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2774号 2021年9月25日

学びを駆り立てる2つの不安 ー学習不安と生存不安ー

(本日のお話 2558字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日金曜日は、3件のアポイント。
また大学院の秋学期が始まりした。
これから忙しくなってきそうです。



さて、本日のお話です。

「学びが大切」。
このことは多くの人が
理解していることかと思います。

ですが、実際学ぶ人、
学ばない人がいますし、

「何が学習に駆り立てるのか?」

はなんとなく、
ふわっとしているようにも思います。

今日はこの
”学習に駆り立てるもの”について
とある論文を紹介しつつ

皆さまに学びの共有を
させていただければと思います。

それでは、まいりましょう!

タイトルは、

【学びを駆り立てる2つの不安 ー学習不安と生存不安ー】

それでは、どうぞ。

■「100年時代」とか
「VUCAの時代」とも言われる今、

”学ぶこと”

は子供だけでなく、
私たち現役の大人世代にも
求められているように思います。

リカレント教育、
大人の再教育が大事、

というのも耳にしますね。

■しかし、現実問題
周りを見渡してみると

・積極的に学ぶ人
・焦りを感じつつも学びのアクションを起こさない人
・「ま、大丈夫っしょ」と学ばない人

などいくつかパターンがあるようです。

■では、この

学ぶor学ばないという違いは
どこから生まれてくるのでしょうか?

この「学習の心理学」について
組織行動学の世界的権威である
エドガー・シャイン氏は

『The Anxiety of Learning』(HBR、2003年3月)

にて、こんなことを語っていました。

それは、

「あらゆる学習は
基本的に強制的なもの」

「人は不安を感じた時に
学ぶものである」

なる学びに対して
悲観的とも感じられる言葉です。

■ちなみに、

シャイン博士は上記の理由について、
以下のように語りました。

(以下引用です)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Q、あなたは、学習とは
ー個人にとっても組織にとってもー
苦痛と強制に基づくものであるとほのめかしているように見えます。
本当にそう思われているのですか?・・・

(シャイン博士)

あらゆる学習が基本的に強制的なものであると考えています。
なぜなら、既存の何かを新しいなにかに置き換えるために学習するのは
そもそも苦痛だからです。 ・・・

Q、ずいぶん悲観的に聞こえますね。
そこまで血と汗と涙を流さなくとも、うまく学習を促す方法は
存在しないのでしょうか。

(シャイン博士)
ありません。
というのも、学習にはある逆説が不可避だからです。

すなわち、”不安感が学習を抑制する一方、
学習には不安感が必要だから”です。

(中略)

学習に伴う不安感には二種類あります。

『学習不安』と『生存不安』です。

だれでも何か新しいことを試すとき、
難しすぎるのではないか、
ばかみたいに見られるのではないか、
これまで機能してきた習慣と決別しなければならないのか
といった恐怖を感じて躊躇するものです。
これが『学習不安』です。・・・

いくら説得しても人々から学習不安を取り除くことはできません。
それは変化に抗おうとする人間本来の基本特性だからです。

こうした不安感の強さを考えると第二の不安感、
つまり『生存不安』、ー生きていくためには変わらなければならないという恐ろしい現実認識ー
を感じない限り、だれも新しい何かを試そうとはしないでしょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■さて、いかがでしょう。

要点は

・人は基本的に変化に抗おうとする生き物。

・ゆえに、これまでの習慣と決別したり、
新しいことを学ぶことへの抵抗感はある。

・つまり「学習不安」は消すことはできない。

という話。

、、、では、どんな時に
人は学ぶかというと

”「このままだと生き残れない」という
「生存不安」を感じた時に、人は学習をする”

というわけです。

■うーん、なるほど、、、。

「生存不安」が高まらないと、
人は学ばない。。。

しかし、私(紀藤)自身振り返って
「まさにそうだな」と思いました。

以前、勉強熱心な友人と

「なぜ自分たちは学ぶのだろうか?」
という話をしたときに、その結論は

「危機感である」

という結論に至ったことを
思い出しました。

■なぜ危機感を感じるかと言うと、

・自分自身がビビリである
・根がネガティブである
・実は自分に自信がない

等の、個人特性もあるかもしれませんし、

・現状を理解すると危機感が芽生えざるを得ない
・日本の未来を想像すると、リスクが見える

という、外部情報を得たことかもしれません。

しかし、どんな要因にせよ、

・今の環境、人材開発・組織開発の世界も
どんどん変化してきている。

・イベント(単発研修)から
プロセスラーニングへ変わっている

・情報を伝えていくような導管モデルから双方向の対話。
アナログからデジタルへの対応が必要になっている

・人と組織の専門家にならなければ、
これから淘汰されてしまうのではないか

という「不安」が、
自分を学びに駆り立てているということは事実。

ゆえに、大学院も受験し、
学びを進めていたりします。

■このことを、
シャイン博士の言葉を借りれば、

「基本的には、
生存不安が学習不安より大きい時、
初めて学習が生まれる」

とのこと。

そう、

【生存不安 > 学習不安】

となったときに、学習は起こるのです。

上記の私の例は、

「このままだと将来、
食いっぱぐれるかもしれない。ヤバイ」
(=生存不安)

という気持ちが

「新しいこと学ぶの、
難しそうだし億劫だなあ…」
(=学習不安)

を上回っているから、
「学習」が起こっています。

■ただ、上記をもう少し紐解くと、

「学習を起こすための
2通りのアプローチ」

があることがわかります。

1つ目は、

『「生存不安」を煽り、大きくする』

こと。

例えば、

・「このままじゃ生き残っていけない」と
危機意識を植え付ける

・「勉強しないと来期、君の席はない」と
不安を駆り立てる

・「成果を出さなければ、給与を下げる」と
告知する(脅す)

みたいなこと。

「生存不安」を大きくして、
学ばないとヤバイ…と
駆り立てるわけです。

しかしながら、これ、
あんまり健全ではありません。。。

■では、どうすればいいか。

そのために2つ目の方法、

『「学習不安」を小さくする』

ことです。

例えば、

・自分の上司が、ガンガン
新しいことにチャレンジしている。

・60歳になる先輩が、AIやテクノロジーを
セロから学び始めている。

・会社全体で、読書会を行ったり
新しいツールを使う方法をディスカッションしている

としたらどうでしょう。

「生存不安」を高めずとも、

学ぶことへの抵抗感をへらす。

つまり「学習不安」を小さくすることを
組織として意図的に生み出す、

あるいは個人としても、
学びの環境に積極的に身を置くことで、
「学習不安」を意図して小さくすることは可能そうです。

■繰り返しになりますが、

これからの時代、
既存の知識がどんどん
役に立たなくなっていきます。

それは間違いなく、

「学び続けること」

は今後、必須の姿勢になるはず。

ただ、今回お伝えした通り、
「学び」には「不安」がつきものなのです。

ゆえに、

「不安が学習を駆り立てる」

というメカニズムを理解した上で、

1)「生存不安」を適切に感じる

2)「学習不安」を理解し、学びへの抵抗感を減らす環境づくり

等を工夫し、健全かつ楽しみながら
学び多き人生を過ごしたいものだ、

そんなことを思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

鳥が大気の抵抗に逆らって飛び立つように、
逆境に挑む力こそが、人間を飛翔させるのだ。

ロア=バストス(パラグアイのジャーナリスト/1917-2005)

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