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4404号 2026年3月17日

ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票のご紹介 ー自分を使い切る幸せ感の尺度ー

(本日のお話 3432字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は外部支援者として関わっている会社へのコーチング&コンサルティング。
また強み本のアプリ開発の打ち合わせなどでした。
その他、朝から12kmのランニングなど。



さて本日のお話です。

本日は昨日に引き続き「幸せ」をテーマに、本日もある論文をご紹介させていただきます。

内容は、「ユーダイモニックな幸福」についての論文です。

ユーダイモニックな幸福とは「自身の最高の潜在能力を開発し、自己表現的で、自己と調和した目標の達成に活かすことによって得られる生活の質」です。
要は、「自分らしく生きて、自分を表現し、自分を磨いていく事による幸せ感」とも言えそうです。(一方、快楽を重視する幸福を「ヘドニックな幸福」といいます)

ユーダイモニックもヘドイックも、舌を噛みそうですし、馴染みがない概念ではあるものの、精読すると「これ、ホントに大事な概念だな⋯」と刺さりまくりでした。

ということで、今日はこの「ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票」を作成したという論文をご紹介いたします。

それでは、どうぞ!

■今回の論文
・タイトル:The Questionnaire for Eudaimonic Well-Being: Psychometric properties, demographic comparisons, and evidence of validity(ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票:心理測定特性、人口統計学的比較、および妥当性の証拠)
・著者:Alan S. Waterman / M. Brent Donnellan ジャーナル:The Journal of Positive Psychology、2010年
・所属:ニュージャージー大学(The College of New Jersey)

※本記事は、論文の内容を参考に、著者の解釈を元にまとめた内容です。

■30秒でわかる論文のポイント

・単なる「楽しさ」ではなく、自己の可能性の開花や人生の意味に焦点を当てた新しい尺度「QEWB」を開発・検証した。

・ユーダイモニックな幸福は、自律性や内発的目標を重視する「自己決定理論」と理論的に深く関連している。

・大規模な調査を通じて、この尺度がアイデンティティの形成や自尊心、人生のコントロール感と強く相関することが示された。

■研究の背景と目的

ウェルビーイングには、快楽を重視する「ヘドニック(HWB)」と、自己の真の可能性を追求する「ユーダイモニック(EWB)」の2つの流れがあります。

しかし、従来の「主観的ウェルビーイング(SWB)」尺度ではこれらが十分に区別されていませんでした。
そこで、ユーダイモニズムの哲学に忠実な、新たな測定尺度「ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票(QEWB)」を開発することが本研究の目的です。

■研究の方法

・デザイン:横断研究
・参加者:米国の大学生(サンプル1:1,728名、サンプル2:5,606名)
・使用した尺度:ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票(QEWB)、生活満足度尺度(SWLS)など
・使用した分析手法:確認的因子分析、相関分析、階層連合回帰分析

■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:QEWBは高い信頼性と妥当性を持つ尺度である

因子分析の結果、QEWBは”単一の構成概念”を安定して測定できていることが確認されました。
(すべての項目が一つにまとまることで、尺度全体として高い信頼性(クロンバックの $alpha$ 係数 0.85〜0.86)が得られています)
QEWBの初期項目プールは、哲学的・心理学的に繋がりの強い、以下の6つのカテゴリーで構成されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴自己発見:「己を知れ」という命題。自分の本当の姿を認識すること。(例:私は、自分の本当の姿を見つけたと思います)

⑵自身の最高の潜在能力の発達に対する認識:自分がなり得る最高の姿を体現しようとする努力。(例:自分の最大の可能性が何なのかは分かっているつもりで、できる限りそれを伸ばそうとしています)

⑶人生の目的と意味の感覚:才能をどのような目標に活用するかを決めること。(例:私は自分の人生の目的を見つけたと言える)

⑷卓越性の追求への多大な努力の投入:価値あることに並外れた努力を注ぐ際の充実感。(例:多大な努力を注ぐ価値のあることに取り組んでいるとき、私は最も充実感を覚えます)

⑸活動への深い没頭:スキルをフルに活かし、深く没入する(フロー)状態。(例:私は、毎日行う多くのことに深く没頭していると感じます)

⑹個人的な自己表現としての活動への楽しみ:その活動が自分という人間を表現している感覚。(例:自分が取り組んでいることの多くは、自分にとって自己表現の手段になっていると感じています)
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■ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票(QEWB)

以下の21項目が、本論文で開発された質問票の全容です。(R)は逆転採点項目です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・1私は、毎日行う多くのことに深く没頭していると感じます 。
・2.私は、自分の本当の姿を見つけたと思います 。
・3.人生において、物事が簡単にうまくいけば理想的だと思う。(R)
・4.私の人生は、人生に意味を与えてくれる一連の核心的な信念を中心に成り立っています 。
・5.他の人が私のことを感心してくれることよりも、自分が自分のやっていることを心から楽しむことの方が重要だ 。
・6.自分の最大の可能性が何なのかは分かっているつもりで、できる限りそれを伸ばそうとしています 。
・7.他の人たちは、私自身が思っている以上に、私にとって何が良いかを知っていることが多い。(R)
・8.多大な努力を注ぐ価値のあることに取り組んでいるとき、私は最も充実感を覚えます 。
・9.私は自分の人生の目的を見つけたと言える 。
・10.もし自分のやっていることにやりがいを感じられなければ、それを続けられるとは思えません 。
・11.今のところ、自分の人生をどうすべきかまだ見動がつかない。(R)
・12.なぜあの人たちは、自分のやっていることにそこまで一生懸命取り組みたいのか、私には理解できない。(R)
・13.自分がやっていることが、追求する価値のある目的とどう結びついているのかを知ることは重要だと考えている 。
・14.ある行動が自分にとって「正しい」と感じられるから、たいてい何をすべきかは分かっている 。
・15.自分の可能性を最大限に活かせる活動に取り組んでいるとき、本当に生きているという実感がある 。
・16.自分の才能が一体何なのか、よく分からない。(R)
・17.自分がやっていることの多くは、自分にとって自己表現の手段になっていると感じています 。
・18.自分が取り組む活動から充実感を得られることが、私にとって重要です。
・19.もし何かが本当に難しいなら、おそらくやる価値はないでしょう。(R)
・20.自分がやっていることに、心から打ち込むのが難しいと感じます。(R)
・21.私は、自分が人生でなすべきことを分かっていると思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◯わかったこと2:アイデンティティの確立と強く関連している

自分自身を定義し、人生の方向性を決めるプロセス(アイデンティティ)が進んでいる人ほど、ユーダイモニックな幸福感が高いことが示されました。

■まとめと感想

個人的に驚きだったのが、ライアンとデシの「自己決定理論」とユーダイモニック思考が理論的に相関があると、両研究者が述べていたということです。
自己決定理論は以前から知っていましたが、正直この部分でウェルビーイングの文脈でまたこの有名な研究者が出てくるとは想像していなかったので、知的な興奮を覚えました。

また、ユーダイモニック・ウェルビーイング質問票の6つの要素を詳しく見ていったとき、
とくに2番目の「自身の最高の潜在能力の発達に対する認識=人がなり得る最高の姿を体現する、その人の固有の可能性を追求する(なれる最高の自分になる)」というのも幸福感に関わるものだと思いましたし、
「他者比較ではなく、自分の持ち味の中でなれる最高の自分を目指す」という考え方がこうした概念の中に組み込まれていることに、人それぞれの冒険譚にこそ価値があると、研究が背中を押してくれたような、そんな気持ちになりました。

ありのままの自分を知る。
なれる最高の自分を目指す。
意味ある目標のために、努力を注いで最高の自分に近づく。

少し前に知ったニーチェの「力への意志」、マズローの「自己実現欲求」などでも繰り返し登場する「人は成長してよりよい可能性を追求しようとする」という話がここでも述べられていることに、個人的に感銘を受けた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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