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3182号 2022年11月7日

「聞くこと」が部下の能力を高め、自信を与える ー論文「人材の成長を促すMBO面談の仕組み」より

(本日のお話 2564字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

「目標管理制度(MBO:Management By Objectives)」

と呼ばれる制度があります。

大企業の8割が
その制度を利用しており、
皆様にとって馴染みがある方も
少なくないのではないでしょうか。



そんなMBOに関して

『千葉(2022),人材の成長を促すMBO面談の仕組み』

という論文があります。

”どのような評価者(管理職)の行動が
評価フィードバックにおいて
プラスの影響を与えているのか”、

について研究された論文です。

その内容が勉強になりましたので
本日は論文の内容を引用させていただきつつ、
学びと気づきをご共有させていただければと思います。

それでは、まいりましょう!

タイトルは

【「聞くこと」が部下の能力を高め、自信を与える
ー論文「人材の成長を促すMBO面談の仕組み」より】

それでは、どうぞ。

■目標管理制度(MBO)。

・3ヶ月に1度など、定期的に部下と面談

・立てた目標に対する振り返りと評価

・今後の目標について合意する

という内容を含みます。

MBOには、

1,部下の業績評価のための機能
2,部下の能力開発のための機能

の2点があります。

しかし実際は、1の業績評価にのみ
フォーカスをされている場合も
少なくないようです。

■ですが、それは
致し方ないことかもしれません。

MBOを導入している企業において

その骨格を占める
「評価フィードバック」に関して言えば

・どのように行うのか説明がなかった
・概要だけ簡単に説明された

というような、

細かいやり方については
管理職に委ねられており、
ブラックボックスになっている現状も見られるようです。

■ですが、

評価者(上司)の言動は
被評価者(部下)の昇給・昇格にも影響ますし、

評価フィードバックにも
少なからぬ影響がある、と想像されます。

、、、としたときに、
たとえば60分なら60分の時間で

・どのような「内容」で
評価フィードバックが行われたのか?

・どのような「態度」で
評価フィードバックが行われたのか?

が、

・部下の「能力向上」

・部下の「自己効力感」(=できるという自信)

に対して、
どのような影響を与えるのかは
(特にMBOを導入している企業の方にとっては)
非常に興味深いところかと思います。

■以下、簡単に論文の概要を
まとめさせていただきます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【論文まとめ「人材の成長を促すMBO面談の仕組み」】

<研究の狙い>
・どのようなMBO面談が
被評価者の「能力向上」と「自己効力感向上」のそれぞれにプラスの影響を及ぼすか明らかにし、
社員の成長につながる評価フィードバックの方法を検討すること

<仮説>
MBO面談において
評価者(上司)の何が、被評価者(部下)の
以下のものに影響を与えるという仮説を立てた。

・仮説1:”評価者の傾聴”は、「能力向上」に正の影響を与える。
・仮説2:”評価者の傾聴”は、「自己効力感向上」に正の影響を与える
・仮説3:”評価フィードバックの内容”は、「能力向上」に正の影響を与える。
・仮説4:”評価フィードバックの内容”は、「自己効力感向上」に正の影響 を与える。

<調査対象者>
・従業員300名以上の企業で働いており、
MBOの仕組みが導入されている非管理職1810名

・その中で「評価フィードバック」の仕組みがある
1519名を分析に使用した

<調査方法>

◯被説明変数(部下の能力向上、部下の自己効力感向上)

*「能力向上」の2項目
・知識が増えた
・スキルが高まった

*「自己効力感」の5項目
・長期的な問題を分析して、解決策を見つける自信がついた
・戦略立案に貢献できる自信がついた
・自分の職務における目標を設定する自信がついた
・問題が発生した時、関係者と対話する自信がついた
・職場の同僚の前で、自分の業務に関する説明をする自信がついた

◯説明変数(上司の傾聴、評価フィードバックの内容

*「評価者の傾聴」の2項目
・納得いくまで上司と話し合えた
・あなたの発言は尊重されている

*「評価フィードバックの内容」
・達成基準と実際の達成状況
・期中に取り組んだことの振り返り
・今後の課題の抽出
・今後のキャリアについての話し合い
・新しい仕事への働きかけ

<調査結果>

1)能力向上への影響について

・「評価者の傾聴」に該当する
”納得いくまで上司と話し合えたこと”と”あなたの発言は尊重されていること”のいずれかは
すべてのキャリア段階において「能力向上への影響」が確認された

2)自己効力感向上への影響について

・「評価フィードバックの内容」に該当する
”達成基準と実際の達成状況”,”今後のキャリアについての話し合い”,”新しい仕事への働きかけ”、
・「評価者の傾聴」に該当する
”納得いくまで上司と話し合えた”、”あなたの発言は尊重されている”が
自己効力感向上に影響を与えていた

※引用:千野翔平(2022).“人材の成長を促すMBO面談の仕組み.” キャリアデザイン研究 18: 93–102.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

■さて、いかがでしょうか。

本研究で明らかになった、

《評価フィードバックにおける
上司の「傾聴」は
部下の「知識・スキルの向上」に資する>

という内容は、
一考に値すると感じます。

■私も管理職の方に対して

コーチングのワークショップを
実施させていただくことがあります。

率直な感想として

「なにか有益な影響を与えたい」
「つい喋ってしまう」

ということで

アドバイスを重視するがゆえなのか、
はたまた長年染み付いた習慣なのか、

”聞くこと”を苦手とする方も
少なくありません。

アドバイスや情報提供は
それでもちろん大切なことであり、
効果がある行為です。

一方、この研究で語られているような
上司が部下の話に耳を傾けることが持つ影響力、

すなわち、

”傾聴の力”

も改めて着目することも、
重要なのではなかろうか、

と感じます。

■また「評価フィードバックの内容」も

どういったことを話すと
効果があるかを考える上で、

・達成基準と実際の達成状況
・今後のキャリアについての話し合い
・新しい仕事への働きかけ

の3つが
特に部下の自己効力感向上に影響を与えていた、
ということも参考になりそうです。

相手や文脈に応じて
柔軟に変えていくことも大事ですが、
考えさせられる論文だな、

と感じた次第でございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
賢者は聞き、愚者は語る。

ソロモン(古代イスラエルの王)

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