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3525号 2023年10月19日

「能力診断」のダークサイド ー書籍『能力の生きづらさをほぐす』より

(本日のお話 3045字/読了時間4分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は1件のアポイント。
その他、研修企画の打ち合わせなど。

10月下旬からの研修の連続に向けて
諸々準備を進めております。

年末感、出てまいりました!



さて、本日のお話です。

『「能力」の生きづらさをほぐす』
勅使川原 真衣 (著), 磯野 真穂 (解説)


なる本を読み終えたのですが、

大変面白く、また内容も深いものであると感じ、
素晴らしい本に出会えたことを嬉しく思いました。

今日はこの本の中から、
「能力にまつわる歴史のお話」についての学びを、
皆様に共有させていただければと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは



【「能力診断」のダークサイド ー書籍『能力の生きづらさをほぐす』より】



それでは、どうぞ。



■巷では、数多くの

「能力診断」

のツールが存在しています。


・リーダーシップ診断
・強み診断
・◯◯コンピテンシー
・メンタルヘルスチェック

固有名詞を挙げれば数知れず。


■ふと思えば、学生時代から

・クレペリンテスト(数字を足していくやつ)
・IQテストみたいなやつ(図形にしたらどうなる?)

というものを受けた記憶がありますし、

就職から新入社員では、

・SPSSの受検
・360°での職場行動評価

などがありました。

そして、今の私は

・クリフトンストレングス(ストレングス・ファインダー)
・リーダーシップ・サークル・プロファイル
 (リーダーシップ診断)
 
などを提供する側にもなっています。

まさに、能力診断が
学生から今に至るまで
あらゆるところに組み込まれておりますね。
(途中からは、組み込みに行きましたが・・・)



■さて、これらの
「能力診断」とされるもの。

特に”組織において”、
どのように広がっていったのでしょうか?


まず、その根本には
自分についても、他者についても

『わからないものを、わかるようにしたい』

という思いからでしょう。


、、、自分のことも、よくわからない。
、、、部下のことも、よくわからない。

何が強みで、何が弱みなのか。

何を軸にして、これからのキャリアを
気づいていけばよいのか。

誰か、教えてほしい。。。!


■そうした切なる思いの中で

「これが科学的に調査された、
 研究で明らかにされた結果に基づいた
 アセスメントツールです」
 
といわれ、そして

「これがあなたの強みと課題です」

と言われると、”安心”できるわけです。

なにかにカテゴライズされることで
自分がわかったような気になる、というのがある、とも言えます。

(うーん、実によくわかる)



■しかし、これだけでは特に組織の中に

「リーダーシップ診断」を始めとしたアセスメント(能力診断)が
ここまで普及した理由にはなりません。



さて、ではどのような背景があるのか?

ここについて、上述の著書
『「能力」の生きづらさをほぐす』にて
このように説明がされていました。

以下、部分的に引用させていただきます。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<人材開発業界が生んだ大ヒット商品「適性検査」>

・単に「能力を計測できる」というだけでは、
 リーダーシップ診断を始めとする能力評価は、
 ここまでのヒット商品にはならなかったと母さんも思う。
 
 能力商品を売って売って売りまくるのが人材開発業界。
 個々の「能力」を知らねばならない理由もしっかりとつけて
 売り歩いてるよ。
 
 この戦略については、
 人材開発業界の華麗なる商品開発の歴史を追うと、見えてくるんだ。
  
 企業は業績を創出する=お金を稼ぐために、
 さまざまな手立てや武器になる経営資源を持っているんだけど、
 どんなものが企業の業績創出に影響を与えるか知っている?
 
(中略)

・(たとえば)「経営資源の7S」ね。
 戦略、人材、ビジョン、組織体制、制度、スキル、組織風土(組織運営スタイル)。
 
(中略)

・では、ここで質問です。
 このような経営資源のうち、最も業績への影響度が高く
 業績創出に向けて最も注力すべきとされるものがあります。
 それはなんでしょうか?

(中略)

・今の質問、「最も業績に影響する経営資源」を調べたのは、
 人材開発系のコンサルティング会社最大手、ヘイグループ、なんです。
 (※現在は、コーンフェリー社と合併している)

・(そして上記の)答えは「組織風土(組織運営スタイル)」なんだ。
 
 ヘイグループは、業績(成果)の約3割は「組織風土」で説明できるとし、
 最も影響度が高いと言う。
 
(中略)

・ところで、組織風土と聞いて、それをどうやって改善していくか、ご存知ですか?
(中略)組織風土はリーダーシップへのほんの布石でございました。

 「こうした組織風土に重要な影響を及ぼすのがリーダーシップである。
  我々の調査によれば、組織の風土はリーダーが発揮する
  リーダーシップスタイルによってほぼ決まってしまうことがわかっている。
  両者の間には5~7割の相関があるのだ」(高野研一氏 元兵グループ社長)
  
(中略)

・「売上が落ち込んでいるあそこの部長は
 リーダーシップに問題があるのかもしれない。調べさせよう」
 と発想するのも無理はない。
  
 「引き上げるために、この『リーダーシップ研修』をどうぞ。
 業績創出への近道です」とつなげば完璧。
 

※引用:勅使川原 真衣 (2022)『「能力」の生きづらさをほぐす』第6章 爆賣れ・リーダーシップ ー「能力」が売れるカラクリ P131~144
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。


なるほど、

業績への影響→ 組織風土が大事 →リーダーシップが大事

だから、リーダーシップを測定し、
高めるための研修をしましょう、

という背景で人材開発業界は
これらのアセスメントを拡げてきた、ということのようです。



■たしかに頷ける点はあります。

ある人材開発領域にいる有名な方から、

「リーダーシップは儲かる」

という話を聞いたことがあります。

でもたしかにそうで、
「業績につながる」という理由があるからこそ、

経済界と紐づいて、そして
発展していくという側面は否めません。


特に組織において、
能力開発が浸透していったのは、
然るべき文脈があるわけであり、

そうした事を理解しておくことは、
「能力診断」を客観的に見る上で
必要な視点なのだろう、、、と思います。



■なんてことを書くと、

「リーダーシップ診断」は悪者のように
見えてくるかも知れませんが、

そういう事が言いたいのではありません。
あくまで、そういう側面がある、ということ。



こうした人材開発業界の営業の成果も

それが現場で活用できず
誰の価値にも繋がらないのであれば
それはここまで市民権を得なかったはず。

実際に私(紀藤)も、

自分自身のリーダーシップ診断や
強みの診断などを行うことで、

「自分のどんな能力を活かすと
 自分がより充実できるのか?」

「自分のどんなリーダーシップスタイルが
 課題と考えられるのか?」

などが明らかになったと感じ
仕事へのポジティブな影響もあったことは
この身をもって実感しています。



■しかし、ポイントは

「こうした能力診断への信奉が広がり、深まるにつれて、
 ”陰”の部分も大きくなる」
 
ということです。

”陰”の部分とは、

『「関係性」の問題を蔑ろにしてしまう』

ということ。

能力診断をして、

「彼はここが足りない」
「彼はここが優れている」
「だからこういう成果なのだ!」

とすると、
すべての責任を”個人”に
押し付けることになります。



■しかし、同じ”能力”を持つ人が、

この職場(関係性の中)では活躍できなかったけど
別の場所では活躍できるようになった、

ということはままあるもの。


そこには、上司や同僚、環境によって左右される、
「組織としての課題」が影響しているからです。



■能力診断は、わかりやすく、便利です。


しかし、問題の原因は、
1つに特定されるわけではなく、

個人要因
マネジメント要因
環境要因

さまざまな要因が重なりあって
生まれてくることを知る必要があります。


能力診断を重視するほど、
「あなたの”能力”のせいだ」と
見える力が高まるとも言えます。

個人の責任として断ずるのは簡単ですが、
そうすることで、傷つき、
生きづらくなっていることも
陰の側面としておこっていることもあるはず。


人材開発と組織開発は
切っても切り離せない。

わかりやすく、課題を一つにして、
それだけにしたい、そうして安心したいという
思いはわかるものの、

そうした課題のちゃんぽん、
人と組織の問題があやとりがこんがらがった状態にある
「混沌」とした状況から目を背けず、追求する姿勢。

そうしたものが、
人と組織に関わる人々には求められているのではないか、、、

そんな事を考えさせられました。


ということで、能力診断の歴史、
能力診断のダークサイドを知ることで、
俯瞰してみることができるようになるのだろう、

そのように思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

成功する人間に必要な、生まれつきの能力などありはしない。
ただ、あなたが成し遂げたいことに、必要な能力だけを身につければいいのだ。

ピーター・ドラッカー
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