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今週の一冊『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』

今週の一冊『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』

3062号 2022年7月10日

(本日のお話 2522字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、
半年間に亘るリーダーシップ研修のDAY2。

ストレングス・ファインダーを用いた
強みの自己認識のワークショップでした。

4年前にコーチの資格取得の際に
ご一緒した方と共に実施をいたしましたが、
我々運営側の成長も感じられて嬉しい時間でした。

外の人とのつながり、
これからも大切にしていきたいと思います。

(そしてご参加頂いた皆さま、ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は

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『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』 (河出文庫)

デイヴィッド・J・リンデン(著)、岩坂彰 (訳)


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です。

■「触れる」ということは、

私たちに何をもたらすのか?

というより、触覚とは、
一体なんなのか?

あまりにも日常的すぎて
「触覚」を意図して意識する場面は
少ないでしょうし、

触覚ってなに?なんて考える人も
相当レアでしょう。

あるいは、相当変わっているか、
どちらかかと、、、(苦笑)

■視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の
5感の一つに数えられるこの感覚は、

健康診断で視力テストや聴覚テストを
されるわけでもありません。

しかし、

・他者や世界とのつながりを感じるために必要不可欠
(触れる、繋がる、愛情を感じる)

・自分が主体となり何かを表現するためにも必要不可欠
(働く、書く、奏でる、運動をする)

であり、

非常に重要な感覚の一つであるというのは、
触覚がもたらしてくれるものに一度焦点を当てると、
容易に理解ができることではないか、と思えてきます。

■そんな「触れる」ことについて、

科学的な研究から、徹底的に解き明かした
エンターテイメント作品がこの一冊。

エンターメント、というのが
ちょっとしたポイントだと思っていて、

というのも、Amazonの本のレビューでは、
こんなふうに紹介がされています。

”人間や動物における触れ合い、
温かい/冷たい、痛みやかゆみ、性的な快感まで、
目からウロコの実験シーンと驚きのエピソードの数々。
科学界随一のエンターテイナーが誘う触覚=皮膚感覚のワンダーランド。”
(Amazon本の紹介より引用)

著者のデイヴィット・J・リンデン氏は、
ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授であり、
神経科学者でありますが、

”科学界随一のエンターテイナー”

と書かれていることが、実に納得できる一冊なのです。

■紹介されている話は、

研究に基づいた実験の数々を論文より紹介する
説得力があるものですが、

その事例一つ一つが、
「えっ、そんなのもあるの?」と
驚かされる話ばかりなのです。

そこが面白い。



例えば、王道から言えば、こんな話です。

<「温かいコーヒー」と「冷たいコーヒー」の実験>

→”身体的な温かさ”は比喩的な温かさと関連するのか?の実験。

「皮膚に感じられる温かさが、
相手の印象に対する温かさに繋がるのか」を調べたところ、

温かいコーヒーを持って、対象者の第一印象を聞いた場合と、
冷たいコーヒーを持って、対象者の第一印象を聞いた場合では、

温かいコーヒーを持って接したほうが、
有意に相手のことを「温かい人」と感じていた。

(そんな単純な!?と思いましたが、統計的に有意な差があったそう)

あるいは、

<触れ合いが多いバスケットチームは強い>

→ハイタッチや、仲間のお尻を叩いたり、
チェストバンプ(胸をぶつけあう)などの身体的接触が、
協調的プレーと好成績の予測因子になるのでは、という実験。

・NBA全30チームの開幕後2ヶ月の試合の録画をチェックし、
身体的接触を数え、それらを適切な統計処理したところ、

「勝ち越したチームの身体接触は、
負け越したチームの身体接触に比べて多い」結果になった。

など。

触れ合いって、大事なんだーと、
考えさせられます。

(もちろん文脈や立場のほうが影響力は大なので、
職場に安易に触れ合い大事、とすると危険です)

■上記のように、

”触れ合うことの効果”を調べた
王道的な研究も前半に紹介されつつ、

中盤からは、もっとマニアックな話にも
踏み込んでいきます。

例えば、
「パートナー同士の触れ合い」も研究的視点から取り上げます。

パートナー(同性/異性)が実際に触れ合うことで
何が脳に起こるのかを調べるため、

”CTスキャンを取りながら
パートナー同士で触れ合ってもらう(!)”

という実験。

関連する皮膚感覚と、
通常の皮膚の違いの神経学的な話も、
盛り込んで論考していきます。


あるいは、痒みという感覚。

こちらも掘り下げて解明していき、
触覚を部分的に失ったことで
脳まで掻いてしまった女性の話(!)

など衝撃的な症例の話なども
紹介されていきます。

■そうやって、

・触れ合うとは何か?

・人はどうやって「触れること」を感じるのか?

・神経科学的にどのようにできあがっているのか?

・触れ合うことが子供の免疫や発達に、
どのような影響を与えるのか?

・性的な触れ合いとは
科学的に何が起こっているのか?

・痛みとはなにか?

・かゆみとは何か?

等々、「科学的に」「研究に基づいて」
紹介をされていくのが、
非常に興味深い内容となっています。

まさに、触れ合うことのワンダーランドを
体験できる一冊ではないか、

と思います。

■ちなみに急に話が飛ぶようですが、
1点思い出す話がありました。

この本を、

「人材開発・組織開発に関わる方にも、
おすすめしたい一冊」

と思う所以です。

というのもこの本は、
ある研修の参考書籍として
紹介されていた本だからです。

個人的な話ですがコロナ禍の真っ只中で
もっとも警戒が強かったとも感じた1年半前、

レゴブロックを使ったワークショップ
「レゴ・シリアスプレイ」というものの資格取得の
4日間のコースに参加いたしました。

その際に言われたことが印象に残っています。

「コロナが落ち着いて
対面研修が戻ってくる日は必ずやってくる。

その時には”対面で会う”ことの意味が、
これまでと変わってくるはず。

せっかく”対面で会う”のだから、
そこでしかできない体験、

例えば、五感を使ったような、
記憶に刻まれる体験がますます求められるはずです」

、、、と。

そして、その中で「触れる」という
重要な感覚について、触れていたのでした。

■まさに、書籍で紹介されている、

「温かいコーヒーを持ちながら人と接すると
(触覚に影響され)相手が温かく感じられる」

ように、

”触れる感覚”も含めて、
対面ではその場が作られていきます。

それは人・組織づくりにおいて、
付加価値をもたらす材料の一つに
なりえるのかもしれません。

対面研修ではクッシュボールという
ふわふわしたボールも研修教材として
使うことがありますが、

※こんなのです。さわってると気持ちよくて落ち着くのです↓↓


こういったものも、
もっともっと注目されていくのかもしれない、
とも思います。

■と、つい人・組織づくり系の話に
よせてしまいましたが、

それに関係なくとも、
「触れること」という人生に重要な感覚を探求する
学び深き一冊でございます。

よろしければ、ぜひ。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』 (河出文庫)

デイヴィッド・J・リンデン(著)、岩坂彰 (訳)

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