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4209号 2025年9月3日

自己暗示は効果があるのか? ー開心術患者を対象にした最新研究からわかったことー

(本日のお話 2658字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

引き続き、宮崎に来ております。
昨日は朝から10kmのランニングでした。

3分35秒で400m走を10本のインターバルを
早朝からやっていましたが、予想よりもキツくて、
「何でこんなに朝からやっているのだろうか・・・」と、
”そもそもの走る意味”を問いそうになってしまいました。
(きつくなるとよくこういう気持ちになります)

・・・が、なんとか目標とする練習メニューは実施できました。
まだまだこれからなので、引き続き頑張りたいと思います。

その他、研修動画撮影のためのスライド作成など。



さて、本日のお話です。

「アファメーション」という言葉があります。
これは”自分に対する肯定的な言葉かけ”のことなのですが、疑似科学的な匂いや、自己啓発的な香りがする言葉としても知られており、「なんだか苦手…」という人もいるような気がします。

今日は、この「アファメーション(自己への肯定的な言葉がけ)」について実験をしたある論文をご紹介いたします。

それでは、どうぞ!

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<本日ご紹介の論文>
Title:The effect of self-affirmation on anxiety and perceived discomfort in patients who have undergone open-heart surgery. A randomized controlled trial(自己肯定感が開心術後患者の不安および不快感に与える影響:無作為化対照試験)
雑誌名・出版年:Applied Nursing Research, 2023年
著者:Meltem Yildirim, Meryem Turkoglu
所属: University of Vic-Central University of Catalonia, Spain
https://chatgpt.com/share/68b4df1e-0efc-8010-b36d-f748cfa02fd1
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■「私は最高で、私はベスト!」

私も20代の頃、やたらそれらの情報に出会うことがありました。
ある友達から、日々鬱々としていたときに、「このCD聞いてみるといいよ!」と言われ、聞いてみるとヒーリングミュージックと共に、ダンディボイスの男性が「あなたは最高です。あなたはベストです。さぁ一緒に唱えてみましょう。『私は最高で私はベスト!』」と喋っているCDを貸してもらいました(笑)。

ちなみに、別角度からでは、かの大谷翔平選手も愛読書としている中村天風氏の講演録で「鏡に向かって『私は信念が強くなる』と唱え続けよ」(=自分に対して積極的な言葉をかけなさい)と述べていました。

最近では、「私は最強!」とAdoさんが、パワフルに歌い上げております(これは違うか)。

西洋でも東洋でも、「自分に対する肯定的な言葉かけ」の効力は、おそらく何かしら感じられてきたゆえに、形は違えど、語り継がれてきたりするのでしょう。

■アファメーションは科学的に信頼できるのか?

さて、そんな中、「アファメーションは科学的に信頼に至り得るのか」ということが気になり、論文をポチポチ探していました。

すると、トルコ・イスタンブールのある病院における、ある実験が見つかりました。内容は「心疾患患者にアファメーションをすると、肉体的な痛みや不安などが減るのか」を病院で検証してみたという内容です。

結論からすると、「5分間の肯定的なテープを聞いた患者は、不安や痛みなどが軽減された」という興味深い研究結果が出たのでした。

■論文のポイント

開心術後の患者は高頻度で不安を経験します。そして、その不安は合併症、回復遅延、QOL低下と関連することがわかっています。

その中で、「肯定的な自己暗示(セルフ・アファメーション)」はポジティブな感情と生理的適応を促すとされ、他領域で効果が示されている。

したがって本研究では、アファメーションによる自己肯定感への影響が、開心術後患者の不安および痛みといった不快感に与える影響を検討した無作為化対照試験です。

実験では、トルコ・イスタンブールの病院で実施され、61名の患者が介入群(n=34)と対照群(n=27)に割り付けられました。

そして、介入群は術後3日間、肯定的な自己暗示文を収録した音声を聴きました。

その結果、介入群は対照群よりも有意に不安および各種不快感が低いことがわかりました。

■研究の方法

研究のデザインは無作為化対照試験です。イスタンブールの心臓病院で施行された冠動脈バイパス術患者を対象に、4日目から3日間、介入群には5分40秒の自己暗示音声(自然音と組み合わせ)を1日1回以上聴取してもらいました。(※内容は以下)

「不安評価」「身体的不快感(痛み・呼吸困難・動悸・疲労・吐き気評価)」を成果指標として測定し、事前事後でその違いを、介入群、対照群で検証しました。

<自己暗示文の例>
この研究で使用された「自己暗示文(self-affirmations)」は、ポジティブな意味合いの文だけを使用し、否定的な語彙(例:「痛み」「吐き気」「不快」など)は一切含まれていません。音声は鳥のさえずりと川の流れる音を背景に、穏やかな声で読み上げられました。以下はその例です。
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・今、私はもっと前向きに考えることを決意しています。
・私は自分の思考をコントロールできます。
・私は完全にリラックスしています。
・私は強く、自分の強さを認識しています。
・私はどんな状況でも快適かつ前向きでいられます。
・私は今の自分を愛し、ありのままの自分を受け入れています。
・私はリラックスする方法をよく知っています。
・深呼吸するたびに、全身の筋肉が緩みます。
・私は自分を平穏に委ねています。
・私はいつも穏やかで、楽しく、幸せな人間です。
(他、全40文章)
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■結果わかったこと

1.不安スコアが下がった
3日目において、介入群の不安スコアは有意に低かった(P<0.001)。

2.身体的不快感も下がった
痛み(P=0.005)、呼吸困難(P=0.002)、動悸(P=0.005)、疲労(P<0.001)、吐き気(P=0.005)も、介入群の方が有意に低スコアであった

※詳細データはnoteを参照ください。

■まとめと個人的感想

まず、この論文を見たときに「この自己暗示音声、むかし友人から渡されたテープ、そのままやんけ!」とびっくりしました。あのあやしいテープ、なんだかんだ意味があったようですね…。

もちろん研究についても、対象者が限定的であることと、あるいは個人の楽観性が影響したのではという考察も触れられていますが、ランダム化比較実験という比較的信頼度が高い実験でこのような結果が出たことは、興味深いと思いました。

実施するコストがさほどかからないのもよいですし、ものを試しでやってみるのは簡単な内容です。ゆえに、実際に不安などを抱えている人は、これらの自己暗示分を録音して、そして自分に対して語りかけるということをやってみても面白いかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

 

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