12か月の間で「仕事と合ってない感」が変わり、離職にもつながる?! ーパーソン・ジョブ・フィット研究からの示唆ー
(本日のお話 2969字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、3件のアポイント。
また研修プログラムの開発・準備、その他ランニング12kmなど。
最近、夜の睡眠の深さがなぜだかめちゃくちゃ浅く、
体の回復が追いついていません(涙)
改めて、「深く休む技術」も仕事や体力づくりの一環なんだな、と痛感している次第です。
カモミールティーでも飲んで、夜はリラックスしたいものです。
*
さて、本日のお話です。
今日も、ある論文のご紹介をしたいと思います。
言われてみれば当たり前のことかもしれないのですが、
自分の仕事と自分自身がぴったりマッチしているかどうか
つまり「人と仕事の適合性(Person-Jobのフィット)」というものが、
仕事の満足度ややる気に大きく関わっているということは、なんとなく誰もが感じていることかと。
でも、この「人とフィット」というものを、時間の流れの中でどう変化していくのかという視点から精緻に追いかけた研究があります。
(ちょっとマニアックなのですが汗)
今回ご紹介するのは、その「人と仕事の適合の変化」を168名に対して、12ヶ月にわたって追いかけた縦断研究です。
12か月の間で「人は仕事とのフィット率」がどう変化していくのか?
あるいは「若手とミドル」を比べると、このフィット率にどちらがより敏感なのか?
当たり前だけど、ちょっと気になる実践的な変化を追求した論文となっています。
さて、結果はどうだったでしょうか。ということで、早速見てまいりましょう!
■今回の論文
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・タイトル:Person or Job? Change in Person-Job Fit and Its Impact on Employee Work Attitudes over Time(人か職務か? 人と職務の適合性の変化と、それが従業員の仕事に対する態度に及ぼす経時的な影響)
・出版:Journal of Management Studies, 57巻2号, 287–313頁(2020年3月)
・著者:Tae-Yeol Kim(キム・テヨル)、Sebastian C. Schuh(セバスチャン・C・シュー)、Yahua Cai(カイ・ヤフア)
・所属:キム・テヨル/シュー:中欧国際工商学院(CEIBS、中国・上海);カイ・ヤフア:上海財経大学(中国・上海)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・人と仕事の適合性(PJフィット)は、採用時に一度決まる固定的なものではなく、時間とともに変化し続ける「流動的なプロセス」である
・フィット感の変化は、職務満足度と感情的組織コミットメントの変化と有意に関連している
・「自分のニーズと仕事が提供してくれるものの一致(NS適合)」の変化が、「能力と仕事の要求の一致(DA適合)」よりも、全体的なフィット感の変化に強く影響する
・若い従業員のほうが、フィット感の増減に対してより敏感かつ強く反応する(ミドルより反応が大きい)
・定期的なフィット感のモニタリングと、年齢層に応じた動的な仕事の与え方が、リテンション施策として有効である
■なぜ「静的なフィット研究」では不十分なのか
従来の「人と環境の適合性(PE適合)」研究の多くは、ある一時点での「現在のフィット度は高いか低いか」という静的な評価に終始していました。
しかしこのアプローチには、根本的な限界があります。
職務内容も、従業員のスキルも、求めるニーズも、すべては時間とともに変化します。
特に「人と職務の適合(PJ適合)」は、研修や職務経験の蓄積によって、個人の能力やニーズが変化しやすい領域です。
だからこそ、この研究は「静等から動的へ」というパラダイムシフトを縦断データで実証することに挑んだのでした。
■どのような研究だったのか ー研究の方法ー
中国のサービス産業(主にホスピタリティ・ホテルセクター)に勤める従業員168名を対象に、12ヶ月の間に3回の調査(Time 1→Time 2→Time 3)を実施しました。
測定したのは、
・従業員が感じる「今の自分の能力(Abitility)」「自分が求めるニーズ(Needs)」
・仕事側の「職務要求(Demad)」「職務が提供してくれるもの=供給(Supply)」
この4要素の変化です。
これらがどう組み合わさって、全体的なPJフィット感の変化、さらには職務満足度や組織への愛着(感情的組織コミットメント)の変化につながるのかを、構造方程式モデリングで検証しました。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:能力が上がっても、仕事が追いつかなければフィットは下がる
まず興味深い発見からです。「職務要求が増加する」ことも、「従業員の能力が向上する」ことも、どちらも短期的にはDA適合(要求-能力の一致感)を低下させることが示されました。
つまり、能力が上がれば、今の仕事に物足りなさを感じ始める。
逆に、要求が急増すれば、今の能力ではまだ追いつけない。
どちらの変化も、要求と能力の「同期のズレ」を生み出す、ということ。
一方でNS適合(ニーズ-供給の一致感)については、「従業員のニーズが増加」するとフィットは下がり、「職務が提供する供給が増加(自律性・報酬など)」するとフィットが上がる、という結果が出ました。
◯わかったこと2:「ニーズと供給のフィット感」こそが全体的なフィット感を動かす鍵である
ここが特に興味深いところです。DA適合(能力と要求のマッチング)とNS適合(ニーズと供給のマッチング)の両方が全体的なPJフィット感に影響を与えますが、統計的に両方を同時に投入したとき、「NS適合の変化のほうが圧倒的に強くPJフィット感に影響していた」ことが判明しました。
つまり、「この仕事は自分の能力を活かせるか」よりも、「この仕事は自分が求めているものを与えてくれているか」(給与、自律性、やりがい、職場の地位感といったニーズへの充足感)こそが、「自分はこの仕事に合っている」という実感を左右するのです。
◯わかったこと3:若手ほどフィットの変化に敏感に反応する
そしてもうひとつの核心的な発見が、年齢による違いです。
PJフィットが向上したとき、あるいは悪化したとき、若い従業員(25歳前後)のほうが、ミドルの従業員(38歳前後)に比べて、職務満足度や組織へのコミットメントがより大きく、より鋭く変動することが示されました。
研究者たちはこれを、「若者はキャリアや仕事に関連する目標をより強く意識している」という発達心理学的な理論から説明しています。
キャリアの初期段階では、仕事が自分の成長目標に合っているかどうかへの感受性が特に高い傾向がありました。そのため、フィットが上がれば大きく前向きに、下がれば大きく落ち込むということです。
■まとめと感想
少し前に、ある会社の人事の方から「若手が辞めやすくなっている」という話を聞きました。
話を聞いてみると、「10年後のために今は下積みが必要だ」という会社の方針の中で、なかなか刺激的な仕事がなく、モチベーションが下がっているというのが一つの理由だとか。
昔だったら「それが当然」だったかもしれない。
でも今の時代、若手のニーズは確実に変化しています。
より早く成長したい、もっと自分の能力を活かした仕事がしたい、そうした期待と現実のギャップが、フィット感を侵食しているのかもしれません。
この研究が示すのは、その「侵食」に気づくためのしかけとして、定期的なモニタリングと、個人のニーズへの感度をマネジャーが持ち続けることの大切さです。
データが教えてくれる当たり前のことを、当たり前に実践し続けること、それが、今の時代に求められるマネジメントなのかもしれないな、と思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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