「私たちは、無償で人を信じられるか?」をゲーム理論で考える
(本日のお話 2110字/読了時間2分)
■こんにちは、紀藤です。
昨日は4件のアポイント。
またお昼は、ランチミーティングでした。
とある企業の新規事業のインキュベーションラボに行ってきましたが、
色々と刺激をいただいた時間でした。
知らないことっていっぱいあるんだなあ、と思った次第。
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さて、本日のお話です。
先日より続けております60万字の対策『世界標準の経営理論』の全章レビュー、引き続きお届けしてまいります。
本日は全42章のうちの第9章目です。まだまだ先は長い…!
しかしながら、読むほどに新しい世界が見えてくるようで、楽しいです。
さて、本日の内容は「私たちは人を無償で信じるのか、それとも合理的な計算で信じるのか?」という「ゲーム理論(その2)」のお話です。
ということで、早速みてまいりましょう。
それでは、どうぞ!
■「ゲーム理論」のおさらい
本日も、前回のまとめに引き続き、「ゲーム理論」です。
ゲーム理論とは、”相手がある行動をとったら、自分はどう行動するか”といった、相手の行動を合理的に予測しながら、意思決定・行動する相互依存関係のメカニズム”と説明されていました。
「相手が値引きしたら、自分も値引きしないと利益が出ない。
だから、合理的に考えて、値引きします」みたいなお話ですね。
宅配業界の身を削る値下げ合戦も、
某飲食チェーンの血みどろ低価格合戦も、
大阪のエスカレーターの右に立つ・東京は左に立つというのも、
この「ゲーム理論」で説明ができるよ、という内容でした。
■「同時ゲーム(じゃんけん)」と「逐次ゲーム(チェス)」
そして、「同時ゲーム」と「逐次ゲーム」という話もありました。
「同時ゲーム」は、”じゃんけん”です。
両者とも相手が何を出すかわからない状態で、互いに読み合いをします。
「逐次ゲーム」は、”チェス”です。
一方が先に駒を進め、打ち手がわかってから、もう一方が駒を動かします。
そして、逐次ゲームでは、先手で動かすほうがリーダーとなります。もう一方はフォロワーとなります。同時ゲームだと読み合いですが、「逐次ゲーム」で先手を取った方は、それに相手を反応させることができるので、”出方をコントロールすることができる”、とも考えられます。
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一つの例として、航空機製造業の米ボーイングと欧エアバスの話がありました。1980~90年代に航空機の需要が高まる中、どちらも「大型機」の開発を計画していました。しかし、両者とも開発し、市場投入すると、供給過剰になり、値崩れが起こる可能性があります。
そんな中、1996年、エアバスが「次世代大型機の事業化調査に乗り出すと公表した」のでした。具体的な計画も発表し、大型機の開発・生産が間違いないことが世界に知らされました。これが宣言することで「逐次ゲーム」のリーダーになった例です。
その結果、1997年、ボーイングは大型機の747ーXの開発計画中止した、となったのです。(逐次ゲームのフォロワーになった)そのかわりに、開発を中型機開発に向けることになり、ボーイング787が生まれたそう。
「逐次ゲームのリーダー」になるための2つのポイントは、
1.宣言が信用できるものであること
2.現状維持よりも増産の強気の戦略のほうが有利になりやすい(数量勝負の場合)
という点が挙げられるようです。
■「我々は、無償で人を信じるのか?合理的に信じているだけか?」をゲーム理論で考える
ちなみに、寡占状況にあり、利益を高められるような業界でも、たとえば主要の2社が同時ゲームで、価格競争をすることで、お互いの利益が極めて少なくなる(完全競争に近づく)ことを「ベルトラン・パラドクス」と呼びました。
しかし、ゲームは、今年も来年も再来年も、ずっと続きます。
そうすると、合理的に考えて、価格競争をし続けることは、両者にとって、望ましくないことに気づき始めます。つまり「無限繰り返しゲーム」であるということ。
こう考えると、経済学の前提である「合理的に考えて、価格競争をやめたほうが、両者の利益になる」ことがわかるわけです。
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よく「人を信じましょう」と言われますが、ゲーム理論の視点から見ると、「合理的に考えて、特にならないから信じる」という選択を私たちはしているようにも思えます。
たとえば、家族の「家事分担」もそう。
今日だけ相手に押しつければ、自分は楽ができますが、その“不公平”が積み重なると、パートナーの不満が跳ね返り、結果的には自分の負担が大きくなる。(育児の送り迎えでも同様に、繰り返し続く共同作業だからこそ、「公平に助け合った方が長期リターンが大きいとわかる)
あるいは、仕事の「ナレッジ共有」もそう。
社内のナレッジを独占して権力を保とうとすると、チーム全体の生産性が下がり、業績連動報酬や昇進で結局、回り回って損をする、みたいな話です。
取引先との契約でも「大幅な値下げをのませる」戦略は、来年以降の品質低下や契約打ち切りという形で報復を招く可能性もあります。とすると、協力体制を築いた方が自社も安定供給を得られ、長期的利益が最大化される場合がある、など。
こうしたこともゲーム理論で説明できると言えば、説明できそうです。
■まとめと感想
改めて、世の中にある様々な事象を説明する上で、ゲーム理論は実に面白い内容だと思いました。まだまだ、理論がありますが、果たしてどこまであるのか・・・、世の中知らないことだらけです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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