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3489号 2023年9月13日

村八分になりたくないから言わない ー多言的無知のメカニズムー

(本日のお話 2005字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は終日、外部人事パートナーとして
関わらせていただいている皆様へとの
読書共有会の参加、システムコーチングの実施などでした。

また夕方からは1件のアポイント。



さて、本日のお話です。

先日の読書勉強会で、以前に読んだ書籍

『リスキリングは経営課題 ~日本企業の「学びとキャリア」考 (光文社新書)』


を人事の皆様に紹介させていただいたのですが
その中に書かれていた

「変化を抑制するメカニズム」

という話が、めちゃくちゃわかる、、、!
と納得させられるお話でした。

今日はそのお話についての学びを
皆様に共有させていただければと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは、

【「村八分になりたくないから言わない」 ー多言的無知のメカニズムー】

それでは、どうぞ。

■「リスキリング」、

新しい知識や技術を学ぶこと
こうしたことが叫ばれていますが、

先述の書籍では、
この言葉に潜む問題点を指摘していました。

それがいわゆる

「学びっぱなし」

という現象です。

たとえ、リスキリングで
新しい知識や技術を学んだとしても

”「学ぶこと」=「現場で活用される」ではない”

ということ。

インプットしても、
それがアウトプットされなければ
学んで終わりで、その価値を形にすることにはなりません。

■そして、重要なことは

「学んだとしても、
新しい考え方を現場に持ち込むには、
心理的な抵抗がある」

のです。

イノベーション、
改善・改革・革新・変化
チェンジほにゃらら、、、

などは全体テーマとしては好まれますが、
実際に”渦を巻いて実行する当事者”として考えると、

「イノベーション=職場の秩序を乱す行動」

とも考えられる、、、

よって、たとえ新しいことを学んでも、
職場に持ち帰って、誰かと調整をしたり、
根回しをしたり、反発を受けることへ対応したり、、、

と考えると「まあ、このままでもいいか・・・」という
『変化抑制意識』が生まれる、

というわけです。

そしてこの心理状態(変化抑制意識)は

アンラーニング(学びほぐし)
リスキリング(学び直し)

と負の相関があることがわかっています。

■と、いうように、

「学んだだけ」では
「現場で活用には遠い」ことがわかります。

その上で、更に、
この『変化抑制意識』が働くメカニズムについて
以下のようなキーワードで説明がされていました。

それが

【多元的無知】

というもの。

社会心理学者F・H・オルポートにより提唱され
学術的な定義では

「集団の多くの成員が、自分自身は集団規範を受け入れていないにもかかわらず、
他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状態」

だそうです。

本書から以下のような事例が紹介されていました。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<多元的無知のメカニズム>

・ある地域での選挙の投票の出来事。

・太郎さんは本当は、政党Bの公約に賛同しており、次の選挙で支持したいと考えていた。

・しかし、太郎さんが住んでいる街は、歴史的に政党Aの支持者が多い地域であり、
周りは政党Aを支持しているだろう、と太郎さんは「予期」していた。

・そこで、太郎さんは、政党Bに投票することを知ったら
コミュニティ内で微妙な立場に立たされてしまうかもしれないと思った。
近所から白い目で見られたり、学校で子供がいじめられるかもと思った。

・「浮いてしまう」ことを恐れた太郎さんは、
本来支持したい政党Bではなく、政党Aに投票してしまった。

・しかし実は、周囲の他の人も、太郎さんと同じように、
政党Bの公約に対して賛成の意見を持っていた。
そしてまた太郎さんと同じように周りが政党Aに投票するだろうと「予期」して
政党Aに投票をしてしまった。

・こうして、それぞれが他者の予期を誤って「予期」してしまい、
それが重なると皆が本当は望んでいないのに、
”政党Aへの投票という行動”が継続的に導かれていく。

・これが「多元的無知」が導く人々の行動のメカニズムである。

※参考・引用『リスキリングは経営課題 ~日本企業の「学びとキャリア」考
第三章より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■これは実に幅広く応用できる考えで、

たとえば「日本人は協調的」も、もしかすると、
実際には個々人は独立的な生き方を望んでいるかもしれないが

”自分勝手な行動をとると、
周りの人に嫌われてしまうと皆が「予期」する結果(=多元的無知)、
協調的なふるまいが人々に採用されつづけている”

という可能性も指摘されているそうです。

■「本当はおかしいと思っていたけど、
言えなかった」

これも、多元的無知の一種かもしれません。

この状態を「沈黙の螺旋」とも言われており
昨今メディアを賑わせている話にも
一部共通するものがあるようにも感じます。

■何かを変えようとする際に

「そういう事を言うと
村八分になるかもしれないから言えない」

「でも実際は、
皆変えたいと思っているかもしれない」

この2つの状態を俯瞰してみつつ、
変えるのか、変えないのか
そのために動くべきなのかなど、
見極める目を持ちたいものだ、

そんなことを思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

もし真剣に勝ちたいのなら、
「これじゃ勝てない、こうしてくれ。」と言わなきゃいけない。
みんなで慰め合っていても勝てっこない。

岡田 武史
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