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3312号 2023年3月19日

今週の一冊『「経験代謝」によるキャリアカウンセリング: 自己を見つめ、学びを得る力』

(本日のお話 3053字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、独立・起業された方との
「戦略合宿」の2日目でした。

同じ領域で奮闘している人の話を聞くだけで、
励まされる、勇気をもらえる感じがして、
実にありがたい時間でした。

昼からは16キロのランニング。



さて、本日のお話です。

毎週、日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『「経験代謝」によるキャリアカウンセリング: 自己を見つめ、学びを得る力』

立野 了嗣 (著)/晃洋書房

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です。

■私事ですが、本日この後

「国家資格キャリアコンサルタント」

実技試験がございます。

キャリア・コンサルタントは、
不思議なことに
受験団体が2つありまして。

それが

・日本キャリア開発協会(JCDA)と
・キャリアコンサルティング協議会

の2つです。

そしてそれぞれに
大切にしている価値観が
異なっているとのこと。

■学科試験は同じですが

”実技試験(ロープレ&論述)は
見られるポイントが団体毎に違う”

とされていて、合格率も
毎回団体毎に違う、

となっております。

(やっぱり不思議。
でも色々事情があるようです)

■ちなみに、私(紀藤)は

・日本キャリア開発協会(JCDA)

で試験を受けることにしました。

その理由は

”「傾聴」を重視している”

ということで、
比較的自らのスキルと相性が合っているかな、

という理由です。

そしてこのJCDAが大事にしている
キャリアカウンセリングの考え方が、

今回ご紹介の著書のタイトルの

『経験代謝』

です。

■結果からお伝えすると、

「人の可能性を大事にしているように思い
面白い一冊であった」

と感じています。

おそらく、

「経験代謝」

という言葉は
ほとんどの人が聞いたことがないかと思います。

、、、というのも、この言葉
キャリアカウンセリングを
パイオニアとして日本に持ち込んだ著者が作った
”造語”であるとのこと。

ゆえに、

世界的に使われている
アカデミックな言葉、
というわけではなさそうです。

■ですが、
その基本とする支援の姿勢が、

人のキャリアを
出世や異動などの表面的な変化ではない、

「自己概念の成長」

と捉えているところが
共感をしてしまいました。

■以下、この著書のポイントを、
ざっくりとお伝えさせていただきます。

まず、本著書の考えでは

「キャリア= 仕事を中心とした人生全般」

としています。

そして、

今の自分がどう出来上がっているかと考えたとき、
それは「過去の経験」である、

と捉えています。

■しかし、

この経験というのは、
自分と切り離して考える機会が
なかなかありません。

例えば、

尊敬する上司と出会ったことで
大切にしている価値観や仕事観が
自分の中に芽生えた、

という「経験」。

あるいは、

もっと幼少期に、

親を見ていて
仕事とはこうあるべき、という
信念のようなものが生まれた

という「経験」。

それらはあくまで
「主観」としての経験です。

■それらの「経験」により

”自己概念”すなわち、

・自分がどんな人間であるかという考え
・自分自身に関する知識や特徴を把握する観念
・自分で自分を捉えたときのイメージ、自己像

が成長・発達していく、

といいます。

■ポイントは、

”自己概念が「成長・発達」する”

というところです。

自己概念は
「決まったもの」ではなく、
変化していきます。

それは

・自身の過去の経験を振り返り、
改めて吟味し直すこと、

そして、

・「ありたい自分」を考える中で
これまでの経験をそのありたい自分に至る
全体像の一部として物語を描くこと

(キャリアの大家・サビカスは
この経験をつなげていくストーリを
「金の糸」と呼びました)

このことによって、

”自己概念が「成長・発達」する”

としています。

■しかし、我々は

普段これらの「経験」を振り返る機会は
あまりありません。

経験は「主観」として通り過ぎ
「客観」的に見つめることは、
問われない限りあまりないものです。

■そんななか著者は

『経験代謝』

についてこのように述べました。

”経験代謝とは
「経験から学ぶ”学びの構造”」

である。

そして、こう続けます。

”経験代謝という名称は、
新陳代謝からヒントを得て付けました。

生物は新陳代謝のお陰で、
食料や飲み物を取り入れ、消化し、肉体の一部として、

またはエネルギーとして取り入れ、
老廃物を排出することで、その体を維持し、
成長や活動を続けることができています。(中略)

生命においてこの動的平衡を支えているのが
新陳代謝です。

経験代謝の代謝の対象は生体内の物質ではありませんが、
そのメカニズムが同様であるとして、
新陳代謝の新陳の部分を経験に変え、経験代謝としました。”
(P.48より引用)

と。

■少し抽象的なので
私なりに解釈をしてみました。

つまり、人は

・過去の「経験」の吟味&再解釈
・自らのありたい自分の定義
・新たな「経験」との出会い

これらによって、

”人の自己概念も
同じ個人であっても成長・発達し、
作り変えられていく”

ということ。

その経験の意味づけ
再解釈によって、

自分の信念を見つめたり
あるいは出来事に意味付けを行ったりすることで
自己概念は成長するのです。

それは

人間の可能性を信じる世界観に
立脚しているように私は感じました。

■そして、

この「経験代謝」を軸として
キャリアカウンセリングを行う際の流れが
以下の3ステップとなります。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<経験代謝サイクル>

1)「経験の再現」

・経験は主観的なものだが
これを客観視することで自己概念を認識することができる。

・目的としては以下の2つである。

1つ目が、相談者の経験(感情や考え)を再現すること。
2つ目が、相談者が、自分自身を振り返ること。

・具体的なアプローチとして

”相談者の経験(感情/考えを含めて)
「絵を描く」心がけを持って関わること”

がポイントとされる。



2)「意味の出現」

・意味の出現とは、
「自己と経験の客観視を行うこと」による気付きである。

・ある出来事に対して感情や考えを持つのが「経験」だが、
その感情や考えの背景に「自己概念」がある。

・経験を吟味し、
なぜ自分がそのような感情や考えを持つのかを探索する中で
「自己概念の影」が見えてくる。

(あるべき自分像、信念、価値観などが
繰り返される言葉、矛盾した表現などから”透けて見える”)

・例えば、「何があなたをそう(そのような気持ちに)させたのか?」
などで、意味の出現を促す。



3)「意味の実現」

・「意味の実現」とは「ありたい自分」に基づいた
経験を生み出すための課題設定とその実行である。

・自己概念とその中核の「ありたい自分」を
具体的な行動を通して表していく。

・段階としては、
1,「ありたい自分」の再確認
2,行動テーマの設定/実行 である。

※参考:『「経験代謝」によるキャリアカウンセリング: 自己を見つめ、学びを得る力』
P59~87
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■全体を通じて、
マーク・サビカスの

”キャリア構成主義”

を思い出すような内容でもある、
と私は感じました。

■こうしたキャリアカウンセリングは
時間も労力も必要であるとも思います。

ただ、

「自己を見つめる」

という深い知的行為

こうした対話ができるようになると、

もっとお互いの多様性や
それぞれの人生のテーマを尊重できる
そんな組織や社会に繋がるようにも感じます。

興味深い一冊でございました。

ということで、
キャリア・コンサルタントの資格を
(JCDAにて)受ける方には
特にお勧めでございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『「経験代謝」によるキャリアカウンセリング: 自己を見つめ、学びを得る力』

立野 了嗣 (著)/晃洋書房


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