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3204号 2022年11月29日

職場にコーチングスキルを根付かせるための7つのヒント ー論文『コーチとしてのリーダーを育成する:職場にコーチングスキルを根付かせるための洞察、戦略、ヒント』より

(本日のお話 3253字/読了時間4分)


■おはようございます。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。
その他、夜は論文の進捗など。



さて、本日のお話です。

本日もコーチングに関する論文からの学びを
皆様にご紹介させていただければと思います。


タイトルは



【職場にコーチングスキルを根付かせるための7つのヒント 
 ー論文『コーチとしてのリーダーを育成する:職場にコーチングスキルを根付かせるための洞察、戦略、ヒント』より】



それでは、どうぞ。



■職場で1on1が流行り始めたのは、
2000年代頃からです。

大企業を中心に、
様々な組織が取り組み始めました。

しかし、そうした導入された企業で

「1on1が完全に定着している組織」

というのはやはり、
一部に留まるようです。



■どんな施策でもそうですが、

「1回やってみる」ことと
「定着するまで繰り返す」ことは
大きな差があるもの。

そして、効果的な施策であればあるほど、

”どうやって根付かせるか”

まで考えたいというのは、
人・組織に関わる多くの人が
考えることではなかろうか、

と思います。



■そんな中で、


シドニー大学コーチング心理学ユニット、
エビデンスに基づくコーチングアプローチのパイオニアとして
認知されているアンソニー・M・グラント氏による論文、

『コーチとしてのリーダーを育成する:
 職場にコーチングスキルを根付かせるための洞察、戦略、ヒント』

Grant, Anthony M., and Margie Hartley. 2013.
”Developing the Leader as Coach: Insights, Strategies and Tips for Embedding Coaching Skills in the Workplace.”
Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice 6 (2): 102–15.

において、
まさにタイトルにある、

”職場にコーチングスキルを
 根付かせる考え方やヒント”

について説明されていました。

以下、論文のポイントについて
まとめてみたいと思います。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

論文まとめ『コーチとしてのリーダーを育成する:職場にコーチングスキルを根付かせるための洞察、戦略、ヒント』


<本論文の概要>
・コーチングスキルを教え、組織に定着させるためには
 「効果的な方法論を開発すること」が重要である。
 
・本論文では、そのための効果的な方法論の開発おヒントと
 組織環境におけるリーダーのコーチングスキル(7つのヒント)を紹介する


<コーチングプログラムの導入の課題とは?>
・コーチングスキルは、すべてのリーダーに重要なツールだが、
 必要なスキルが自然に身につく人はごくわずかである(Goleman, 2000)
 
・またリーダーがコーチングのスキルを身につけるには時間がかかる。
 調査によると、職場でコーチングスキルを使うことに慣れるには、
 少なくとも3ヶ月から6ヶ月かかると言われる(Grant, 2010)。


<コーチングプログラム開発の効果的な方法>

・ワークショップのプログラムは、
 「何がコーチングに効果的であるかについての科学的研究を利用する」ことが大事である。
 すなわち、エビデンスに基づく成人学習の主要原則を採用する必要がある(Clark, 2010)

・また、理論と実践を明確に結びつけた非常に実践的なものでなければはならない。
 参加者がすぐに肯定的な結果を実感できることが必要である。
 
・またソリューションフォーカス型認知行動療法(SF-CB)のフレームワークは、
 エビデンスに基づくだけでなく、理解しやすく適用しやすい強固な理論的枠組みを持ち、
 専門用語がなく非常に効果的であるという重要な利点がある(Grant、Curtayne、& Burton、2009年)

・SFーCBは最も研究され、検証されたコーチングのアプローチであるためよく適している。
 (Grant, Passmore, Cavanagh, & Parker, 2010)。


<プログラム実施のポイント>

◯プログラムデリバリーのポイント
・間隔をあけて学習すること
・内容を覚えやすい小さな塊に分割して認知過多を避けること
・協調学習を促進する
・参加者が自分の言葉でアイデアやコンセプトを表現すること(教材を自分のものにすることを推奨する)
・参加者が主要コンセプトを覚えやすいように設計されたテクニックを使用すること
 (Leberman、McDonald、& Doyle、2012年)

◯フォローのポイント
・ワークショップ直後の数週間に、文書によるコーチング・セッションを一定回数実施する
・定期的に開催されるピアコーチンググループに参加させる
・経験豊富なコーチングスーパーバイザーとコーチング関連の問題について話し合うことができるフォローセッションを設ける(Grant, 2012)。


◯プログラムの開発のポイント
・「現代の職場で管理職が直面している課題」について明示的に対処する必要があります。

・職場におけるコーチングは、
 「1)フォーマルな構造化されたコーチング・セッション」から、
 「2)インフォーマルなワークプレイス・コーチング」まで連続的に存在する。

・「1)フォーマルなコーチング」では、通常、明確な目標が設定され、
 セッションの開始と終了が明確で、会話のほとんどが "コーチングモード"であるミーティングとなる。
 
・対照的に「2)インフォーマルコーチング」は、日常的な職場での会話である。
 つまり忙しいプロジェクトの最中に廊下で見つけた数分間、高度に集中した短い会話で起こる。
 そこではコーチングのテクニックがより暗黙的に使用される。
 (管理職が行うコーチング会話のほとんどを占めている(Anderson)


<コーチングに役立つ7つの事例>

◯ヒント1:リーダーがコーチングのスキルをロールモデルになる

 リーダーの振る舞いは、他の人に大きな影響を与えます。
 コーチング行動の模範を示すことが大事。

◯ヒント2:聴き方に注意する
 
 聴き方によって、何を聴くか、どう受け取られるかが決まる。
 私たちは自分のリスニングスタイルについて考えることはほとんどない。
 どのように聴いているかに自覚的になること。

◯ヒント3:職場の人の個人の強みを認識する

 人は、自分の強みを自覚し、それを活かして仕事をするとき、最もうまくいく。
 日々の業務に追われるリーダーは、他人 の強みを認める時間がないことが多く、
 これはコーチングの会話で特に重要である。

◯ヒント4:コーチングによるソーシャルキャピタルの強化
 
 組織を効果的に機能させる人間関係が強固であれば、チームはより生産的になり、パフォーマンスも向上する。
 組織のソーシャルキャピタルは、組織の成功と人々の幸福に不可欠なものである。

◯ヒント5:ポーズをとる時間をとる

 私たちはしばしば、一息つく暇もなく、一日を急いで過ごしています。
 結果、疲弊し、フラストレーションが溜まる。
 このようなストレスにさらされていると、 コーチングや他者へのポジティブな対応ができなくなる


◯ヒント6:目標を効果的かつ柔軟に活用する
 調査によると、目的意識を持ったポジティブな変化をもたらすためには、
 目標設定が重要であることが分かっている。目標を達成するためには、具体的であることが必要です。
 目標はSMART(specific, measurable, attractive, realistic, time-framed)で設けること

◯ヒント7:セルフコーチングを仕事に生かす
他人をコーチするためには、自分自身をコーチするのが上手である必要がある。
そのためには、自分自身を振り返り、棚卸しし、目標を設定することが必要である。
最高の人間であっても、常に改善の余地がある。


※参考:
Grant, Anthony M., and Margie Hartley. 2013.
”Developing the Leader as Coach: Insights, Strategies and Tips for Embedding Coaching Skills in the Workplace.”
Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice 6 (2): 102–15.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。



■各研究者が大切だと言っていることを

・コーチングプログラムの開発

・コーチングプログラムの社内の巻き込み

・コーチングスキルの定着のためのヒント

などの観点から網羅的に記述されていることが
わかります。



■データ中心の論文ではありませんが、

こうした実践のためのヒントについて
”企画の始まりから終わりまで”概観することで、

実際にどのように社内に展開すると
より効果を高めることができるのか、
チェックするためのシートになりうる、

と感じました。
(全部やるのは大変そうですが、、、苦笑)



■いずれにせよ、
まだまだできることはある、ということですね。

論文にさり気なく書いてあった

”最高の人間であっても、常に改善の余地がある”

という言葉が刺さります。

ということで
今日はコーチング導入における
論文のご紹介でございました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

これで十分、と思って現状を認めてしまうのは、
バックミラーだけを見て運転するのと同じことだ。

マイケル・デル(米国の実業家)
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