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2548号 2021年2月10日

統計データからみる上司と部下の「1on1」の重要性

(本日のお話 2308字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日はオンラインの
コーチング・フォローアップ研修。

170名の方にお集まりいただき
開催をさせていただきました。

(ご参加いただきました皆さま
 お忙しい中、ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

しばしばコーチングについて
お伝えをする中でいただくご質問で

「部下と対話をする意味が、正直よくわかりません。 
 1on1って本当に意味があるんですかね?」

なる率直なコメントを
いただくことがあります。


ただ結論として
「対話はめちゃ大事!」なので、

今日はあるデータを元に
「1on1の重要性」について

皆さまに学びと気付きをご共有させて
いただければと思います。

それでは早速まいりましょう!


タイトルは



【統計データからみる上司と部下の「1on1」の重要性】



それでは、どうぞ。



■ITエンジニアの会社で働く
ある課長さんがこんな事を言っていました。


「1on1って本当に必要なんですかね?

 私、困った時は自分で考えるんですよ。
 キャリアとかも自分で考えるものだと思うし。

 トラブルでもないときに
 部下と何を話せばよいかよくわかりせん」


なる声。

曰く、

・マネージャーだから、
 トラブル処理やタスクの質問は答えるのは仕事

・ただ、それ以外の悩みや懸念点などは
 話す理由はあるのだろうか
 
・自分はタスク以外の悩みなどは
 誰かに話さないし、話したくないし。
 自分で考えている
 
、、、とのこと。


なるほど、たしかに合理的ゆえ、
「対話」はあんまり必要としない雰囲気です



■実際、こういうケースは
しばしばあるように感じます。

特に、上司の方が
「タスク志向型」であった場合など。

例えば、普段から

・目標に向けて何をすべきか、
・どのようにやればよいのか、
・いつまでに誰がやればよいのか

を考えることを軸にしている場合です。

そこに「人間関係志向」として”関係性”などよりも
おこなうべき「タスク」が先行する、ということ。

(ちなみに、タスク志向が悪い、のではありません。
 状況によってどちらが有効か異なるだけです)


■ただ「タスク志向型」の方であれば

”1on1などのフォロー”

は、ふわっとしていて曖昧な
なんとも効果が見えづらいもの(かも)
しれません。

仕事なんだから、
仕事のことをやればいい。

たしかに、合理的です。



■しかし、

人は機械のように
プログラミングをすれば

その通りにアウトプットが出る
存在でもありません。

学ぶ存在であり、悩む存在であり、
成長する存在であります。


そして、人は学ぶ時に、


『経験学習モデル』(デイビットコルブ)


という学習モデルで学ぶと言われます。

つまり、

1,経験(物事を体験する)

2,内省(自分自身を振り返る)

3,概念化(上手くいく・失敗するパターンなど抽象化する)

4,実践(それを活用して行動に活かす)

というように

”経験を通じ、振り返りながら学んでいく”

のです。



■確かに

「振り返り・内省」も一人で
やれればよいのですが、

一般的に

他者からフィードバックをしたり
質問をされたりしながら関わられた方が
「内省」は促されるとされます。

上司の関わりは「振り返り・内省」を促す
良い機会になりえるわけです。

そういう意味でも、

「上司の1on1の関わり」

は有用といえるでしょう。



■更に、こんな実証研究があります。

「上司による業務経験付加行動と
 部下の能力形成」

という研究です。

(※参考:中原淳『経験学習論 ー人材育成を科学するー』,東京大学出版会,2012)



■ものすごーく平たく言うと、


”上司が部下に関わる際に、

 「どのような行動が
  部下の能力を成長させるのか?」
  
 を調査・分析した研究”
 

です。



■数名のマネージャーに、

「普段、部下に仕事を任せるときに、
 どんな行動してます?」
 
と聞き取り調査を行ったところ、
39項目の行動が出たのでした。


それらを大きく分類すると、


1,モニタリングリフレクション(=仕事の進捗管理と内省を促す)

2,仕事説明(=仕事の全体像を伝える)

3,ストレッチ(=背伸びする仕事を任せる)


という3要因にわかれました。



■もうちょっとこの3要因を
詳しくお伝えすると、


<1,モニタリングリフレクション(=仕事の進捗管理と内省を促す)>

とは、

「上司は、あなたが自分の仕事内容を
 振り返る機会を与えてくれる」
  
「上司は、あなたの仕事について
 新たな視点を与えてくれる」
  
「上司は、あなたの仕事について
 新たな視点を与えてくれる」
 
などの質問項目で構成されます。


<2,仕事説明(=仕事の全体像を伝える)>
  
は、

「上司は、あなたに職場で抱えている
 仕事の全体像について説明してくれている」
 
「上司は、あなたに任せる職場の前工程と
 後工程について説明してくれる」
 
「上司は、あなたに任せる仕事の意義について
 説明してくれる」
 
などの質問項目で構成されます。


そして3つ目の

<3,ストレッチ(=背伸びする仕事を任せる)>

は、

「上司は、あなたに背伸びが必要な仕事を
 任せてくれる」
 
「上司は、あなたに易しくはない仕事を
 任せてくれる」

「上司は、あなたの能力より若干高めの
 仕事を担当させてくれる」
 
などです。



■そしてこれらの3要因の行動から、

「どの要因(行動)が部下の育成に役に立つのか」

を611名の入社2年目に対する
統計的データにより分析をした、

というのです。



■結論からすると、

「モニタリングリフレクション、仕事説明、ストレッチ、
 いずれも部下の育成に役に立つ」
 
ということになりました。

ただ、その中でも着目したいのが、

『モニタリングリフレクション(=内省)』

の機会を与えることが、
業務能力向上へ繋がる関連性が強かった、

という点です。



■つまり、

「1on1で、振り返る・内省の機会を設ける」
 
という行為は

部下の育成に十二分にプラスの効果を発揮することが
統計的にも証明された、

ということです。



■同時に、この話から思うのが、
「信頼」の大切さです。

例えば、1on1による内省の機会の際に

「部下が安心して内省できるかどうか」
は大きなポイントになりそうです。

「信頼・安心」がなければ、


・上司が求めている答えを伝えようとする
 (あるいは黙って、ぼちぼちです、で終える)

・失敗経験など話をすると
 ”詰められる”ような恐怖を持っている
 
・信頼がなく、率直に語れない


となり、当然ながら1on1も
機能しないことが想像されます。



■ということで色々と
データや理論を絡めて「1on1の重要性」をお伝えしましたが
まとめると大きく2つです。


1、経験を振り返り、内省する機会が
  人を成長させてくれる
  
2、上司が内省を促す関わりをすることで
  部下の育成に資することができる
  
ということ。
  

結論、

「対話と振り返り、めちゃ大事!」

なのですね。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

まわりを見渡し、自分に何ができるか考え、
それを実行したならば、前へ進むことができる。

ローザ・パークス(米国の公民権運動活動家/1913-2005)

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