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4445号 2026年4月27日

「人生の最終章」で後悔しないためにーアイデンティティ拡散が招く、物悲しい結末とは? ー『中年からのアイデンティティ心理学』#11

(本日のお話 2356字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日日曜日は、大学院の仲間と、「Tグループ」という体験型学習(人間関係トレーニング)の体験会に行ってきました。

何のテーマも司会者もない中で対話をする中で、人間関係を通じて自分を見つめ直すような、そんな時間です。
日常ではせわしなく「やること」や「成果」にフォーカスする中、プロセス、関わり、自分自身に目を向ける、とても豊かな時間でした。

企画くださった皆様、ありがとうございました!



さて本日のお話です。

長らく読み解いてきた『中年からのアイデンティティ心理学』の本も、いよいよ終章を迎えつつあります。

本日ご紹介する章は「第7章 人生をまとめる ー人生と死の受容ー」というタイトルで、定年退職・現役引退、そしてその後20年、それ以上の時を経て死を迎えるときまでのアイデンティティ心理学です。

それを一言でいうならば、「統合(人生をまとめる)」です。

ここで言う「統合」とは、単に過去を振り返ることではなく、自分の人生における成功だけでなく、失敗や後悔、思い通りにいかなかった負の側面をも「それもまた自分の一部である」と認め、一つの物語として受け入れるプロセスを指します。

自分の人生という一冊の本を、どのようにまとめていくのか。

そのために、アイデンティティというものが、その一冊の物語の結末に、どのように影響していくのか。その答えが示されているような章です。

ということで、ポイントを見てまいりましょう!

■「高齢期のアイデンティティ」の2つのポイント

高齢期のアイデンティティに関する研究は、成人期のアイデンティティ発達の研究にカテゴライズされますが、まだまだ考察が深まっている領域ではない(本書出版時点で)と述べられています。

ただし、その中でも、「高齢期のアイデンティティ」の研究からのポイントをまとめると、以下の2点になるとのこと。

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・⑴成人期の発達は、「危機→再体制化→再生」の繰り返しで発達する。人生の岐路(=40代や60代など)に遭遇するごとに、これまでの自己のあり方が揺さぶられ、混乱・不安定になるが、その葛藤を経て安定したアイデンティティが獲得されていく。

・⑵すべての成人が「アイデンティティ達成」をしているわけではない。発達的危機の対応の仕方で、早期完了、モラトリアムなども存在する。
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アイデンティティは、40代の身体的な衰え、60代の定年退職、あるいは子どもの自立などによって、何度も揺さぶられていきます。成人期になっても、青年期のときのように螺旋的に「本来の自分は何か」という問いが立ち上がり、その都度決着をつけていくことで、アイデンティティは発達していくのです。

しかしながら、こうした問いを見て見ぬふりをしたり、答えが出ないまま諦めてしまったりすると、モヤモヤは統合されず、「早期完了」や「アイデンティティ拡散」の状態に陥ってしまいます。

■「アイデンティティ拡散」の何が悪いのか?

これまで「アイデンティティ達成こそが目指すべきゴールである」という文脈でお話ししてきました。 しかし、改めて思うわけです。

「なぜアイデンティティ達成を目指さなければいけないのか?」
「別に拡散したままでも、本人がよければいいじゃないか」

…と。

例えば、アイデンティティの早期完了(問い直しを避ける状態)については、本書で以下のように説明されています。

----------------------------
・「中年期危機も曖昧に受け止め、真剣なアイデンティティの問い直しに結びつかない」
・「青年期以来のパターンが持続している」
・「中年期の危機に無関心、やる気任せ」
----------------------------

これだけ見れば、「別に何も困らないじゃないか」という見方もできるかもしれません。

■アイデンティティが拡散したままだと「物悲しい人生」となる

しかし、この「問い直し」を避けた結果が何に結びつくかについて、本書は厳しい現実を突きつけています。一言で言うならば、「人生が物悲しいものになる」ということです。

本書において、60歳以上の男性高齢者83名を対象に調査を行いました。その結果、アイデンティティ拡散型の人は、以下のように答える傾向があることが分かりました。

----------------------------
・今までの私の人生は失敗や悔いの連続であった
・これまでに自分がやってきた重要な決断や選択は失敗が多く、後悔している
・自分が死んだあと、子どもや孫たち、社会はどうなるか不安でたまらない
・自分自身の生活の中に見出している目標について、今まで何の進歩もなかった
・夫婦関係においても、もし生まれ変われるものならまったく別の女性、男性と結婚するだろう
・私の生活を考えると、私は何のために生きているのか分からない
----------------------------
というような回答になる傾向がある、ということでした。

これを一言で言うと、なんとも物悲しい…。人生の最終章でこのように感じてしまうことは、個人的には少し切ないものがある、と感じます。

■まとめ「人生の物語」を統合する

エリクソンは、アイデンティティの発達において8つのステージがあると述べました。その中でエリクソンは、こう述べます。

高齢期にステージ1から8のそれぞれの段階の心理・社会的テーマが再び吟味され、現在の在り方、つまりアイデンティティの中に統合されるということである。還元すると、それぞれの段階の心理・社会的テーマが高齢期に再体験され、自分なりのやり方でまとめられるということである。

まるで、これまでプレイしてきたゲームを、「強くてニューゲーム」なのか「改めて戦ってきたステージに挑む」なのか、高齢期において「これまでの発達テーマを再体験してまとめる」という、最終ステージのようなものがある、と言っているのです。

そして自分自身を丸ごと受け入れ、自我を統合した結果として、自分の死をも受容できるようになる。それが成熟した発達の姿と言えそうです。

また、本章では「夫婦関係の親密性」についても触れています。

子どもが巣立ち、改めて夫婦となった。そこから少し照れくささもありつつ、これまでの関係を見つめ直し、修正・向上させていく努力をしていくこと。それが「他者とのかかわり」を通じたアイデンティティの発達に繋がるとのこと。

関係性も人生の物語も、成り行き任せにするのではなく、意志を持って積み上げていくもの。そんなメッセージを感じた章でございました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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