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2577号 2021年3月11日

素朴な疑問。上司が何をすれば、「部下の能力」が伸びるのだろう?ー「職場学習」の研究から紐解く

(本日のお話 2445字/読了時間2分半)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は4件のアポイント。
その他、読書など。



さて、本日のお話です。

本日は、「職場学習」というテーマで、
皆さまに学びと気づきをご共有させて
いただければと思います。

それでは早速ですが、
まいりましょう!

タイトルは、

【素朴な疑問。上司が何をすれば、「部下の能力」が伸びるのだろう?
ー「職場学習」の研究から紐解くー】

それでは、どうぞ。

■私が新卒で入社した
ある飲食チェーンの会社にて当時、

「人は仕事によってのみ、成長する。
成長するためには、24時間365日働け!」

と社長が言っていました。

真意としては、

”実際に「働け」というのではなく、
あくまでも気持ちの上でのこと。

ただ、片時も仕事の事を忘れず
常に緊張感を持っていることが大事”

という話。

、、、ただし、
かなりパンチの効いた言葉で、

若かりし自分にも、
脳裏に刻まれた言葉でございました。

■今であればブラックとして
揶揄されてしまう言葉でしょうが、

実際、

「人は仕事によって成長する」

というのは、ある意味、
的を得ていると思います。

(”のみ”かはわかりませんし、
もう20年近く前の話なので、
若干違うだろうな、とも思いますが)

■ただ、なんとなくゆるゆるやっても
成長はありません。

自分が責任を追って、
期待を背負い、
人を巻き込み、
自分の能力をストレッチさせながら
難しいプロジェクトに取り組んでいく、

、、、それは、まさに
「仕事」そのものでは、

と思うのです。

そして、そのプロセスで、
「人が成長する」というのは、

皆さまも、体験的にも
ご理解いただけるところかと思います。

■このように我々が働く

「職場」

とは、お金を稼ぐ、
という場所だけではありません。

人と人が集まり、
他者の支援を受けながら学ぶ個人がいる、

つまり、

”個人が学習する環境でもある”

とも言えます。

そしてこのように、

「仕事の活動と文脈において生じる
人間の変化と成長(Fenwick 2000)」

のことを専門用語では

『職場学習』

といい、様々な研究が進められている
理論的な領域となっています。

■「人は職場で学ぶ」のです。

しかしながら、
考えたいことがあります。

それは”学び”のスピードが
職場ごとに変化があろうこと。

例えば、
あるチームでは、人が成長する。
あるチームでは、あまり成長しない。
こんなことが、
実際に起こっています。

もちろん、

当人の問題、
リソースの問題、
事業の性格上の問題、

様々な要因が絡んでいると思いますが、
「職場学習」の観点から見ると、

実際にどうなのでしょうか?

何が

「人を学び、能力向上させるのか
あるいはさせないのか?」。

■このことについて、

『経営学習論 ー人材育成を科学するー』(著:中原淳)
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9819/

で、ある調査を行ったのです。

どんな調査かというと、

『職場において若手社員は、他者からどのような支援を受けて、
能力向上を果たしているのか?』

という問いに基づくものです。

日本企業に43社につとめる2304名の
28-35歳までの若手・中堅社員を対象に、
調査を行ったのでした。

■すると、
以下のことがわかりました。

まず、

”「他者からの支援行為」には、
以下の3つの種類がある”

ということ。

こんな3つです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<能力向上につながる「3つの支援行為」>

1)「業務支援」…業務に関する助言を行う

・仕事上必要な部門との調整をしてくれる
・自分にはない専門知識・スキルを提供してくれる
・自律的に働けるよう任せてくれる
・自分の目標、手本となっている
・仕事の相談にのってくれる
・仕事に必要な情報を提供してくれる

2)「内省支援」…仕事のあり方を客観的に折りに触れて振り返らせる

・自分自身を振り返る機会を与えてくれる
・自分にない新たな視点を与えてくれる
・自分について客観的な意見を言ってくれる

3)「精神支援」…精神的な安息を提供する

・仕事の息抜きになる
・精神的な安らぎを与えてくれる
・プライベートな相談にのってくれる
・心の支えになってくれる
・楽しく仕事ができる雰囲気を与えてくれる

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とのこと。

■そして、もう1つ、わかったこと。

上記の3つの支援行為が、

・誰から
・どの種類(1~3)が提供されると、

能力向上に影響があるのか?

ということ。

■、、、そして、
この問いの結果が実に面白い。



まず、上司。

皆さんにまず、ご質問です。

「上司が部下に対して
1)業務支援 2)内省支援 3)精神支援
どれを行うと、部下の能力向上に繋がるでしょうか?

少し、考えてみてください。

、、、

、、、

さて、いかがでしょう。

、、、結論ですが、

『上司は部下に、
「3)精神支援」と「2)内省支援」

を行うと、部下の能力向上に影響を与える』

ことが

データの分析結果により
わかりました。

■この事実、興味深くないでしょうか。

ゆえに、注目したいのです。

なぜかというと、
実際のところ、多くの職場において
上司は部下に

「1)業務支援」
(仕事の業務上の事の相談のみ)

はしている。

しかしながら、

「3)精神支援」
(仕事の息抜き、心の支え)

「2)内省支援」
(仕事を振り返る機会)

を意図して設けている人が
結構、少ないように感じるのです。

(皆さまの職場ではいかがでしょうか)

■この結果を見ると、

現在各企業で取り組まれている
「1on1」や「コーチング」も
有効な施策であると言えますし、

そして、

「部下に対して上司である自分は
”内省支援や精神支援”を行っているか?」

という問いを持つことは、

部下の能力を伸ばすための、
重要な上司の役割である、

とも言えるでしょう。

■ちなみに、その他の
「職場の人」の関わりもまとめると、

”職場における他者からの支援と「能力向上」の関係”

とは以下のようになります。

◯上司 → 内省支援・精神支援 が有効

◯同僚・同期 → 内省支援・業務支援 が有効

◯上位者(先輩)→内省支援 が有効

■ここから読み取れることは、

1,上司も、同僚・同期も、上位者も、
能力向上には「内省支援」がもっとも大事

2、上司は、「内省支援」と「精神支援」を
提供すること

3、「業務支援」は、同期・同僚から

こういった支援の布陣により、
能力向上が促される、

となります。

■人は重要な資源です。

人の力は、チームの力。

そして成果に繋がる
最も重要な要です。

ゆえに、人が職場で学び、
能力を向上させるために、

一つの仕組みとして
「能力向上に資する支援」という観点の

上記の事実を理解しておくと、
役に立つだろう、

と思います。

上司の皆さまはぜひ、

「精神支援」
「内省支援」

に注目してみてくださいね!

部下が伸びるはずです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

自分には確かな居場所がある。
自分を必要としてくれる場所がある。
その安心感があればこそ、人は強く生きられるのです。

ドロシー・ロー・ノルト(米国の教育学者/1924-2005)

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