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3212号 2022年12月7日

キャリア・アダプタビリティの促進には、人間関係が重要?! ー論文『IT技術者のキャリア・アダプタビリティの特徴』より

(本日のお話 2684字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は大学院の担当の先生との面談。
記述中の論文についてのアドバイスをいただきました。
まず終わらせる!を目標に進めてまいりたいと思います。
気持ちは100キロマラソンの80キロ地点です。



さて、本日のお話です。

今日は「キャリア」に関する論文から
また一つ学びをご紹介させていただければと思います。

内容は
「IT技術者のキャリア・アダプタビリティの特徴」
というお話です。

ちょっとマニアックなようですが、
IT技術者以外の方にも示唆に富む内容です。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【キャリア・アダプタビリティの促進には、人間関係が重要?!
ー論文『IT技術者のキャリア・アダプタビリティの特徴』より】

それでは、どうぞ。

■キャリアと人間関係。

一見関係がないようなこれらのことですが、
何となく関連があるような気もします。

職場内の人間関係が良好であること

例えば、
上司との垂直の関係が良好であったり
あるいは同僚との関係が良好であったりすることは、

回り回って自分の仕事のチャンスや学びを
増大させてくれるような気がします。

■ちなみに、

・「垂直交換関係(上司との関係)」
「水平的交換関係(同僚との関係)」が

・「仕事経験からの学び」を促進し、

・「キャリア自律」に影響を与える、

という研究もあります。
(堀内,岡田(2016)『キャリア自律を促進する要因の実証的研究』)

■なるほど、関係が学びを促進し、
そしてキャリアに影響を与えるわけです。

そしてそれと似た示唆を与えてくれる研究として、
今日ご紹介させていただく、

「IT技術者のキャリア・アダプタビリティの特徴」

について、調べた論文があります。

■ちなみに、言葉の定義ですが

「キャリア・アダプタビリティ」とは、

直訳すれば、”キャリア適応力”となり、
キャリアにおけるよく知られた尺度の一つとなっています。

以下の4つの次元によって構成されます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<キャリア・アダプタビリティの4つの次元>

◯キャリア関心(concern)
:未来志向つまり未来に備えることが重要であるという感覚のこと

◯キャリア統制(control)
:自らのキャリアを構築する責任は自分にあると自覚し確信すること

◯キャリア好奇心(curiosity)
:自分自身と職業を適合させるために好奇心を持って、職業に関わる環境を探索すること

◯キャリア自信(confidence)
:進路選択や職業選択を行う際に必要となる一連の行動を適切に実行できるという自己効力感のこと

※Savickas(2005)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■そして、この論文では

・キャリア・アダプタビリティの特徴を
IT技術者と、多職種を比較し、

・キャリア・アダプタビリティと
職場ストレッサーとの関連を明らかにする

ことを目的として実施されました。



ということで、早速論文の内容をみていきましょう。
以下、ポイントをまとめました。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【論文まとめ『IT技術者のキャリア・アダプタビリティの特徴』】

<論文の背景>
・IT業界における技術革新はとどまる気配を見せない。
IT技術者は自身の技術の陳腐化を憂い、キャリアに不安を抱いている。
本研究では、IT技術者個人のキャリア意識に焦点を当てる。

<論文の目的>
1)IT技術者のキャリア・ アダプタビリティの特徴を
”他職種との比較”により明らかにすること

2)”職場ストレッサー(人間関係・会社・仕事)が
IT技術者のキャリア・アダプタビリティに与える影響”を明らかにすること

<研究の方法>
・4企業の従業員274名に対する調査票による
・質問項目については以下の3種類
1)属性(性別、年齢、職種)
2)キャリア・アダプタビリティの(20項目)
3)職場ストレッサー(20項目)

※職場ストレッサーは因子分析の結果、以下3因子9項目となった。
*人間関係ストレッサー(3項目:社内の人間関係がうまくいかない、社内のメンバーとのコミュニケーションがうまくいかない、相談できる友人・知人がいない)
*会社ストレッサー(4項目:評価が低い、給与が低い、会社の将来が不安、社内での昇格見込みがない)
*仕事ストレッサー(2項目:仕事の質が自分にとって難しい、仕事の量自体が多い)

<研究の結果>
◯わかったこと1
・IT技術者のキャリア自信・キャリア好奇心が、
IT技術者以外のそれよりも低いことがわかった(若干ではあるが)

◯わかったこと2
・「人間関係ストレッサー」が、IT技術者の「キャリア自信・キャリア関心・キャリア統制」に負の影響を及ぼす。
・「仕事ストレッサー」が、IT技術者の「キャリア好奇心」に負の影響を及ぼす。

※古田(2012)“IT 技術者のキャリア・アダプタビリティの特徴:
他職種との比較および職場ストレッサーとの関連に着目して.”
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのことでした。

■ふーむ、なるほど。。。面白いです。

私が特に面白いな、と思ったのが

「研究の結果 わかったこと2」

の箇所でした。

「人間関係ストレッサー」、すなわち

・社内の人間関係がうまくいかない
・社内のメンバーとのコミュニケーションがうまくいかない、
・相談できる友人・知人がいない の3項目が、

「キャリア自信」、すなわち

・自分らしいキャリアを歩んでいける自信がある
・新しい仕事でもこなしていけると思う
・キャリアの岐路に立っても意思決定する自信がある
・上司の期待に答える人材になれると思う

に影響を与える、というわけです。

その他、「キャリア関心」「キャリア統制」にまで
”負の影響”を及ぼすということ。

これ、実に興味深いです。

■IT技術者は、専門職として、
その腕こそが重要、という印象もあります。

それでも、

職場におけるコミュニケーションや
人間関係ストレスがキャリアに影響する、

というわけです。

それは冒頭にご紹介した

「上司・同僚との関係が、
仕事経験からの学びに影響する」

としたところに通ずるものを感じます。

■実際のIT技術者の内面に
どういう影響がありこの結果になったのかは
当研究ではわからないにせよ、

4企業274名の重回帰分析から

「人間関係ストレッサーがキャリアに影響する」

という事実だけも注目に値すると思いました。

■そして、この論文の著者は考察にて
こう述べています。

”IT技術者のキャリア・アダプタビリティを促進するため、
人間関係ストレッサーに対するコーピング・スキル(対処)のトレーニングや、
良好な人間関係を構築するためのソーシャル・ スキル・トレーニングなどを実施することである”

とのこと。

改めて、IT技術者もそれ以外も、
職場の人間関係は成果を出すためだけではなく、
自分自身の学びやキャリアにとっても大切な要素である、
そのことを再確認した次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

最高の処世術とは、妥協することなしに
適応することである。

ゲオルク・ジンメル

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