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3523号 2023年10月17日

1000名に聞きました!『強みの活用と、生産性・組織市民行動・満足度』のつながりとは?

(本日のお話 2576字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日月曜日も宮崎にて。

また午後はお休みをいただき、
家族でゆるりと過ごしました。

本日東京に戻りますので、
アクセルを踏んで参りたいと思います。



さて、本日のお話です。

今日は「強み」について、
ある論文をご紹介させていただければと思います。

今日ご紹介する論文は「強み」に関する
ある意味、王道(!?)的な内容です。

しかし、

「強みって美味しいの?
(=強みを活用すると、組織にとって、
  なんかいいことあるの?)」

という疑問に、率直に応えてくれる定量調査です。

ということで、早速まいりましょう!

タイトルは



【1000名に聞きました!『強みの活用と、生産性・組織市民行動・満足度』のつながりとは?】



それでは、どうぞ。



■今日ご紹介する論文は、


『より良い自分(My Better Self):職場での強みの活用と、仕事の生産性・組織市民行動・満足度』

Lavy,Shiri, and Hadassah Littman-Ovadia(2017)
“My Better Self: Using Strengths at Work and Work Productivity, Organizational Citizenship Behavior, and Satisfaction.”
Journal of Career Development 44 (2): 95–109.

というタイトルです。



■本論文では、

クリフトンストレングス、VIAなどに代表される
性格特性的強みが、

ポジティブ感情、幸福度の向上、
抑うつの抑制、自尊心の向上など、

”人間の繁栄に役立つ”ことは
示されてきた一方、

多くの論文において

”現代生活において
 重要な領域である「職場」における
 仕事機能への影響はほとんど研究されていない”

と問題提起します。

(あるいはあってもイスラエルの
 85名を対象とした少数のサンプルしかない
 ※2017年当時)


■そして、これまでの研究では

・「強みを活用」すると「ポジティブ感情」が高まることがわかった

・ポジティブ感情の拡大理論(ブロード・アンド・ビルド理論)により、
 「ポジティブ感情は人々の思考と行動のレパートリーを拡げる」(Fredrickson,2001)
 
ことがわかったとします。

 ※こちらの記事もどうぞ
  ↓↓
 ポジティブな感情は拡げて築く!「ブロード・アンド・ビルド理論」
 https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4614683/
 
  

それらのことから考えると、

強みの活用はポジティブ感情が高め、
ポジティブ感情によるブロードアンドビルド理論により、

生産性、組織市民行動、職務満足度、エンゲージメントにも
影響があるのではないか、

と考え、以下の仮説を立てました。

**

仮説1:仕事における「強みの活用」は、生産性、組織市民行動、職務満足度と関連する。

仮説2:仕事における「強みの活用」が、生産性、組織市民行動、職務満足度に及ぼす影響は、
   (a)より高いレベルのポジティブ感情、(b)より高いレベルのワーク・エンゲージメントによって媒介される。

**

とのこと。



■そして、

強み診断の「VIA」のサイトを通じて、
研究への参加者を募りました。

「参加者数」は、合計1095名。

女性が888名、男性が207名と女性が多数で、
約90%の方がフルタイムの雇用者でした。

「参加者の職種」は、
教育職(23.8%)、 管理職(15.7%)、
セラピー、カウンセリング(14.5%)、
自由業(弁護士、会計士、エンジニアなど:9.1%)、
行政や人事(7.7%)でした。

「参加者の居住大陸」は、
北米(57.9%)、ヨーロッパ(17.2%)、オーストラリア(9.6%)、
アジア(8.3%)、南米(4.7%)、アフリカ(2.5%)でした。



上記の対象者を募り、
そして、以下の質問について回答をしてもらい
それを多重媒介モデルなる研究手法で分析したとのこと。


質問項目は以下の通りです。


◯「強みの活用」(14項目)
・Govindji and Linley(2007)のStrengths Use Scale
 (例:私の仕事は、強みを生かす機会をたくさん与えてくれる)

◯「仕事の生産性」(7項目)
・Williams and Anderson(1991)の役割内行動の尺度
 (例:私は与えられた職務を適切に遂行する)

◯「組織市民行動」(16項目)
・Lee and Allen'S(2012)を活用
 (例:仕事または仕事以外の問題を抱えている他人 を助けるために時間を割いた)

◯「職務満足度」(5項目)
・Andrews & Withey(1976)を用いて評価
 (例:仕事についてどう感じているか)
 
◯「ワークエンゲージメント」(9項目)
・Schaufeli, Bakker, & Salanova(2006)のユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度9項目バージョン 
 (例:仕事に熱中している)

◯「ポジティブ感情」(10項目)
・ Watson, Clark, & Tellegen,(1988)のPositive and Negative Affect Scales (PANAS)の陽性尺度で評価。


そして、上記の仮説1と2について
検証をしたのでした。



■その結果、


「仮説1、2ともに支持された」


のでした。


具体的には、

仮説1:仕事における「強みの活用」は、生産性、組織市民行動、職務満足度と関連する。

について。

それぞれの項目の相関は、

・「強みの活用」と「生産性」:.32***

・「強みの活用」と「組織市民行動」:.32***

・「強みの活用」と「職務満足度」:.42***

となりました。

(※また仮説に含まれていませんが、
 強みの活用は、エンゲージメントとも、.47*** で相関がありました) 


次に、

仮説2:仕事における「強みの活用」が、生産性、組織市民行動、職務満足度に及ぼす影響は、
   (a)より高いレベルのポジティブ感情、(b)より高いレベルのワーク・エンゲージメントによって媒介される。

ですが、

<直接的な経路>としての影響は、
仮説1でお伝えした通りで

・「強みの活用」→「生産性」「組織市民行動」「仕事満足度」(「ワークエンゲージメント」)

という影響がありました。

次に

<間接的な経路>として、
仮説2での検証で語られる以下のモデル、

・「強みの活用」→『ポジティブ感情』→「生産性」「組織市民行動」「仕事満足度」

・「強みの活用」→『ワークエンゲージメント』→「生産性」「組織市民行動」「仕事満足度」

が支持されることがわかった、

とのこと。



■上記結果を見たとき、

この研究手法(多重媒介モデル)が
よく理解できていないので、

完全には掴みきれていないのが
正直なところではありますが、


・「強みを活用すること」と
 「ワークエンゲージメント」「ポジティブ感情」は相関がある

・「強みを活用すること」と
 「生産性」「組織市民行動」「仕事満足度」も相関がある
 

このことを、
1000名の様々な国、対象者をサンプルに行い
理解ができたことは、

「職場において「強みを活用する」ことの有用性」

(強みって美味しいの?
 強みを活用すると、組織にとって、なんかいいことあるの?)
 
について、一つの答えを提供してくれるとも思えます。



■こうした研究が、

もっともっとたくさん出てくると、
「強みの活用」もより多くの市民権を得られるようになりそうだな、

そんな事を思った次第です。

まだまだ強みについても
掘りがいのある論文がたくさんあって、
お宝マイニングをしている気分。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

強みのみが成果を生む。弱みはたかだか頭痛を生むくらいのものである。
しかも弱みをなくしたからといって何も生まれはしない。
強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない。

ピーター・ドラッカー
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