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3008号 2022年5月17日

「開発」には4つの意味がある ~人材開発のジレンマより~

(本日のお話 2153文字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は「7つの習慣」の研修実施。
またその他2件のアポイントでした。

100キロウルトラマラソンまであと5日。



さて、本日のお話です。

4月から、大学院の仲間の声かけによる
「読書勉強会」が開催されており、
そこに参加しております。

テーマの本は、

『Handbook of Human Resource Development』
Neal F. Chalofsky(著)


なるもの。

うーん、英語の書籍というのが
大学院生っぽいなあ、などと思いますが

この本は、Academy of Human Resource Developmentの出資で、
人事のプロが日々直面する基本概念と問題を取り上げている
HRDの王様的な本(らしい)です。

810ページもあります(汗)

、、、と前置きが長くなりましたが
今日はその勉強会の中で学んだことについて、
皆様に学びを共有させていただければと思います。

それでは参りましょう!

タイトルは、

【「開発」には4つの意味がある ~人材開発のジレンマより~】

それでは、どうぞ。

■「早く行きたければ一人で行け、
遠くへ行きたければみんなで行け」

という諺があります。

骨が折れることを一人でやり続けるのは、
なかなかしんどいもの。

ですが、戦術の大変な本も、
みんなで手分けをして読めば、
遠くへ行けるような気がします。

ビバ、読書勉強会。

■そんな中、先日、
私(紀藤)が担当する章の発表がありました。

内容は

『第6章 人材開発のジレンマ』

という章。

誰も手を挙げる人がいなかったので、
とりあえず手を挙げてみました。

■正直あまり気乗りしなかったのですが、
読み進めてみると、これがなかなか面白い。

どういう話かというと、
こんなお話でございました。



学問の条件とは
「定義を明確にする」ことであり、

その分野を学術的に発展させるならば、
”言葉の定義”も明確にする必要がある。

ただ、言葉というのは
結構あいまいなもので、
言っている言葉の背景にある前提が
違っていたりします。

例えば、「攻撃性」という言葉も、

・他者を支配することを目的とするオラオラ系な行為
(人へのプレッシャーが強い系)

・怒りが抑えられない爆発系な性格
(個人の感情爆発系)

どちらを想起するかは、
人によって異なります。

なので、まとめると

「言葉とはそもそも
解釈的で一時的な性格を持つ」

というわけです。

■じゃあ、
「人材開発のジレンマ」に話を戻してみて。

はたして「人材開発」の
言葉の意味はなんなの?

この意味をそっちのけで
「人材開発」を語ってよいの?

、、、そう疑問を深めていくと、
底なし沼のように問いが始まります。

その中で、この章の著者は、

”そもそもの「開発」の言葉の定義”

を探究する中で、
ある発見をするのでした。

■曰く、

”HRDの専門家向けの文献を調べたところ、
「開発」という言葉が、4つの異なる使われ方をしている”

ことがわかったそう。

著者の探究心と熱情にも頭が下がりますが、
その分け方が、おもしろい切り分けなのでした。

以下、まとめです。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<人材開発で用いられる”開発”の意味>

1)『成熟(maturation)』

・「必然的な段階を経て発展する」
・人や組織は、あらかじめ決められたように段階的かつ必然的に進行していくもの、と考える
・相互作用(なし) × 設計図(あり)(周りから影響を受けず、ゴールが決まっている)

2)『形成(shaping)』

・「計画なステップにより開発できる」
・人を、組織に合わせて形成する事ができる道具とみなす。
(偉い人がその人の開発計画を決める、みたいなイメージ)
・相互作用(あり) × 設計図(あり)/(周りから影響を受け発展。ゴールが決まっている)

3)『航海(voyage)』

・「内部の発見による開発」
・個人が自分自身を解釈し、発見する ”未知の内部経路をたどる生涯の旅”
・相互作用(なし) × 設計図(なし)/(周りから影響を受けず、ゴールも決まっていない)

4)『創発(emergent)』

・「他者との相互作用による発展」
・社会的な願望が、社会的な現実へと変容する際の、混乱した方法から生じる。
(皆の願いや思いから始まり現実が作られていく、うねうねしたプロセスで発展。社会構成主義的)
・相互作用(あり) × 設計図(なし)/周りから影響を受け、ゴールは決まっていない)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのこと。

■さて、なんとなく
ニュアンスは伝わりますでしょうか?

ちょっと乱暴に言えば

例えば、人材開発担当者の考えも、
人によってこんなパターンがありそうです。

「彼は、ほにゃららが足りていない。
それを、こうこうこういうプロセスで
上司がきっちり身に着けさせていくべし」(=形成)

という前提で開発を考える人もいれば、

「人の成長なんて、誰かから定義されるものではないし、
計画なんてできるはずもない。
偶然の出会いや経験がその人をつくるんだし、
それぞれ成長すれば、それでいいじゃん」(=航海)

という前提で開発を考える人もいるでしょう。

■どちらも確かに「人材開発」なのですが、

その”開発”が持つ文脈が
人によって違う前提で話をしても、
そこから生み出される研修とかの施策も
なんとなくズレるよね、

となるわけです。

■とすると、改めて、

言葉って曖昧だなあ、
言葉の定義って大事だなと思うとともに、

「言葉の持つ性質」を理解しつつ、
できる限り定義を明確にして語る重要さを
考えさせられるように思います。

同時にもし職場で
ある組織の人材開発チームなどであれば、

それぞれが思う「開発」の定義をすり合わせをしてみれば、
それぞれの世界観が見えてくるし、

その上でどのようなスタンスで「人材開発」をするのかを決めても
より深い対話ができて、面白いかもしれません。

ということで、

言葉もあいまいで、ジレンマだらけですが、
改めてその奥深さと面白さを感じた次第。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>

理解し合うためにはお互い似ていなくてはならない。
愛し合うためには少しばかり違っていなくてはならない。

ポール・ジュラルディ(フランスの詩人/1885-1983)

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