今週の一冊『現象学的質的研究:一人ひとりの固有の経験と向き合うために』
(本日のお話2634字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、夜20時頃から、
30kmのランニングの練習。
…というのも、実はスイス&イタリアの旅から
時差ボケが直らず、相変わらず夜目が覚めてしまっているからです。
(どうやら元に戻るのに1週間くらいかかるとか…)
なので、少しトレーニングのリズムも変えているこの頃でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ(読んでいる)本の中から一冊をご紹介する
今週の一冊のコーナー。本日の書籍はこちらです。
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『現象学的質的研究入門: 一人ひとりに固有の経験と向き合うために』
村上 靖彦 (著) /ナカニシヤ出版
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大学院の仲間と「ひとり博士プロジェクト」なるところで、
研究の方法などなどを話してたときに、紹介をしていただいた、
村上先生による著書です。
「現象学」というと聞き慣れないかもしれませんが、
入門書ということもあり、現象学というのは何なのか?、
そしてそれを研究に活かすとはどういうことなのか?などを、
具体的な事例を踏まえながら、知識や経験がない人でも
噛み砕いて理解をすることができる、そんな一冊となっています。
ということで、早速ポイントをみてまいりましょう!それでは、どうぞ。
■「現象学」とはなにか
哲学の一分野である「現象学」と呼ばれるものがあります。
これは、20世紀初頭にフッサールが始めた哲学の方法論です。
この「現象学」という哲学自体が、簡単に説明ができないもののように
感じていますが、あるサイトの言葉を借りると、
以下のような説明をされていました。
ーーー
フッサールの「現象学」とは、さまざまな先入見を排除して、
意識に現れるもの、すなわち「現象」それ自体のあり方を把握し、
その経験の本質的な構造を記述しようとする学問である。
※引用:現象学 | 時事用語事典 | 知を探究する教養メディア imidas(イミダス)
ーーー
キーワードとして、「先入観を脇に置く=エポケー」などが有名ですね、
私なりの理解で言い換えると、
「我々が、物事をどのように経験しているかを、
先入観をいったん脇に置いて(エポケーして)、丁寧に読み解き、
記述しようとする哲学」ということなのかな…と感じています。
(専門家の方、間違いがあったらごめんなさい)
*
ちなみに、現象学が生まれた背景の一つには、
19世紀後半における自然科学の発展がありました。
これまでの「神の権威ではなく、数式と数値によって自然を理解する科学」、
すなわち「客観性の科学」が生まれました。
こうした「客観的に測定し、説明する」という科学の発展の一方で、
「それだけで人間が生きて経験している世界を捉えきれるのだろうか」
という問いも生まれてきます。
*
しかし、人の心を数字で、本当に測れるのか?といえばちょっと疑問です。
あなたの幸福度は5点満点中で、「5:大変満足である」といわれたときに、
Aさんが答えた「5」と、Bさんが答えた「5」。
同じ数字ではあっても、その内側で経験していることまで同じとは限りません。
というか、たぶん、違うでしょう。
研修によって、「対話が大事だと感じた」というスコアが
Before2→After4になったとて、そこで起こっている「2」の変化は、
「それぞれの固有のものである」というのは、感覚的にはわかっています。
本書では、そのことを
「人間の営みは、客観性と数値化からは見えないリアリティを持つ。
現象学はそこに関わる(P8)」と述べています。
■「現象学的な質的研究」とは何か
では、現象学的な質的研究は、どういうものなのか?
本書の言葉を引用すると、このように記述されています。
ーーー
現象学的な質的研究は、一人ひとりの個別の経験にこだわり、
その生々しいリアリティとダイナミズムや変化を描き出す。
個別経験とリアリティを写し取る点がとりわけ大きな特徴である。(P10)
ーーー
・一人ひとりの人間の「経験を内側から」捉える。
・一人ひとりの人間の「経験が持つ特異性」をそのまま捉える。
・一人ひとりの人間の「特異性を構造として取り出す」ことで
理解&伝達可能にする。
・一人ひとりの人間の「リアリティとダイナミズム」を記述する。
こうした「一人ひとりの経験」に注目することが、
現象学的質的研究のポイントである、ということのようです。
ゆえに、(私の理解する範囲ですが)M-GTAやTEMなど、
複数の事例から一定のプロセスや構造を描こうとする質的研究とは
少し趣が異なり、「一人ひとりの固有な経験」を丁寧に捉え、
そこにどのような経験の構造があるのかを描き出そうとする点が
特徴的なのかな、と思いました。
■具体的にどのように行うのか ー方法論の技術
では、この「現象学的質的研究」をどのように行うのか、なのですが、
そのためのポイントが本書では丁寧に書かれています。
「第1章 語りを読み解く技術」
「第2章 語りを聞く」
「第3章 語りを読む」
などでは、自分自身の呼称が変わるとき(例:「自分→僕」など)、
あるいは、繰り返される言葉やリズムがあるとき
(例:「全然」「しょっちゅう」など)など、
繰り返し・冗長性・しどろもどろになる、などこそが
「語りにおけるポイント」になる、などの注目すべき点などにも
触れられています。
また、他にもいくつかポイントがありました。たとえば、
・「逐語録にすることこそ大事」
(=あえて抑揚や視線などのノンバーバルな情報を削ぎ落とし、
「語られた言葉そのもの」と向き合えるようにする)
・「逐語録は100回読むべし」
(=繰り返し読むことで、最初に受けた印象や感情的な反応から距離を取り、
語りそのものを丁寧に読み込めるようになる)
・「1人1論文とする」
(=専門書で単著の場合は5~9人くらいが適切。10人は難しくなる)
などなどです。
他にも「語りを聞く・読む」上での、技術が紹介されており、
「言われてみると判る気がするけど、深く考えもしなかった…」
という意味で、驚きがありました。
■まとめと感想
実は、まだ読みかけなのですが、何度も読みながら、
そしてできれば、こうした形で「強みの実践をする人」など、
現場でこの方法を一度で良いから使ってみることで、
ようやくその片鱗が理解できるのかな、と思いました。
たとえば、
「自分の強みを仕事で活かそうとする人は、
そのプロセスをどのように経験しているのか」などを、
M-GTAで研究する場合と、それを行う個人個人を現象学的に読み解いたら、
どうなるのだろうか、など
(浅はかすぎて、方法論にも失礼な気もしますが…汗)
また、中原先生の新刊『人材開発・組織開発の臨床知』においても、
この現象学の視点で、人材開発・組織開発のプロフェッショナルの方
(ほとんど皆知っている&お世話になっている人ばかり)が
登場しているので、その方々の貴重な物語を、
フランス料理のコースのごとく味わいたい…!という意味でも、
少しでも読んでおきたかったのが本書でした。
そういった意味で、まだ理解不足ではあるものの、
イメージが拡がってよかったな…と思っている次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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