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2910号 2022年2月8日

ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その3) ~ストレングス・ベースのコーチングの手順/3つの視点~

(本日のお話 3054字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、2件のアポイント。
並びにセミナーへの参加。

久しぶりに大学院以外にて
「自分がどうしていきたいのか」を
考える機会を設けましたが、実に良い時間でした。

アカデミックな話もいいのですが
やっぱり泥臭いほうが好きなんだな、

と自覚した1日でした。



さて、本日のお話です。

昨に引き続き、
「強みとコーチング」の論文について、
本日も泥臭く(?)紐解いていきたいと思います。

昨日までは、

・ストレングス・コーチングのオーストラリアの研究の全体像
・コーチング有効性に関するエビデンスについて

お伝えして参りました。

今日は、

「ストレングス・コーチングの研究において
どのような目的・手法で進めていったのか」

について話を進めてまいりたいと思います。

※参考・引用論文は、

ダグ・マッキー博士(CSAコンサルティング)
『THE EFFECTIVENESS OF STRENGTHBASED EXECUTIVE COACHING IN ENHANCING FULL RANGE LEADERSHIP DEVELOPMENT_A CONTROLLED STUDY』(2014)
(ストレングス・ベースのエグゼクティブ・コーチングが、フルレンジリーダーシップ開発を強化する上での影響:対照研究)

です。

それではまいりましょう!

タイトルは、

【ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その3)
~ストレングス・ベースのコーチングの手順/3つの視点~】

それでは、どうぞ。

■「効果がある」という言葉は、
それだけではなんとも曖昧なものです。

ゆえに、

”「何」に対して、
「どのような」効果がある”

という目的を明確にしなければ、
説得力を持たないものです。

ゆえに、

「ストレングス・ベースのコーチングの
有効性を研究する」

という研究テーマをおいたときも、

「”何に”対して
ストレングス・ベースのコーチングは
影響があるのか?」

を明確にしないと、
お話(研究)が始まりません。。

■では、この論文の

ダグ・マッキー博士らは
”何”を基準としてはストレングス・ベースの
コーチングの成果を測ったのでしょうか?

まず、博士らは、

”ストレングス・ベースのコーチングが
「リーダーシップ」に影響を与える”

としました。

そしてリーダーシップの中でも特に

『フルレンジ・リーダーシップ・モデル』

なるものを基準にしました。

これは

・最も一貫性があって、
・研究されていて
・包括的なリーダーシップのモデル

とされています。

なんのこっちゃ、と思われた方も、
いらっしゃるかもしれませんが、
リーダーシップには大きく

・変革型リーダーシップの要素
(人を鼓舞する・変革するなど、カリスマチックなリーダー要素 例:坂本龍馬とか)

・取引型リーダーシップの要素
(信頼を築く、誠実さを持つなどのリーダー要素 例:信頼される中間管理職など)

の2つがあります。

これをどちらも兼ね備えたリーダーシップが
フルレンジ・リーダーシップ・モデルとされており
このモデルは多くの研究がなされています。

どうでもいいですが、
なんだか響きもカッチョイイですね。

※より詳しく知りたい方はこちら
↓↓
『リーダーシップ理論を紐解こう!(中編)~カリスマ型・変革型アプローチってなんだ?~』
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9758/

■そして、

ストレングス・ベースのコーチングの成果を研究するにあたって
フルレンジリーダーシップを目的変数としました。

そうすることで

”目的が、誰もがわかる明確な基準”

となりました。

■こうして目的を明確にしたところで、

”どのような手法で
ストレングス・ベースのコーチングを実施するのか?

が次の課題になってきます。

コーチングとは人が介入するものです。
ゆえに、やり方が人によって微妙に異なってしまう恐れがあります。

しかし、そうすると研究としては

”本当に「ストレングス・ベースのコーチング手法」が
効果を発揮したのかどうかがわからない”

となってしまいます。

ゆえに、

”今回の調査・研究で介入する
プロのコーチ達のコーチングの手法を統一する”

というプロトコル(手順・ルール)が
必要になるのでした。

■ということで、ダグ博士らは、

以下のようなルールで
ストレングス・ベースのコーチング手法の統一を測っていきました。
(この定義の仕方が、なかなか勉強になります)

以下論文より整理をして、まとめてみました。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ストレングス・ベースのコーチングのプロトコル(手順)>

◯その1)「強みが何か」という概念の整理をする

・「強み」という概念は、分類され始めているものの、
『リアライズ2』『VIA(Value in Action)』、
『ストレングス・ファインダー』など、
様々な枠組みがあってそれぞれ違っています。

・その中でも、『リアライズ2』における
以下のような4つの観点で「強み」の概念を分類しました。

{強みの概念の整理}

(1)既知の「実現された強み」

(2)既知の「未実現の強み」

(3)パフォーマンスは身についているがエネルギーに乏しい「学習された行動」

(4)能力とエネルギーの両方が低い「弱点」

◯その2)コーチング・セッションの構造を整理する

・上記の概念も踏まえた枠組みの中でコーチング介入を適用することで
プロトコル(手順)を客観的に示し、方法論がブレることを避けました。
そして、コーチング・セッションに以下を行うこととしました

{コーチング・セッションの構造}

(1)プロセスの振り返り

(2)目標達成

(3)明確な行動

(4)現在までに進捗状況に関する自己評価

◯その3)ストレングベースのリーダーシップ・コーチングの4つの中核的要素

・「強みの開発」の意味を定義します。
この言葉も、曖昧になりがち。ゆえに何をもって”開発”とするのかも
以下の「強みの認識と開発」4つの要素として明確にしました。

{強みの認識と開発}

(1)強みの診断を行い、パフォーマンスの問題に強みを意識的に適用すること

(2)自信が傲慢になってしまう場合を特定する

(3)強みを他の補完的コンピテンシーと組み合わせる
(例:技術的な専門知識✕人間関係構築を組み合わせる等)

(4)強みをより広いビジネス目標や内発的な関心事と結びつける
(例:問題解決の強みを組織のイノベーションと結びつける)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

とのこと。

■さて、こんな風に

・研究目的を明確にする
・研究手法を明確にする

ことを行って研究をしました、、、

という論文のご紹介ではありましたが、
いかがでしたでしょうか。

■私の感想ですが、このプロセスは
大変学びになるなあ、と感じました。

思うのですが

・”コーチング”というプロセス
・”強みを開発する”というプロセス

のいずれにおいても、

例えば人事や研修において
(ちょっと乱暴なようですが)

「なんとなくやっている」

というケース、意外とあるのでは?
と思うのです。

あるリーダーシップ研修のワークを、
見様見真似で実施するのは、
できるといえばできます。

やってみてわかることも多々あるので
一概に否定するつもりもないのですが、

もしそのプロセスを

今回の論文における
「研究の前提合わせ」のように

・目的を明確にする
(誰もがわかる客観的な目的を設定する)

・手法を明確にする
(誰もがわかる客観的な手順を設定する)

上で手間暇をかけて
プロセスを設計したならば

”まぐれヒットと
狙ったヒットを分かつ、
分水嶺になり得る”

のでは、と思ったのでした。

■私自身、色々と研修プログラムを
設計させていただく機会も増えていますが、

今回の論文のようなプロセスを大事にすることは、

大変ではあるものの
結果的に中長期的に貢献できる研修を実施する上で
重要な行為だろう、と感じております。

自戒を込めて、掘り下げること、
丁寧にプロセスを設計すること、

大切にしていきたいものだな、

と感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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<本日の名言>
創造して破壊して、破壊して創造する。
そのプロセスが大切である。

似鳥昭雄

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