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『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』

今週の一冊『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』

2901号 2022年1月30日

(本日のお話 3906字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。

それでは早速まいりましょう!

今週の一冊は

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『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』 (光文社新書)

山口 慎太郎 (著)


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です。

■「子育ては3歳までは
つきっきりで子育てすべきだ」

「赤ちゃんには母乳が一番いい。
そのほうが頭も良くなる」

子育てには、様々な”ご意見”があるものです。

それはいつからそう言われるようになったのか、
その根拠は何なのかは、よくわかりません。

ただそのような強い意見、
「思い込み」なのか、
「子育て神話」なのか、

様々な意見に影響を受けて
頭を悩ませる世のお父さんお母さんも、
決して少なくないのではないでしょうか。

そして、今回ご紹介の一冊は、
そんな「家族の幸せ」に対して

”気鋭の経済学者が、事実と統計学を元に、
「家族にまつわる事実」を紐解いてくれる一冊”

であり、実に含蓄に溢れた一冊です。

(個人的に小さなお子さんを持つお父さんお母さんには、
特に、超おすすめ!です)

■この本ですが、私
読み始めたら目が離せなくなり、
一気読みしてしまいました。

、、、というのも私(紀藤)、
先日、第一子(息子)の1歳の誕生日を迎えた
父親でもあるからです。

加えて人の学びや成長に関連することを
生業とさせていただいておりますので、

「子供はどう育てるのがよいのか」

についても、やはりそれなりに考えます。

■例えば、こんな風に考えたりして、
夫婦で話をしたりします。

大学院関連で少し前に読んだ
発達心理学者のエリクソンの書籍で

”健康なパーソナリティを構成する最初の要素を
「基本的信頼」の感覚と名付ける。

生後1年間の経験から引き出された
自分自身と世界に対する一つの態度である。”

(引用:エリク・H・エリクソン『アイデンティティとライフサイクル』P52)

と読んでみるとそれに影響を受け、
妻と食事を囲みながら、

「0歳の今は、”基本的信頼”がテーマの時期なんだって。
この世界に対する信頼を獲得している時期だから
やっぱり一緒にいてあげるほうがいいのだろうかねえ」

と語ってみたり。

(これが本当にいいのかは、
また後半で触れたいと思います)

■あるいはまた別の箇所で、

”新生児が、母親の身体との共生関係から引き離されると、
<乳児の持つ生得的で、ある程度は協調的な口を通してものを取り入れる能力>と
<母親の持つ新生児に栄養を与え、その存在を歓迎する、ある程度は協調的な能力や意図>に出会う。

この時点において、乳児は口を通していき、口によって愛し
母親は乳房を通していき、乳房によって愛する。”

(引用:エリク・H・エリクソン『アイデンティティとライフサイクル』P53)

と読んで見ると、それに感化され

「今、母と息子は、
おっぱいを通じて愛して、愛されているのだって。
やはり、母乳の方がよいのだろうかねえ・・・」

と語りあってみたり。

よって、様々な情報から影響を受け、

・基本的信頼を得るために、
母親と1年間は一緒にいたほうがいいのか

・乳房を通じて愛し愛されるから、
やはり母乳のほうがいいのか

と考えてしまう私(そして多分妻も)もいたのかな、
と思うわけです。

そして、考えていることは若干違えど、

世のお父さんお母さんも、
「何が正しいのだろうか」を試行錯誤しながら
子育ての選択をしている(してきた)、、、

と思います。

■では、一体、
「事実」としてはどうなのか?

事実として、

・母乳が本当に、いいのか?

・子育ては、母親がつきっきりで
3歳までは見るべきなのか?

・育休はどれくらいがちょうどいいのだろうか?

、、、

これらのことを、

調査データや先行研究を元に、
東京大学経済学部の准教授の著者が、
紐解いていったというのが、今回の書籍なのです。

■例えば、こんなお話が紹介されています。

◯母乳育児についての科学的研究

・科学的研究により、母乳育児が生後1年以内の子供の健康にきよし、
乳児突然死症候群の現象にも関わっていることが示された。

・一方で、それまではあると信じられてきた、
母乳育児の長期的な効用については否定的な結果が示された。

(例えば、子供の肥満、アレルギー、喘息、虫歯の予防、
問題行動の減少と知能の発達に対しての効能に対しては、
疑問が呈された)

◯生後、お母さんと一緒に過ごした時間の長さの影響

・ドイツの研究において、高校・大学への進学状況や、
28歳時点でのフルタイムの就業の有無と所得を調べた。

・その結果、”生後、お母さんと一緒に過ごした期間の長さは、
子供の将来の進学状況・労働所得などにはほぼ影響を与えない”
ことがわかった。

・よって「愛着理論」のように
(生後1年は一緒にいたほうがよいとする考え方、上述のエリクソンのお話です)
生後1年以内は母子が一緒に過ごすことが子供の発達に重要であると考えられてきたことは、
データは必ずしもこうした議論の正しさを裏付けることはなかった

◯どれくらいの育休期間がちょうどよいのかの研究

(ドイツ、オーストラリア、カナダ、ノルウェーなどの調査によると)
・「1年以内の短期の育休制度」はお母さんの出生数年後の就業に追って
悪影響はなく、あるとすれば多少プラスの影響が見られた

・それ以上長い、たとえば3年以上の育休制度は
お母さんの就業にとってわずかなマイナスの影響があった



などなど。

■あくまでもこの書籍では

「現在、この調査によると、
こういうことが言える」

という範囲に留められています。

ゆえに、
”絶対的にこうすべき”ということは、
声高に断言することはしていません。

おそらくそれは経済学者という視点から
「母乳育児」一つとっても、

・その影響のみを切り取って調査をするのは、
非常に困難であるという事実 とか

・短期・長期のそれぞれの影響を見ていかないと
明確に語れないという現実

等も踏まえて、
「事実に誠実に向き合うからこそ」のスタンスが
一貫してあるからだと、感じさせられます。

ただ、経済学者として、
現在わかっている調査と、
そこから推測される所感について

「思い込み」ではなく
「データ」を元にして語ってくれるため、
非常に説得力があるのです。

■詳細については
以下、書籍についてご紹介いたします。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

大竹文雄氏(大阪大学大学院教授・『経済学的思考のセンス』)
「結婚、子育てで悩む人に、最新のエビデンスとその活かし方を気鋭の経済学者が教えてくれる」

中室牧子氏(慶應義塾大学教授・『「学力」の経済学』)
「私が選んだ、2010年代のベスト経済書。ものすごくわかりやすいのに、知的刺激に満ちた一冊。」

あなたを安心に誘う真実が満載!
□ 保育園は、母親の「幸福度」を高める
□ 保育園は、子どもの「攻撃性」を減少させる
□ 「育休3年制」は意味がない。1年で充分
□ 母乳育児の「知能」「肥満」への効果はない
□ 日本の低出生体重児の数は世界3位
□ パパの育休は、子の16歳時の偏差値を上げる

◎内容紹介◎
「帝王切開なんかしたら落ち着きのない子に育つ」
「赤ちゃんには母乳が一番。愛情たっぷりで頭もよくなる」
「3歳までは母親がつきっきりで子育てすべき。子もそれを求めてる」
出産や子育ては、このようなエビデンス(科学的根拠)を一切無視した「思い込み」が幅をきかせている。
その思い込みに基づく「助言」や「指導」をしてくれる人もいる。
親身になってくれる人はありがたい。
独特の説得力もあるだろう。
しかし、間違っていることを、あなたやその家族が取り入れる必要はまったくない。
こういうとき、経済学の手法は役に立つ。
人々の意思決定、そして行動を分析する学問だからだ。
その研究の最先端を、気鋭の経済学者がわかりやすく案内する。

◎目次◎
第1章――結婚の経済学
第2章――赤ちゃんの経済学
第3章――育休の経済学
第4章――イクメンの経済学
第5章――保育園の経済学
第6章――離婚の経済学

◎著者プロフィール◎
山口慎太郎(やまぐちしんたろう)
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授。
1999年慶應義塾大学商学部卒業。2001年同大学大学院商学研究科修士課程修了。
2006年アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D)取得。
カナダ・マクマスター大学助教授、准教授を経て、2017年より現職。
専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。

※Amazon本の紹介より引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■ぜひ「家族」に関して
ご興味がある方に読んで頂きたい、
と思える一冊です。

ご家族を持たれている方には、ものすごくお勧め。
そうではない方に対しても、やっぱりオススメ。

「結婚」「子育て」「育休」「離婚」まで
家族にまつわる幅広いテーマについて、

経済学者が事実と統計学を紐解く形で、
非常に信頼性の高い情報と視点を私たちに提供してくれて、

知的好奇心が満たされるとともに、
実際の日常へも、深い示唆を与えてくれます。
オススメの一冊でございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』 (光文社新書)

山口 慎太郎 (著)


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