今週の一冊『困難な組織を動かす人はどこが違うのか? POSITIVE LEADERSHIP』
(本日のお話 2525字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は6kmのランニング。
かなり心肺を追い込んだつもりでしたが、
まだまだ鍛えられていないことを実感しました。
もう1段、2段レベルアップが必要です。
がんばります。
その他、子どもとのおでかけなどでした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は最近読んだ本の中から1冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。今週のご紹介の著作はこちらです。
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『困難な組織を動かす人はどこが違うのか? POSITIVE LEADERSHIP』
キム・キャメロン (著), 高橋 由紀子 (翻訳)
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この本は、ミシガン大学のポジティブ組織研究センターの創始者の1人であり、ポジティブ組織心理学の第一人者であるキムキャメロン教授による著作です。
「リーダーシップ」という考え方にも、さまざまなものがありますが、その中で「ポジティブ・リーダーシップ」という観点を、ポジティブ心理学やポジティブ組織研究、ポジティブ組織行動学等の研究を踏まえて紹介をしている点が、説得力を持っている一冊です。
ということで、早速内容を見てまいりましょう!
■本書の概要
本書で、ポジティブなリーダーシップがなぜ有効か?という話で、「向日性(こうじつせい)」という言葉が紹介されています。
ひまわりが太陽を向くように、バクテリアが光のある方向に進むように、私たちも明るい出来事につい引き寄せられてしまう、という話です。人はネガティブなことに注目してしまうからこそ、ポジティブなエネルギーに魅了を感じる、そんな話があるそうです。
…なんてことをいうと、「ポリアンヌ的楽観主義だ」(現実逃避的な楽観主義であり、現実を見据えていない)と否定的な捉え方がされることもあるのが、このポジティブ心理学の宿命のようなものです。
その中で、様々な研究から、ポジティブな関わり合いをすることが、困難な環境下でも「ポジティブな逸脱(素晴らしい成果)」をどのようなメカニズムで引き起こされるのかを、組織と個人の両方を活性化させる具体的戦略として実証的データと事例を交えて解説しているのが特徴です。
■本書の目次
本書の内容としては以下のような形で紹介されます。
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第1章:ポジティブリーダーシップとはなにか?
第2章:戦略1 ‒ ポジティブな組織風土
第3章:戦略2 ‒ ポジティブな人間関係
第4章:戦略3 ‒ ポジティブなコミュニケーション
第5章:戦略4 ‒ ポジティブな意味づけ
第6章:4つのポジティブ戦略の実践(PMIプログラム導入)
第7章:ポジティブリーダーシップを発展させる
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■ポジティブなリーダーシップとは
「ポジティブな逸脱」を意図的に引き起こすことで、平均を超えた成果を達成するリーダーシップスタイルと定義されます。単なる「優しさ」ではなく、強み・感謝・思いやり・許しといった「徳」を組織に根付かせる行為とされています。
そして、そのリーダーシップスタイルを体現する4つの戦略が以下です。
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1.ポジティブな組織風土:思いやり、寛容、感謝などの文化を促進
2.ポジティブな人間関係:強み重視・ポジティブエネルギーネットワークを活用
3.ポジティブなコミュニケーション:肯定的・支援的な言語や自己フィードバック
4.ポジティブな意味づけ:仕事を「天職」や「貢献」に捉える意味付け
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また、具体的な実践手法としては「PMI(Personal Management Interview)プログラム」という予備的で、構造化された1on1ミーティングを通じ、役割交渉・行動診断・継続的改善の仕組みを定着させる手法が紹介されています。
また単なる理論ではなく、核施設の整理や病院再建など、現実の事例に基づいた実証データを活用しているところも興味深いです。また、章末には自己診断ツールを配置しており、実践しながら自己チェックが可能となっています。
■本書のおすすめポイント
その⑴:研究からの示唆
「豊富な引用論文や引用文献を丁寧に紹介しているところ」です。巻末に250件以上の参考文献・参考論文が紹介されており、さすがミシガン大学の教授であり、その分野の第一人者であるなということをふんだんに感じる1冊でした。
その⑵:データが豊富だが読みやすい
そのような研究データを中心に紹介している内容にもかかわらず、実際の本の内容としては、170ページ位にぐっとコンパクトにまとめているところも特徴です。
最終的には、パーソナル・マネジメント・インタビュー(PMI)という1on1のやり方がそのコアのやり方となっており、シンプルにまとめられていました。また実践シートとして自分ごとに落とし込みやすいツールも揃っています。
その⑶:ポジティブな関わりの重要性がよくわかる
本書において厳しい意見では「すでに知っている内容も多い」というコメントもあります。(まあよくある話ですが)。ただ、何が違うかと言うと、やはり研究データを豊富に示すことで、「思いやり、寛容さ、感謝の気持ち」などふわっとしたと思われがちなアプローチが、なぜ必要なのかという「重要な理由」が明確になっている点でしょう。
相手にポジティブなフィードバックをすることは、最近は注目され始めています。その効果などが研究結果として明示されているため、それを「なんかやったほうが良いのかも」ではなく「やるべきだよね」と思えるのが、本書の示唆ではないか、と感じました。
■まとめと感想
ちなみに、面白かったのが「ポジティブ・エナジャイザー」の研究です。
「ポジティブ・エナジャイザー」とは、周りの人に活力を生じさせてそれをサポートする人。人々の気分を高め、力を引き出す人。楽観的で、人を信じる傾向があり、利己的ではない。よって周りの人はエネルギーを掻き立てられるような影響を与える人です。
こうした人は、情報ネットワークや影響ネットワークの中心にいる人よりも、成功する可能性が4倍高かったという研究結果があるそうです(Baker, 2004 ※ちなみに調べてみるとミシガン大学の未公開資料のようで論文を見られなかったのが残念です…)。
また、ものすごく個人的な感想としては、これから書籍を出版する上で、ジャンルとしては、「ポジティブ心理学×科学的根拠」という本書と同系列の内容になる予定であるため、それを、このようにまとめることができるのだという参考になりました。
また、こうしたまとめ方をその第一人者である教授の著書を翻訳すると、どんな評価がされるのかのイメージもできて、参考になりました。
ポジティブな関わり方にエビデンスが欲しい人にはお勧めしたい一冊だと思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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