「見知らぬ人同士が、最も親密な関係の上位30%」に含まれるほど仲良くなれるという研究です。(別名「恋に落ちる36の質問」だそう)

今日は、その研究の背景と、「36の質問」を詳しくご紹介させていただきます。
そして、実際にやってみるとどうなるのか、知らない人をやると何かと問題がありそうなので、妻を被験者にしてやってみのたですが、その感想も併せてお伝えしたいと思います。

それでは、どうぞ!

■今日の論文

英語タイトル: The Experimental Generation of Interpersonal Closeness: A Procedure and Some Preliminary Findings(対人関係における親密さを実験的に生成する方法:手続きと予備的知見)
掲載誌と出版年: Personality and Social Psychology Bulletin (PSPB), Vol. 23 No. 4, 1997年4月
著者: Arthur Aron, Edward Melinat, Elaine N. Aron, Robert Darrin Vallone, Renee J. Bator
所属機関: ニューヨーク州立大学ストーニブルック校、カリフォルニア家族心理学大学院、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、アリゾナ州立大学

■論文のポイント
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・実験環境において対人関係の親密さを創出するための、実用的な方法論が提示されています。
・45分間のセッションの中で、「見知らぬ人同士が段階的に強まる自己開示と関係構築のタスク」(親密さを深める36の質問)を行い、その有効性が検証されました。
・研究1では、このタスクが「世間話(スモールトーク)」よりも高い親密さを生むことが示されました。研究2と3では、態度の不一致がないペアリングや、好意の相互期待、親密になることを明示的な目標とすることには、有意な親密さ向上効果は見られませんでした。
・また、これらの研究は愛着スタイルや内向性・外向性といった理論的課題を検討するための応用例も示しています。
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■研究の方法

・対象者:大学生のペア(主に異性ペアまたは女性同士のペア)
・手続き: ペアは45分間、3つのセット(各15分)に分けられた、段階的に深まる相互的・個人的な自己開示タスクを行いました。
・操作変数:
研究1: 親密さタスク群 vs. 世間話(スモールトーク)タスク群。
研究2: 重要な態度の一致・不一致の操作、および互いに好意を持つという期待の有無を操作。
研究3: 親密になることを明示的な目標とするか、単なる相互作用の研究とするかを操作。
・主要な指標: 「他者の自己への包含(IOS)スケール」および「主観的親密さ指標(SCI)」を用いた事後アンケート。

■主な結果
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・タスクの効果: 親密さを目的としたタスクは、世間話と比較して有意に高い親密さを生成しました(効果量 d = .88)

・不変だった要因: 態度の不一致, 好意の期待, および親密さを明示的な目標に設定することは、全体的な親密さの達成度に有意な影響を与えませんでした。

・理論的知見:
・「回避型・拒絶型」の愛着スタイルを持つペアは、他のペアよりも親密さが低くなりました。
・「不安・とらわれ型」の人は、達成された親密さと望む親密さの乖離が大きくなりました。
・「内向的な人」は、親密さが明示的な目標とされた場合にのみ、外向的な人と同レベルの親密さを達成しました。
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■研究のポイント:親密さを生む「鍵」とは?

研究の中で、いくつか面白い事実が分かっています。
まず、親密さを生むために「事前に価値観が一致していること」や「相手が自分を好きでいてくれるという期待」は、実はそれほど重要ではありませんでした。

◯ポイント1:「親密になるぞ!」と意気込まなくてもよい
また、「今から親密になるぞ!」という明確な目標を持つ必要もなかったのようです(内向的な人の場合を除く)。
大切なのは、あくまで「段階的で相互的な自己開示」そのものにありました。

◯ポイント2:お互いに段階的に自己開示をしていくのが大事
少しずつ、自分の内面を差し出し、相手の内面を受け取る。
その反復が、短時間で「他者を自分の一部のように感じる」という感覚を呼び起こし、親密さを醸成したと考えられます。

◯ポイント3:性格の影響はある程度ある
ただし、性格的な特性も影響します。例えば「回避型」の愛着スタイルを持つ人は、他者よりも親密さを感じにくい傾向にありました。
また、内向的な人は、「親密になること」を目標として意識したとき、はじめて外向的な人と同じレベルまで心を開くことができたそうです。

■実践方法:「恋に落ちる36の質問」のやり方

それでは、具体的にどのような質問を行えばよいのでしょうか。
実験で使われたワークシートの内容を整理しました。

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<実施上のルール>
・1.交互に回答する: 一人が答えたら、もう一人も同じ質問に答えます。
・2.順番を守る: セットIから順番に進め、飛ばさないでください。
・3.役割を交代する: 新しい質問に移るたび、読み上げる人を交代します。
・4.時間をかける: 全て終わらせることより、丁寧な対話を大切にします。(時間がきたら次のセットに移る)
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◯セット I:アイスブレイクから少しずつ(15分)

まずは、日常の延長線上にある話題からスタートします。

1.世界中の誰かを選ぶとしたら、夕食のゲストに誰を招きたいですか?
2.有名になりたいですか?どのような形で?
3.電話をかける前に、話す内容をリハーサルすることはあるか?なぜ?
4.あなたにとって「完璧な」一日とはどのようなものですか?
5.最後に自分に向けて歌ったのはいつですか?誰かに歌ったのは?
6.もし90歳まで生きられるとしたら、人生の最後の60年間を30歳の心か体のどちらかで過ごすとしたら、どちらを選びますか?
7.自分がどう死ぬかについて、密かな予感はありますか?
8.あなたとパートナーに共通していると思われることを3つ挙げてください。
9.人生で最も感謝していることは何ですか?
10.もし育ち方を変えられるとしたら、何を変えますか?
11.4分間かけて、できるだけ詳細に自分の人生の物語をパートナーに話してください。
12.明日目が覚めた時、どんな資質や能力でも一つ身につけていたら、それは何ですか?

◯セット II:価値観と記憶を分かち合う(15分)

少しずつ、内面的な「意味」に触れる質問へと移行します。

13.水晶玉があなた自身、人生、未来、その他あらゆる真実を教えてくれるとしたら、何を知りたいですか?
14.ずっと前から夢見てきたことはありますか?なぜそれを実行しなかったのですか?
15.あなたの人生における最大の達成は何ですか?
16.友情において最も大切にしていることは何ですか?
17.最も大切な思い出は何ですか?
18.最も恐ろしい思い出は何ですか?
19.もし一年後に突然死ぬと知ったら、今の生き方を変えますか?なぜですか?
20.友情とはあなたにとって何を意味しますか?
21.愛と愛情はあなたの人生でどんな役割を果たしていますか?
22.パートナーの良い特徴を、交互に5つずつ共有してください。
23.ご家族はどれほど親密で温かいですか?ご自身の子供時代は他の人より幸せだったと感じますか?
24.母親との関係についてどう感じていますか?

◯セット III:いま、ここにある関係性を深める(15分)

最後は、二人の関係性や、より深い脆弱性(Vulnerability)を共有します。

25.それぞれ3つの真実の「私たち」文を作りましょう。(例:「私たちは二人ともこの部屋でリラックスしています」など)
26.次の文を完成させてください:「共有できる誰かがいたらいいのに……」
27.もしパートナーと親友になるなら、相手に知っておいてほしい重要なことを教えてください。
28.パートナーに、相手のどんなところが好きか伝えましょう。初対面の人には言わないような正直な内容で。
29.人生で恥ずかしい思い出をパートナーと共有しましょう。
30.最後に誰かの前で泣いたのはいつですか?一人で泣いたのは?
31.パートナーに、すでに相手の好きなところを伝えましょう。
32.冗談にするには深刻すぎることは何かある?
33.もし今夜、誰とも話す機会なく死ぬとしたら、伝えられなかったことで最も後悔するのは何ですか?なぜまだ伝えていないのですか?
34.あなたの家が火事になりました。愛する人やペットを救出した後、たった一つの物を救う時間が与えられたら、何を選びますか?
35.家族の中で、誰の死が最も衝撃的だと思うか?なぜ?
36.個人的な悩みを共有し、相手がどのように対処するかアドバイスを求めましょう。また、その問題について自分がどう見えているかフィードバックをもらいます。

■まとめと感想:妻とやってみました

このリストを見て、私も実際に妻とやってみました。俗っぽく広がった「恋に落ちる」ことはありませんでした(苦笑)。やはりこの論文は「親密さを高める36の質問」なので、「恋」というドキドキのようなものとは少し違うのように思います。

もう長らく一緒に過ごしてきた妻なので、既に親密であるのである程度わかっているところが多く、それでも思った以上に対話に時間がかかりました。

本当は15分ごとに区切って、途中でも進んでいくのがセオリーです。しかし今回、せっかくなので全部やろうか、とやってみました。すると36問全部で80分くらいかかりました。(正直、ちょっと疲れるので、15分×3セットでサクサク進めたほうが良い気がします)

一方、ほとんどの質問が新鮮です。なので、結構面白く答えられます。時折「相手の好きなところを交互に伝える」みたいなのが入ってきて、なんとなく照れくさい雰囲気になりました。

45分という設定ですが、一般的な話から少しずつ深くなっていきます。ゆえに、新しい人との関係は間違いなく深まる!と思いました。また「相手を知っている」と思っている間柄でも、こうした構造化された対話を通じることで、まだ見ぬ相手の一面に出会えるのかもしれません。

皆さまも、大切な誰かと、あるいはこれから大切にしたい誰かと、この「36の質問」を試してみても面白いかもしれませんね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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