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今週の一冊『人間の経済』

今週の一冊『人間の経済』

2356号 2020年8月2日

(本日のお話  2452字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、終日、
「人生のミッションを定める自己探求ワークショップ」
のオンライン開催でした。

ご参加頂いた皆さま、
土曜日に朝から集中してご参加いただき
誠にありがとうございました。

自分自身を”内省”すること。

そして同時に、外に世界に向けて
視点を拡げ”人との出会い”で
自分の理想像を拡張していくこと。

それが、自らの”ありたい姿”を
固める上で、とても重要なことで
あるなと私自身、改めて感じた次第。

そして結局最後は、行動してこそ
わかるものだろうな、と思います。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『人間の経済』(新潮新書)
宇沢弘文 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/B06Y5VB25Q/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_KtRjFbNZ68CMH

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です。

■知る人ぞ知る、経済思想の巨人、宇沢弘文氏。

、、、という私も、
この本を紹介されるまで
実は知らなかったのですが、
大変な功労者であられます。

以下、wikipediaより、
プロフィールの引用です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
宇沢(宇澤) 弘文
(うざわ ひろふみ、1928年7月21日 - 2014年9月18日)は、
日本の経済学者。専門は数理経済学。

東京大学名誉教授。
意思決定理論、二部門成長モデル、
不均衡動学理論などで功績を認められた。従三位。

1983年文化功労者、1989年日本学士院会員、
1995年米国科学アカデミー客員会員、1997年文化勲章、
2009年ブループラネット賞。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

そして、この本は晩年、

リーマン・ショック後の世界について
宇沢氏が語ったインタビューを
133ページほどの本としてまとめた一冊です。

少し前の本ですが
未だ色褪せることなく
これまでの世界の姿と人類の歩みを
私達に教えてくれる一冊です。

■私のような一般人にとっては、

36歳でシカゴ大学の教授になり
ローマ法王とも語り合い、
経済の優れたモデルを世界に提案するような天才で人格者が

何を考えているのか、
想像もできませんでした。

ただ、この本を読むことを通じて

「経済で世界を変えようとした人が、
世の中の何を憂いていたのか?」

「社会的弱者を含めて、皆が幸せに
なるためには、何が必要なのか?」

「世界はこれまで、どこで舵を間違えて
きてしまったのか?」

という自分では想像もつかない
テーマについて

”世界の仕組みと構造について
俯瞰した視点を、与えてくれる”

と感じました。

■例えば、

”経済的な視点”で、
人類はこんな過ちを繰り返しきた

と具体的な事実を、
実に平易な言葉で教えてくれます。

・パックス・ブリタニカ(イギリスの繁栄)の際には
経済的に豊かさを得るため、インド人に織物が
できなくする意図で、皆の手首を切り落とした。

・第一次世界大戦後のアメリカ(1920〜30年代)に、
当時、経済学で支配的だった新古典派経済学の考えにより失敗。
(大増税、でも超富裕層に大減税、投機を自由にする)
金融機関が倒産→国民所得は半分に→失業率25%→自殺率の急増
という惨事が起こった。

・第二次世界大戦後は、”市場原理主義”が支持されたことにより、
「市場で利益を上げるためならば、法も制度も変えられる。
儲けるためなら何をしてもいい、水爆を落としてもいい」
という人間の理解の枠を超えた域に行ってしまった。

・環境を壊してもいい。汚水を垂れ流してもいい。
サブプライムローンのような詐欺まがいの
金融商品を作ってもいい、となる。

・今の、「儲ければ何をしてもよい」という経済は、
リベラルアーツの考えを忘れた非人間的なものになっている

と語り、

”ただ儲けるだけの経済学で
人を、社会を、世界を幸せにできるのか?”

と警鐘を鳴らし続けました。

そして

社会的弱者も、富める者も貧しき者も、
先進国も、発展途上国も皆が幸せになる
「人間の経済」の考えを持つことの重要性を

と語りました。

■この本で私が感銘を受けたのは、

”「こうあるべきという理想論」ではなく、
宇沢先生自身の行動の軌跡である”

ということです。

ゆえに、リアリティが違います。

そして、自分が知らなかった世界の視点を
教えてもらえるような感覚がするのです。

イメージでいえば、

”世界を救うために活躍してきた
人格者の優しくて賢いおじいちゃんが
子供達に、世界の仕組みと、大切なことを
わかりやすく伝えてくれている”

という感覚です。

話の中に、

・ローマ法王との対談

・日本とアメリカの密約の話

・成田空港問題の裏の話

・CIAと経済の繋がり(政治的に国を買収する費用がある)

・イギリスの医療制度の失敗の理由

など、非常に興味深い話が
なぜ、それが起こったのかということを

全く未知の「経済学とのつながり」から
教えてくれることが、

「へえー」

の連続で、視点を圧倒的に
拡げてくれるような感覚をもったのでした。

■普段、私が手にしない種類の本でしたが、
勧められて読んでみて正解でした。

以下、著書の紹介です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

富を求めるのは、道を聞くため——

それが、経済学者として終生変わらない姿勢だった。

「自由」と「利益」を求めて暴走する
市場原理主義の歴史的背景をひもとき、

人間社会の営みに不可欠な医療や教育から、
都市と農村、自然環境にいたるまで、
「社会的共通資本」をめぐって縦横に語る。

人間と経済のあるべき関係を追求し続けた
経済思想の巨人が、自らの軌跡とともに語った、
未来へのラスト・メッセージ。

※Amazon内容(「BOOK」データベースより)引用

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私の言葉が足りず
皆さまに魅力が伝わったのか心配ですが、

ピンとくるものがあれば
ぜひお手にとって頂ければ、
大いなる気づきがあると思います。

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<今週の一冊>

『人間の経済』  宇沢弘文 (著)



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