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3123号 2022年9月9日

「上司が直接管理できる部下の数」は何人なのか? ースパン・オブ・コントロールの研究からわかったことー

(本日のお話 4400字/読了時間6分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は研修プログラムの作成。
また2件のアポイントとコーチングの実施でした。
夜は10キロのランニングでした。



さて、本日のお話です。

コーチングの研修を行っていて
しばしば頂く質問で

「部下の数が15人と多すぎて、
1on1など実施をする時間がありません(汗)」

というものがあります。

今日は、このあるあるの問題

「管理職が直接見ることができる
部下の数は何人なのか?問題」

について、ある論文を元に、
掘り下げてみたいと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【「上司が直接管理できる部下の数」は何人なのか? ースパン・オブ・コントロールの研究からわかったことー】

それでは、どうぞ。

■あるコンサルティング会社で
マネジャーとして働いている友人が
以前、こんな事を言っていました。

「会社の方針で、
毎週1on1をやることになったんだけどね。

自分の部下12人いるのよ。
毎週30分×12人。

なので、1週間のうち丸1日は1on1の日。
でも、他の仕事が減らないのね。
コンセプトはわかるが、かなりキツいんだよね」

、、、とのこと。

生産的かつ仕事ができる人が
そんなコメントをしているので、
これは本当に大変なんだろうな、

と同情にも似た思いとともに、
”構造的な難しさ”を感じたのでした。

そりゃ、多いとコーチングできないよね。。。。

ごく当たり前のようですが
似たようなご相談は、しばしば伺います。

■上記に関して、

「スパン・オブ・コントロール(統制の範囲)」

という研究があります。

これは、

”上長が「直接管理できる部下の人数」”

を意味します。

この研究によるおt,

”直接管理できる人数には制約があり、
限界を超えて管理を行おうとすると、
組織のパフォーマンスに大きな悪影響を与える”

といわれています。

そして現在のところ、

”経験的基準として、同じ目標を共有する
【5~7人の部下を直接管理することが限界】である”

とされています。

(※参考:中原淳(2017)『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』.PHP研究所)

■ふーん、なるほどね。

「直接管理できるのは5~7人くらい」なのね。

ということでおしまい、

でもよいのですが

せっかくなので、実際に
この「スパン・オブ・コントール」について
実証研究を行った論文がありました。

それを一緒に読み解くことで、
より説得力を持って理解できるかと思います。

■ちなみに、どんな論文かというと

「航空会社の飛行場における
出発プロセスに関わるチームを対象に、

・上司が管理範囲の広いチーム(メンバー数 平均33名)
・上司が管理範囲の狭いチーム(メンバー数 平均8名)

のそれぞれにおいて
パフォーマンスがどう異なるのかを調査した」

という研究です。

以下、大まかに論文の趣旨をまとめてみます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<論文まとめ ー管理職の範囲、関係性の度合いと航空の出発パフォーマンス(Gittell, Jody Hoffer.(2001).>

●研究の概要

・集団のパフォーマンスに対する上司の貢献度や
貢献度を高めるための統制の範囲(スパン・オブ・コントロール)について
様々な議論がなされているが、

本論文では、その論争を要約し、
統制の範囲やそれに伴うパフォーマンスについて
仮説を検証することを目的とする。

●統制の範囲(スパン・オブ・コントロール)に関わる理論

1)「管理範囲が広いこと(メンバーの数が多い)」を必要とする立場(=官僚制理論)

・グループが設立された時は、プロセスを管理したり、
メンバーを支援する目的で、チーム構築活動にメンバーを巻き込むことが必要。
その後、グループがアイデンティティを獲得し、タスクや組織の問題に対処する方法を
独自に開発し始めると、管理者や責任者はグループ活動において目立つ存在から身を引くことができる。
(Hackman and Oldam,1980)

・このように組織内の管理職を徐々に減らしていくことは、
グループメンバーにとっても、組織にとってもWin-Winの提案であると考えられる。
管理職の数が減り、コントロールの範囲が広がることで、自律性に対する個人のニーズと
パフォーマンスに対する組織のニーズの両方が満たされる
(Walton and Schie inger,1979)

・また、製造業において、管理職の廃止が生産性の工場に関連している、という研究もあり、
メタ分析では管理職のいないワークチームのほうが、管理職がいるワークチームより
パフォーマンスが高いと結論付けている(Beekun,1989)

2)「管理範囲が狭い(メンバーの数が少ない)」を必要とする立場(=本論文の立場)

・効果的なリーダーのあり方は、時間がかかり、人間関係を重視するものである。

・部下の仕事に関する相互の合意は数分ではできない。
役割分担を明確にすることはできず、目標を設定することも
相当な議論を経なければできない。(マクレガー)

・管理範囲が狭いと、管理者がメンバーのそばで働く時間が増える。
関係を構築し、コーチングとフィードバックを提供する機会が得られる。
(Likert,1961)

3)「管理範囲の広い/狭い」による影響とは

・管理範囲が広がる → マネジャーはより自動的な意思決定をするようになる
(決まったことを、決まったように管理するようになる)

管理範囲が狭くなる → メンバーとの接触が増え、コミュニケーションの機会が増える

・実証的な研究では、一貫して
「管理範囲が狭いほうが有効である」という結論になっている。

4)「相互依存性の高い仕事」では「管理範囲が狭いこと」が重要(★ポイント)

・相互依存性の高い仕事(お互いの仕事がお互いに影響を与える仕事)では、
”仕事そのもの”から有用なフィードバックを得ることが難しくなる。

・他者からのフィードバックで
「その仕事が周りにどんな影響を与えたか」「成果にどうつながったか」を
理解することが、パフォーマンスの向上につながる。

・よって、相互依存性の高い仕事の場合、
フィードバックやコーチングの機会をより得やすくするために
「管理範囲が狭い」事が重要になるとされている。

●研究の方法

◯研究対象

・アメリカの航空会社(4社9チーム)で出発プロセスに関わるチームを対象に実施した
※1つ目のグループ:12の機能間の連携が弱いように思われるグループ
2つ目のグループ:12の機能間で非常に効果的な調整を行うという評判を持つグループ

◯実施方法

*定量調査(質問紙調査)
・合計84の質問項目で調査
・「統制の範囲」「関係性の度合い」
「グループのパフォーマンス」「業績」等の測定を行って構造間の関係を明らかにした。
・アンケートの回収率89%、354枚のアンケートが回収

*定性調査(インタビューと観察)
・1つ目の現場では、8回のインタビューと、8日間の観察を実施
・2つ目の現場では、20回のインタビュー、5日間の観察

●研究からわかったこと

◯定量調査の分析結果

・「管理範囲の広さ」が
「集団のパフォーマンス」が低くなることがわかった。

・「管理範囲の広さ」は、
グループメンバー間のタイムリーなコミュニケーション/
問題解決能力/助け合い/目標の共有/知識の共有/相互尊重に
負の相関関係を持つ。

・「管理範囲が広くなる」と「関係性の度合い」のスコアが下がり、
「関係性の度合い」が下がると「グループパフォーマンス」が下がることがわかった。

◯定性調査の分析結果

インタビュー/観察による調査の結果、
2つの対照的なグループの様子が伺えた。

*グループA(管理範囲が広い=平均33.8人)
・1人あたり33.8人のメンバー。
・部下とのコミュニケーションは、成果基準の伝達や成果測定に時間を費やしていた。
・マネジメントの特徴は、上司が問題を分析し、解決しようとする姿勢はみられない。
本社からの報告義務を遵守するため、遅延を起こした責任のある部門に責任を負わせることに焦点。
・現場の声「(上司は)皆の遅刻ばかり気にしている。そうしないとその週の成績が見えないから」

*グループS(管理範囲が狭い=平均8.7人)
・1人あたり8.7人のメンバー
・部下とのコミュニケーションは、成果基準を確認するより、問題解決と助言の形であった。
・管理職は権限を持ちながらも、グループメンバーの仕事をこなしていた。
「飛行機を出すためなら、どんなことでもやります」の姿勢であった。
・グループメンバーへのコーチングとフィードバックにグループAより多くの時間を費やしていた。

●結論

・(相互依存性が高い仕事において)
管理範囲が広いと、グループのパフォーマンスを低下させる可能性がある。

・より詳細には、「管理範囲が広いこと」により、
グループプロセス(メンバー間の関係性の度合い)に負の影響を与え、
それにより、パフォーマンスが低下する。

・よって、「管理範囲が広いこと」は、
上司がコーチングやフィードバックに関与することを妨げ、
グループメンバー間の関係の度合いを損なう関係が示唆される。

※Gittell, Jody Hoffer.(2001).
”Supervisory Span, Relational Coordination and Flight Departure Performance: A Reassessment of Postbureaucracy Theory.”
(管理職の範囲、関係性の度合いと航空の出発プロセスにおけるパフォーマンス:ポスト管理制理論の再検討)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■さて、いかがでしょうか。

ポイントをまとめると、

『相互依存性が高い仕事の場合、
上司のスパン・オブ・コントロールは狭いほうがよい』

となります。

職人のように、
もし自分の仕事の成果だけで
出来不出来を見返すことができる
”独立性が高い仕事”であれば別ですが、

この航空会社の12の機能部門のように、
発券係、搭乗手続係、荷物係、客室清掃員、
給油係、貨物係、運航係、パイロット、客室乗務員、整備士
と仕事と仕事が影響を与え合う”相互依存的な仕事”である場合、
「関係性の度合い」がパフォーマンスに影響を与えます。

かつ、人と人の関わりで仕事が進むため、
「上司のコーチングやフィードバック」が
パフォーマンスの向上に影響を与えます。

と、するときに、

「管理範囲が狭いこと」により

1)チームの「関係性の度合い」が高まる
2)上司からの「コーチングやフィードバック」が得やすくなる

というメリットがもたらされ、
結果として、パフォーマンスが高くなる、

と言える、となります。

■経験則からも、

部下が多すぎると、当然ながら
コーチングやフィードバックは難しくなります。

部下の仕事が独立して行えるものであれば影響度は少ないでしょうが、
「同じ目標を共有するチーム」であるならば、
管理範囲は狭いほうが望ましいといえます。

ということで、

【上司が「直接管理できる部下の数」は何人なのか?
ースパン・オブ・コントロールの研究からの示唆ー】

の結論としては、

・相互依存性が高い仕事の場合、管理範囲は狭いほうが望ましい
・そしてそれは「5~7人程度」

というお話でした。

もちろん、仕事の種類により変わりますが、
一つの観点として、参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

上司の権威をつけるための最良の方法は、
部下が困っている仕事を解決してあげることである。

バルザック(フランスの小説家)

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