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4631号 2026年10月30日

読書レビュー(その2)『人材開発・組織開発の臨床知: 科学知ではつかみとれないプロフェッショナルたちの流儀』

(本日のお話:2535 字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は朝から10kmのランニング。また、2件のアポイント。その他研修プログラムの作成でした。
*
さて、本日のお話です。
先日、『人材開発・組織開発の臨床知』の
読書レビューを書かせていただきました。
本日も続けます。

今日は、本書の目玉であろうと思われる
「プロフェッショナル10名の臨床知」を読んで、
私なりに感じたことをまとめてみたいと思います。

思うのですが、「事実やデータ(科学知)」を元に構造化された「型」は、
説得力があり、「役に立つ」と感じます。
そのまま、現場で活用できる、武器をもらえたというイメージでしょうか。

ただ、「経験から紡がれた物語(臨床知)」は、
他者の歩みを眺め、同時に我が身を振り返ってみることで、
内省され、「自分を揺さぶられる」という感じがします。
そして、本書の10名のプロフェッショナルのあり方は、とても刺激的です。

今日は、「臨床知編」の入口と、
最初に登場する種部さんの物語を読んで思ったことを書いてみたいと思います。
それでは、どうぞ!

■「学術書」だけど、感情が揺さぶられる理由

なぜ、それぞれの物語が刺激的なのだろうか……と思ったときに、
本書の「臨床知を探求する方法」として以下のような記述が、
その理由の一つかもしれない、と感じました。
以下、引用いたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もし仮に、今現在の彼らが発揮している臨床知の断片(=後続する経験)を
わたしたちが理解したいのであれば、
「後続する経験」に光を照射しても、
臨床知そのものを得られるわけではない。(中略)
実際、彼らのインタビューの中では、
彼らの子ども時代、社会人に成り立ての駆け出し期の経験、
そして周りから一目置かれる存在になった経験、
多くの試行錯誤をしてきた経験が語られる。
こうした「先行経験」の存在を見ずして、今を語り得ることはできない。

pp.32–33
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのこと。
「プロフェッショナルの”今”」だけではなく、
「その人が”今”に至った物語」が描かれる。
そしてそれが、人によって、実に違っている。
そして、「経験の糸」をたぐり寄せるのだ、と。

こうした血の通った物語は、
理性よりも感情に訴えかけるところがある、と感じます。
なので、「学術書」という形でありながら、
「感情が揺れる・揺さぶられる」と感じるのは、
その所以ではなかろうか、そんなことを思うのでした。

■プロフェッショナルの実践から思うこと

さて、ここから先の「臨床知」の具体的な話については、
ぜひ、本書を読んでいただきたいのですが、
私なりに、それぞれの方のエピソードを読んで感じたことを、
つらつら書いてみたいと思います。

個人的にもお付き合いさせていただいている方もおり、
プライベートなやりとりと混ざりそうですが、
それぞれの方にご迷惑がかからないと思われる範囲で、
語らせていただければと思います。

◯「呼び水を当てていく」:種部さんのプロフェッショナリズム

まず、臨床知編の最初のプロフェッショナルは「種部吉泰さん」です。
パナソニックインダストリー株式会社の
人材開発・組織開発の内部支援者として携わられています。
元々営業としてのキャリアから、大学院に進学、
組織行動論を学び、パーソル総合研究所ヘの転職をされます。

種部さんの「プロフェッショナルのこだわり」と感じたキーワードが
「イメージできるまで聞く」「相手を観察すること」。
そして極めつけが、「あえて『心をざわつかせる』」という点でした。

以下、インタビューの一部を引用いたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「研修講師として、みんなから好かれる「良い人」には、
わたしはならないです。
どちらかというと「お節介」とか「うるさそう、こいつ」みたいな方を選びます。
(中略)そのほうが、管理職を動かせる。成果が残せると思います。」

(p.73)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

無難なのは、「研修参加者に気を遣って、好かれる」ことなのかもしれない。
でも、あえてそれを選ばない、というところに、
「種部さんのプロフェッショナリズム」を感じます。
プロとは、”一歩踏み込む”ことであり、”相手を揺さぶること”でもある。
それを、デフォルトとしてやっているように感じたからです。

アウトボクシングで、「機をうかがう」という戦略も必要ですが、
ずっとそれをしていたら、結局は何のインパクトも打ち込めない。
それを、限られた研修時間、一期一会の中で、自分に課している。
私は、そんなイメージをこの物語から感じました。

▽▽▽

種部さんは、立教大学の兼任講師仲間でもあり、
ランニング仲間でもあるのですが、
人・組織づくりのこだわりなどを話す中で、
介入相手、例えば大学生などに対しても、
「(自分で)すごいと思っているかもしれないけど、
実はそうでもない。まだまだだよ」と、
あえて揺さぶりをかける、というような話を聞いたことがあります。
それを聞いて、すごいな…と感じた自分を思い出しました。

「挑戦」をするようなメッセージには、一瞬の緊張が走ります。
ただ、そうして「ぐっと距離を詰める」「チャレンジする」ことは、
まさに相手の懐に入って対峙するイメージです。

もちろんその状況、信頼関係によって、必要な働きかけは変わります。
ただ、好かれることが目的ではない。
でも、手放すからこそ、相手の心に、必要な動揺をもたらすことができる。

「そのままでいいよ、十分だよ」という言葉は、
その場には安心をもたらすかもしれない。
でも、ときにはそれだけでは、次の成長につながらないこともある。

私自身、研修や授業を担当する中で、相手に踏み込むことを躊躇する場面があります。
「ここまで言ってよいのだろうか」「嫌な思いをさせないだろうか」と。
しかし、そうした躊躇を乗り越えることも、
プロフェッショナルとして必要な姿勢なのかもしれません。

種部さんの物語を読みながら、そんなことを考えさせられました。

■まとめと感想

…と、つらつら書いていたら、こんな風に、我が身を振り返り、
そのプロフェッショナルの背中から、
「いや、大事だな」「自分はどうなのか」という
内省が深まるという体験をしています。

そして、それぞれの物語に、じっくり味わいたくなるような濃密さがある。
そんな贅沢な読書体験をさせてもらっています。
まさに、「贅沢なチョコマシュマロ」を1粒ずつ味わっている、
そんな感覚を得ている次第です。

ということで、また次回に続けたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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