今週の一冊『スイスを知るための60章 エリア・スタディーズ』
(本日のお話 2541字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。
今週の一冊はこちらです。
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『スイスを知るための60章 エリア・スタディーズ』
スイス文学研究会 (編集)
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さて、このシルバーウィークに前後のお休みを少しいただき、
夏休みとして、家族でスイスにきています。(そしてランニングしまくっています。家族を置いて…汗)
私は、さほど旅をしてきたわけでもないのですが、
旅といえば『地球の歩き方』ではないでしょうか。
ただ、昨年デンマークにスタディツアーに行った際に、
それ以上に「これはいいな」と思ったシリーズがあります。
それが、明石書店の「エリア・スタディーズ」シリーズです。
政治、歴史、産業、交通、文学、芸術、食文化など、
その国を形づくっているさまざまなテーマを、
短い章に分けて紹介してくれます。
今回読んだ『スイスを知るための60章』も、
スイスをただ観光地として眺めるだけではなく、
「なぜこの国は今の姿になったのだろう?」と、
一歩踏み込んで知るための、よい案内役になってくれています。
60章すべてをご紹介するのは難しいので、
今回は特に印象に残ったことをいくつかご紹介したいと思います。
それでは、どうぞ!
■「スイス」のイメージを考えてみる
まず、個人的な「スイス」のイメージを考えてみます。
私の場合は、永世中立国、アルプスの少女ハイジ、
マッターホルンをはじめとする雄大な山々。
そして金融が強い、時計が有名、スイスアーミーナイフ、
スイスチーズ、スイス生まれの心理学者ユング…。
……以上。
たぶん言われたら、もっと思い出すのでしょうが、
振り返ってみれば、これまでの半生「スイス」という言葉と
無縁に生きてきました。
今回の旅行も、直前まで仕事だったので、
飛行機に乗るまで宿と行き先しか決めていませんでした。
ただ、実際にその土地を見て、歩きながら読むと、
「なるほど、そういう背景があるのか…」と、
何気ないお店や建造物、鉄道などの背景が、
少し深まるような気がするのです。
すごいぞ、エリアスタディーズ。
■スイスは、分裂と統合の歴史だった
さて、本書の中で興味深かったのが、
「スイスの国の成り立ち」です。
実際にスイスを旅していると、博物館や駅などで、
ドイツ語、フランス語、イタリア語、そして英語が
並んで表示されている場面を何度も目にします。
スイスにはさらにロマンシュ語もあり、
複数の言語・文化圏を抱えています。
今でこそ、それらが共存している姿は
スイスらしさの一つに見えます。
しかし歴史を振り返れば、都市と農村、宗派、地域などをめぐって
数多くの対立があり、国内が分裂しかねない時代もあったそう。
その中で象徴的な役割を果たしてきたのが、
「ウィリアム・テル」の物語です。
(子どもの頭の上に置かれたリンゴを弓で射抜いた話ですね。
それ以外はあまり知らず…)
「英雄物語がある国は不幸な国である」、
つまり、それによって国を結びつける必要性があったとうことですが、
まさにスイスも、テルの英雄物語が建国伝説と結びつき、
「自分たちは何者なのか」という共通の物語をつくる役割を
担ってきたそうです。
ドイツ、フランス、イタリア…
様々な国を跨ってきたがゆえの葛藤を、
この話から想像してしまいました。
■永世中立国と「傭兵」の関係
もう一つ、大変印象に残ったのが「傭兵」の歴史です。
現在のスイスには、平和で中立的な国というイメージがあります。
ですが、歴史を遡ると、15~18世紀ごろのスイスは、
ヨーロッパ有数の傭兵供給地として知られていました。
山が多く、農業や産業だけで豊かになることが難しかった地域では、
外国の軍隊に兵士を送り出すことが重要な収入源になっていたそうです。
時には、異なる国に雇われたスイス人同士が
敵味方に分かれて戦うことさえあったとのこと。
ちなみに、現在もバチカンでローマ教皇を警護しているのは
「スイス衛兵」です。
今回訪れた、チューリッヒのスイス国立博物館では、
甲冑や武器などが数多く展示されていました。
「永世中立国」の背景には、その屈強な強さ
「自分の身は自分で守る」という哲学のようなものがあるのだろうか…、
その実際はわかりませんが、そんな事も考えてしまいました。
■「スイスの銀行」は、なぜ有名なのか
そして、スイスといえば銀行です。
なぜスイスにこれほど金融のイメージがあるのか。
本書を読みながら興味深かったのが、
銀行の守秘義務を非常に重視してきた歴史があった、とのこと。
医師や弁護士と同じように、
銀行員にも顧客情報を守ることが法制度として定められてきたそうです。
その強い守秘の文化と中立国としての立場などが重なり、
海外から資産が集まる背景の一つになってきたそうです。
ちなみに、本書では、先ほどお伝えした
「傭兵として外国へ渡った人々への契約金や年金」など、
大量の資金を扱う必要性も、金融業の発展と結びついていたのでは、
という話も紹介されています。
「金融立国」という現在の姿も、突然生まれたわけではなく、
地理や産業、戦争、国際関係といったものが何百年も積み重なって、
今のスイスにつながっている…なるほどな、と思いました。
国の産業を知ることは、その国の歴史を知ることでもあるのだと感じます。
■スイスとユング、そしてルソー
個人的にもう一つ面白かったのが、
スイスにゆかりのある思想家たちです。
私にとって馴染みがあるのは、カール・グスタフ・ユングです。
MBTIについて学ぶ中でもユングの心理学に触れてきましたし、
入門書くらいですが、読んだこともあります。
今回、チューリッヒ滞在中にランニングをしながら、
ユングゆかりの場所にも足を運んでみましたが、
こぢんまりとした建物を前に、その過去の息遣いのようなものを感じて、
予想以上に感動してしまいました。
*
そして、もう一人がジャン=ジャック・ルソーです。
『社会契約論』という名前は知っているものの、
きちんと読んだことはありませんでした。
ただ、その人が生まれた土地へ来ると、
急に、教科書上の人が「リアルに生きてきた人間」として
身近に感じるのが不思議です。
足を運んで、見聞きする旅とは、自分の興味に血を通わせ、
またこれまで知ってきた知識に場所を与えてくれるような行為なのかな、
と思うのでした。
これを機会に、ルソーについても少し読んでみたいと思います。
■まとめ:旅は自分ごとを広げる機会になる
その他にも本書では、山岳鉄道が発達した歴史、
観光立国としての歩み、チーズやチョコレートなどの食文化、
宗教、スイス最大級の小売企業「ミグロ」の成り立ちなど、
実にさまざまなテーマが紹介されています。
ただ見ているだけではわからない、その背景にある歴史を、
エリア・スタディーズは教えてくれます。
そうすることで、単に「すごい景色だな」で終わらなくなるのが、
本書の魅力だと感じました。
同時に、政治や芸術・美術については、
まだまだわからないし、知らないことも多い。
こうした興味や知識の「穴」にも気付けるので、
こうしたことを含めて、もっと旅先で多くのことに感銘を受けられる、
教養ある人になりたいものだ、そんなことを感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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