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2522号 2021年1月15日

事故受付センターのバイト経験から「熟達化のプロセス」を考えてみた

(本日のお話 3040字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日は終日コーチング研修の実施。

優秀なコーチの皆々様と、
某企業の管理職研修の運営でした。

自分以外のコーチングを見るのは
実に多くの気付きがあります。

学びになる時間でもありました。



さて、本日のお話です。

昨日のコーチング研修にて
「熟達化」について思うことがありました。

本日はそのお話について学びと気づきを
皆様にご共有させていただければと思います。


タイトルは、


【事故受付センターのバイト経験から「熟達化のプロセス」を考えてみた】


それではどうぞ。



■先日のコーチング研修にて、
参加者がこんなコメントを語っていました。


「あいづち、表情、声のトーン。
 質問をして、フィードバックをして。
 
 コーチングって思った以上に
 意識することがあって大変ですね。
 
 一つだけ意識するならよいですが、
 なんだか出来る気がしません(苦笑)」
 
 
…とのこと。



■確かにこの感覚、わかります。

多分、物事を習得するときは
皆同じような感覚、

”コレを意識すると、
 前学んだアレができなくなる”

ということが起こるものですね。


、、、しかしながら、
人は何かしらの分野で

「出来ないと思っていたこと」でも、
少しずつ出来るようになっていき、

いつの間にか「熟達した」というレベルに
到達していることもままあるものです。


では、人の「熟達化」のプロセスとは
いかなるものなのでしょうか?


これを、紐解いてみたいと思うのです。



■私(紀藤)の例で恐縮ですが、

私が昔、コールセンターで
「事故受付センター」のオペレーターの
アルバイトを行っていたことがありました。


「◯◯損害保険、事故受付センターです。
 事故でしょうか?お怪我はありませんか?」
 
 
というような冒頭で始まる
損害保険のサービスとしての初期対応の窓口です。


、、、明らかな危ない事故は
まず警察に連絡がいくものですから、

どちらかというと
「車を擦った」とか「ぶつけた」とか、

そのような小さな事故の類が多かったですが
中には全損でレッカーが必要な場合もあったり

怪我人がいたりする場合もあって
結構ドキドキしながら対応していた記憶があります。



■そんなバイトですが、働き始めた当初、

先輩がヘッドセットで電話の応対をしながら
ものすごい高速でタイピングを進め、

かつ、事故の状況をメモでまとめて、
通話が終わった瞬間に、事故記録が完成していた
(しかも誤字脱字もない)

のをみて、驚愕したことを覚えています。


普通にやっているようですが、

1,無意識でのタッチタイピング
 (かなり高速、かつミスがない)

2,事故で混乱しているお客様へ
  マニュアルにしたがった冷静な対応
 
3,相づち、質問をしながら
  事故記録シートを編集する
 
という、少なくとも3つの技能を
同時進行的で行っていたわけです。


ある意味、職人とも言えるの所業でした。



■ちなみにその事故受付センターは

・お客様への対応のクオリティ
・処理速度(事故記録のまとめ速度)

などを評価指標としてつかっており
それがアルバイトの時給にも反映される

そんな仕組みになっていました。


そして、空いた時間は、
”タイピング早打ちソフト”がPCに入っていて

皆こぞってタイピングの練習をして
タイムアタックをしていたのです。
(そして早い人は崇められていた)


そして、私も空いた時間があれば、
タイピングソフトで練習をし、

その中で案件をこなし続けて、
だんだんと話をしながら事故記録シートも
入力できるようになり、

少しずつ上記の3つの技能、

1,無意識でのタッチタイピング
 (かなり高速、かつミスがない)

2,事故で混乱しているお客様へ
  マニュアルにしたがった冷静な対応
 
3,相づち、質問をしながら
  事故記録シートを編集する
 

を身に付けていった、、、というお話。



■さて、長くなってしまいましたが

私のエピソードは”事故受付対応”における

「熟達化のプロセス」

となります。



ちなみに、「熟達化とは何か?」の定義を見ると
このように表現されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「熟達化」= ある領域の仕事ができるようになっていくこと

・定義:ある領域での長期の経験に基づいて、
 まとまりのある知識・技能を習得し、有能さを獲得していくプロセス

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのこと。

まあ、そのまんまですが、
「その分野で仕事ができるようになる」
ということですね。(本当にそのまんま汗)



■そして、そんな「熟達化」ですが、
以下の2つの熟達者に分けられる、

といわれています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<熟達者の2つのタイプ>

1)定型化熟達者(routine expert)

・決まった手続きを、早く、正確に、
 自動的に行える人のこと

(例/レジ打ち、ラーメンのお湯切り、ガラス細工職人、
   タッチタイピング等)


2)適応的熟達者(adaptive expert)

・変化しうる状況の中で、一定の手続きがない課題に対して、
 柔軟に、確実に対処できる人のこと。
 
(例/為替のディーラー、営業、経営コンサルタントなど)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、職種によって
どんな人が必要とされるは変わります。


ただし、いずれの人も「熟達化」した
何らかのアクションがあるわけです。



■では、それは一体何なのか?


「認知心理学」によると、
次のような答えを出しています。



【ある領域に熟達にするには、長期にわたって

 『注意を必要とする練習』をすること】



、、、である、と。


なーんだ、普通じゃん。
そりゃそうだよね、、、

と思いそうなシンプルなことですが、
物凄く大事なことです。



というのも、人はつい

”ある程度できると、(注意散漫に)
 ただ繰り返すだけになる”

ということが起こり、

”熟達の領域になっていないのに
 低いスキルレベルでこなす”
 
ことがあったりします。


本当は100点、120点を目指せるのに、
70点で赤点にならないレベルで粛々とやり続ける

、、、というように。



■これでは勿体ないのです。


私も自分自身、反省を込めて思います。

メルマガも毎日書いていますが、
ある程度書けるようになると、

惰性で書いてしまいそうになるときも
やっぱりあるのです。


でも、自分のメルマガの力量を
もっともっと伸ばそうとするなら、

それこそ『注意を必要とする練習』が
やっぱり必要になるのです。


いつもと同じやり方ではなく、
(戒めを込めていいますが)


・もっと早くクオリティが高いものを書こう

・もっと比喩、ボキャブラリーを拡げて
 表現力を高めるように書こう
 
・誤字脱字を減らして、改行も気をつけて
 より読みやすいものにしよう


など、考えられる要素は
いくらでもあるわけです。

でも、”惰性”でやってしまうと
回を重ねても、何のレベルアップもしないのです。


ピアノも最近練習していますが、やはり


”『注意を必要とする練習』をする”


ことがなければ、レベルアップをしないし、
むしろ変な癖がついて退化すらしてしまいます。



■そんな事を考えると、

冒頭の「コーチングの技術」もしかり、

コールセンターの「電話応対の技術」もしかり、

日々のメルマガの執筆も、ピアノの練習もしかり、


何かの分野において「熟達化」を目指し
着実に階段を登っていくためには、



【ある領域に熟達にするには、長期にわたって

 『注意を必要とする練習』をすること】



という、このシンプルな認知心理学の黄金律を
頭に刻んでおきたいものだ、

そのように思った次第です。


、、、とピアノを何となく練習していて
「一向にうまくならんやんけ」と自分で疑問に思い、

反省をしてその事に気づいた次第です。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆様にとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

失敗の原因を素直に認識し、
「これは非常にいい体験だった。尊い教訓になった」
というところまで心を開く人は、後日進歩し成長する人だと思います。

松下幸之助(松下電器創業者/1894-1989)

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