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4077号 2025年4月24日

利益を高めたければ、「競争の型」と「フィットする理論」を知るべし

(本日のお話 1638字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は3件のアポイント。
また夜は昔からの読書勉強会の仲間との会食でした。
久しぶりにお目にかかれる方もたくさんいて、楽しい時間でした。
(皆さま、ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。
先日から始めました『世界標準の経営理論』の読書レビュー、今日も引き続きお届けしてまいります。

本日は、全40章の中の第4章。ようやく10分の1で、100 kmマラソンでいけば約10 km地点ですね(分かりづらい例えですいません)。マラソンは、コツコツ進めていけば、いずれゴールに着きます。

このボスクラスに分厚い本も読み進めれば終わりにたどり着きます。ということで、引き続き読み解いていきたいと思います。

それでは、どうぞ!

■SCP理論とRBVのおさらい

第4章では、これまで紹介してきた SCP理論 と リソース・ベースト・ビュー(RBV)、そしてもう一つの競争の型について比較しています。

◎「SCP理論」のおさらい

SCP理論は、「儲かる業界」と「儲からない業界」がある という厳然たる事実を示し、なぜその産業が儲かる構造になっているのかをメカニズムとして体系化したものでした。最も重要なメッセージは、完全競争から離れている(=独占に近い)業界ほど安定して収益性が高い という点。
そして企業にとって重要なのは、自社の競争環境をなるべく完全競争から引き離し、独占に近づけるための手を打つことだと述べています。

◎「リソース・ベースト・ビュー」のおさらい
一方、リソースベーストビュー(RBV)は SCP 理論がアウトプット側(製品・サービス)に注目しているのに対し、リソース(人材・技術・知識・ブランド等)そのものに焦点を当てる 点が異なります。
言わば「表と裏」の関係です。ただし、どちらも経済学を基盤にしているため、完全競争から独占へと自社を導くことが望ましい という結論は共通しています。

■両者はどちらが重要か?

結論は 「両方とも重要」です。収益性を一つの要因だけで説明することはできません。ある論文(1985–1991年、米国企業5万8千社を対象に COV 分析)では、企業利益率のばらつきのうち、
――――
産業属性効果:4割(SCP理論的要因)
企業固有効果:6割(RBV的要因)
――――

と報告されています。

■バーニーによる「3つの競争型」

バーニーは、競争には次の 3 つの型があると述べています。

――――
(1)IO 型競争
・産業構造が競争を左右する。
・例:米国のシリアル業界やコーラ業界。大手が広告費を投下し、小売と密接に連携して棚を支配し参入障壁を高める──SCP理論がフィットする。

(2)チェンバレン型競争
・エドワード・チェンバレンの独占的競争モデルに基づく。
・製品差別化が前提で、その差別化の質を競う。
・例:日本国内の自動車メーカー。RBV がフィットする

(3)シュンペーター型競争
・不確実性が高く、予測しにくい環境。
・例:現代の IT 業界(LINE、Twitter、Instagram、Facebook など)。事前計画よりも試行錯誤と環境変化への柔軟対応が鍵。今後紹介される「知の探索・知の深化」「ダイナミック・ケイパビリティ」などが重要。
――――

これらの競争の型を理解した上で「鷹の目を持つことが大事」と述べます。
「自社の業界は、どの型の競争が中心なのかを見極めること」
「どの戦略を考慮するのがフィットするのかを考えること」
そうして「競争の型に合った戦略を組み合わせる」、それが利益最大化の要諦だと述べられています。

■まとめと感想

感想ですが、「理論を知ると企業分析が格段にしやすくなる」と実感しました。

たとえば、最近では大学の授業の準備として、企業分析をChatGPTに行わせてみるのですが、「セレクトショップを展開しているアパレル業界において業界を分析します。SCP理論に基づいて戦略グループを作成してください」「RBVの観点から競合企業を比較してください」とプロンプトを投げれば、より明確な洞察が得られます。

理論は複雑な現状を解き明かすツールのようなものです。生成AI がエージェントとなる時代だからこそ、こうした理論を知ることで、どういったアウトプットがほしいのか、より指示しやすくなるのだろうな、と感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

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