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3076号 2022年7月24日

今週の一冊『たった一人の生還 「たか号」漂流二十七日間の闘い』

(本日のお話 1886字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は朝から10ロのランニング。
また昼からは前々職の同期でとのランチでした。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日はおすすめの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『たった一人の生還 「たか号」漂流二十七日間の闘い』

佐野 三治(著)


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でございます。

■この書籍、

1992年に起こった遭難事故にて
27日間の漂流の果ての、唯一の生存者である著者による
ノンフィクションのお話です。

その壮絶な体験に引き込まれ
一気読みしてしまいました。

■どんな話なのかについて、
本の紹介から以下、引用させていただきます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

突然の転覆、直面する仲間たちの死、
して27日間にわたる漂流とたった一人の生還
――海をめぐる生と死の壮絶な物語。

1992年12月29日午後8時ころ、
小笠原諸島父島沖で、暴風雨のために外洋ヨットレースに参加していた
「たか号」が突然転覆してしまった。

巨大な崩れ波だった。

その事故で艇長も遭難死してしまう。
残された6名は、救命ボートに乗り移り、あてどない漂流がはじまる。

カツオドリを捕まえて食べたりしたが、
クルーは次々に衰弱して、1人また1人と死んでしまう。
直面する死との壮絶な闘い。

27日間にわたるこの悲壮な記録は、
たった一人生きて還ってきた者として、

海に眠る仲間たちのために
すべてを書き綴った鎮魂の記録でもある。

※Amazon本の紹介より引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■さて、

上記の紹介文を見ていただいただけで、
その内容から受ける迫力を想像してしまうかと思います。

実際に読んでみると、言葉を失います。

淡々とした語りの中に、
すさまじい人間の物語があることに引き込まれると共に、
驚きのような好奇心のような、なんとも言えぬ感覚を持ちます。
(不謹慎なのかもしれませんが、、、)



この事故では、
転覆をした直後、1名を除いて乗組員の6名が
なんとか救命ボートに乗り込みました。

しかし、遭難が続き、
発見されない日々が積み重なることで
乗組員は、脱水症状、栄養失調とつながっていきます。

また狭い救命ボートに
同じ姿勢で座り続けることによる肉体の衰弱、

刻一刻と肉体的に
死が差し迫る中で見える幻覚症状、

その中でのどのような精神になり、
乗組員同士の普通では考えられない
やり取りが生まれたのか、、、

著書の中でも、著者が

「その時の様子は
語ることができない」

という表現をされる詳細は書かれていません。
それほどまでに凄まじいものだったと想像されます。

読みながら、

『夜と霧』(ヴィクトール・E・フランクル)
『八甲田山死の彷徨』(新田次郎)

などの、

生死の境目で人が何を思い、
何を支えに生きるのかという人間存在とは、
という問いに近いものも感じます。

同時に、その前後での著者が
事件前後に、何を思っていたのかについて
冷静かつ、客観的に書かれていることも考えさせられます。

■この本から感ずることは、
いくつもあるのですが、

その中で一つ、教訓として
思うことがありました。

こういった話をするのは、
少し失礼に当たるようにも感じますが、
著者が振り返って、

「あのとき、ああしていれば・・・」

という「もし」というタイミングが
いくつもあったことに触れていることが
私は非常に印象に残りました。

例えば、

・出向前に「遭難用の通信機」のチェックをしておけば
助けを呼べたかもしれない

・海に投げ出された際に、
通信機を体に巻き付けておけばよかったのかもしれない

・転覆した際に、入り口の扉を
ルールに則って縄で固定しておけば転覆しなかったかもしれない

、、、など。

■それは、

何も起こらず、ゴールしていれば見過ごされる
小さなポイントだったかもしれません。

しかし「まさか」が起こったときに
それらが致命的なダメージとなり、

そして転覆につながった、
あるいは助けを呼ぶことができなかった、、、。

あくまでも「可能性」であり
”かもしれない”という事実でしかありませんが、

そのあったかもしれないもう一つのシナリオに
著者の消化できぬ気持ちが現れているようにも
私には感じられました。

■結局この事故においては、

突然の自然の力の前にどうすることもできなかった
(外洋で何万回に1回あるという大津波に飲まれた)

という結論だと思います。

ただ、
対比しては失礼なのかもしれませんが、
私達の毎日の中でも、同じように「まさか」が起こったときに、

「あのとき、ああしていれば・・・」

と想像してしまうことは
きっとありえるのではないか、

とも思います。

それは振り返ってみれば

ちょっとした準備だったり
行動だったり、確認だったり、
何かしらのアクションなのだと思います。

ただ、それらのことが
何かしらの生命線になりうるのかも、と思うと、

些細なことであったとしても、
「まさか」に備える姿勢は、大いに学ぶことが
あるのではなかろうか、、、

と思ったのでした。

■日本において、そして
さして遠くない過去において

こうした記録を残され、
そして想像させてもらえることは
実に貴重なことだと思わされると同時に、

自分の未来においての”まさか”に
後悔がないようにしておきたい

そんなことも感じた一冊でございました。

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<今週の一冊>

『たった一人の生還 「たか号」漂流二十七日間の闘い』

佐野 三治(著)


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