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3670号 2024年3月13日

「カウンセラーの強み」の特徴:324名を分析してわかったこと

(本日のお話 2244字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

本日も強み論文についてご紹介させていただきます。
今日の論文は「カウンセラーの性格的強み」というかなりピンポイントなテーマを扱ったものです。

「カウンセラーによく見られる強みは何か?」また「バーンアウトや有意義な仕事感に繋がるのはどの強みなのか?」について定量調査で探求をしている内容です。
以下、早速を見てまいりましょう!

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<今回ご紹介の論文>
『カウンセラーの性格的強み:有意義な仕事とバーンアウトの関係』
Allan, Blake A., Rhea L. Owens, and Richard P. Douglass. (2019). “Character Strengths in Counselors: Relations With Meaningful Work and Burnout.” Journal of Career Assessment 27 (1): 151–66.
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■30秒で分かる論文のポイント
・本研究は「カウンセラーの性格的強み」と「バーンアウト」「有意義な仕事」との関係を検討することである。

・「カウンセラーの性格的強み」を他の母集団と比較したところ、向学心、大局観、社会的知性などの強みが特に高かった。

・また分析の結果、思慮深さ・希望・熱意の強みは有意義な仕事と関係があり、燃え尽き症候群と負の相関を示した。

■研究の背景
さて、本論文の紹介の前に、個人的に興味深いな、と思うのが、強み論文を調べていると「医療従事者に関連する強みの研究」が比較的多く見受けられることです。

看護師もしかりですが、患者の心身の健康を扱い、かつ人の感情にも向き合うため、そのストレスの大きさは想像に難くありません。ゆえに「バーンアウト(燃え尽き症候群)を経験する人も少なくないようです。

そして、それはカウンセラーも例外ではないようです。いわく、メンタルヘルス専門家の最大67%がキャリア中に燃え尽き症候群を経験しているとのことです。ということで、本論文では、カウンセラーの性格的強みとバーンアウト(燃え尽き症候群)、それらの関係を媒介する「有意義な仕事」の関係を探索したのでした。

■研究の全体像
では、研究の全体像を見てまいりましょう。まず研究の目的、そして次に関連する理論、そして調査・分析方法について見ていきたいと思います。

◯関連する理論
「強みの活用が有意義な仕事感を高める」という仕事関連成果に関連している研究があります。 また「有意義な仕事は幸福感を高め、ポジティブな結果に繋がる」とし、燃え尽き症候群と対照的な結果にもなるという研究もあります。 これらのことから「バーンアウト」に対して「有意義な仕事」が抑制する影響があるのではないかという仮説が考えられました。

◯研究の目的
以上のことを踏まえて、以下のことを本研究の目的としています。

1、どの性格的強みがカウンセラーにとって最も顕著か明らかにする
2,どの性格的強みが「有意義な仕事」と「バーンアウト」に最も関係しているかを調査する
3,「有意義な仕事」の媒介効果を明らかにし、カウンセラーの性格的強みとバーンアウトの関係を明らかにする

◯研究方法
研究方法については、以下の項目について調査を行いました。

●参加者:米国に在住・勤務するカウンセラー324名
●調査項目:以下の3尺度を測定
・VIA-IS(120項目)、有意義な仕事(Work as Meaning Inventry: Steger,Dik, and Duffy, 2012)(10項目)、バーンアウト(10項目)

■結果
◯わかったこと1:カウンセラーは向学心・大局観・社会知性・愛情が高かった
対照群の集団と比べてカウンセラー集団は、特に向学心(Love of learining)( d = 0.44)、大局観(Perspective)(d = 0.43)、社会的知性(Social intelligence)(d = 0.37)、愛(Love)(d = 0.37)が高いという結果になりました。

◯わかったこと2:「有意義な仕事」と「バーンアウト」に影響を与えるいくつかの強みが明らかになった

分析の結果、「有意義な仕事」には思慮深さ・大局観・熱意が関連しており、「バーンアウト」には思慮深さ・自己規制が関連していることがわかりました。
また、思慮深さと大局観は、有意義な仕事を媒介して、バーンアウトに影響を与えていることがわかりました。

■まとめと個人的感想
カウンセラーの強みを見たときに、愛情・大局観・熱意が有意義な仕事に繋がり、思慮深さや希望は、有意義な仕事にもどちらにも影響を与えているという結果になりました。

論文の考察に、”「カウンセラーは、楽観的であること(希望)、他者との親密なつながりを大切にすること(愛情)、他者 の相談にのれること(大局観)、興奮とエネルギーをもって仕事に取り組むこと(熱意)が、
心理療法を提供することに関連していると考えられる”、などとありましたが、実際に仕事と相性の良い強みというのがあるのだろうな、と思いました。

私も心理療法ともそんなに遠くない場所に位置をする、コーチングなどを行わせていただいていますが、たしかに希望や大局観、熱意などは使っているように感じます。(私の

こうした職種ごとの強みが明らかになると、より強みの活用や開発の方向性が明らかになり、実践に繋がりそうだと思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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よろしければぜひご覧ください。

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<本日の名言>

本当に大事なことで、
格好つけたままやれることは一つもない。

ノーマン・メイラー
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