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4363号 2026年2月4日

「誰を、いつ、どう選ぶか」。昇進のメカニズムを解き明かす ー第8章 昇進管理ー

(本日のお話 3154字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日もストレングス・ファインダー研修の実施でした。

先週から今週まで、「強み」に関する研修が合計5日間あり、
大変ありがたいな…と思っております。

ただ「強み」を活かしましょう、ではなく、
その反対の「強みが過剰に出てしまうとき」「弱み」なども
バランスよく見ていく必要性も、個人的には少しずつ高まっているような気もしています。

ただのお題目ではなく、人や組織に活力を与える一つの方法として、
今後も探求していきたい、そんなことを感じております。



さて、本日のお話です。

毎月、外部人事パートナーとして関わらせていただいている企業様との勉強会で読み解いている『人事管理入門』
本日は、多くの組織で働く人が関心をお持ちであるテーマ、「第8章 昇進管理」についてお届けします。

さて、「昇進」と聞くと、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?

「課長や部長という肩書きがつくこと」という役職のイメージが強いかもしれませんが、実は人事管理における昇進は、もっと多層的で、組織の意欲をコントロールする高度なシステムとして発展してきました。

読みながら、日本の昇進システムがどのように出来上がっているのか、その背景も含めて大変理解が進みました。ということで、早速中身を見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!

■1. 「昇進」の正体:役職・職務・資格の違い

まず、私たちが一口に「昇進」と呼んでいるものの正体を整理しましょう。人事管理では、昇進を以下の3つのルートで区別して考えます。

・役職昇進:企業内の管理階層(課長、部長など)の序列を上がること。
・職務昇進:仕事の内容(難易度や責任)を評価し、その職務の序列を上がること。
・資格昇進(昇格):社員が保有する「職務遂行能力」に基づき、社員格付け(資格等級)を上げること。

日本企業では1970年代半ばまで、ポストに就く「役職昇進」が中心でした。

しかし、ポストには限りがあります。
昇進機会が減り、社員の意欲が下がるのを防ぐために導入されたのが、役職と資格を緩やかに連動させた「職能資格等級制度」です。

これにより、ポストが空いていなくても、能力が高まれば「昇格」し、基本給(職能給)を上げることが可能になりました。
つまり、昇進の定義を広げることで、社員のモチベーションを維持しようとしたわけです。

■2. 競争のメカニズム:トーナメントか、敗者復活か

次に面白いのが、「選抜のプロセス」です。企業が社員をどう絞り込んでいくかには、大きく分けて3つの移動モデルがあります。

・⑴ 庇護(ひご)移動:早期に少数のエリートを選抜し、特別な教育を施すモデル。
・⑵ トーナメント移動:キャリアの各段階で選抜を行い、一度でも負けたら次の競争に参加できない「早い選抜」。
・⑶ 競争移動:キャリアの後半まで全員にチャンスが開かれており、敗者復活も可能なモデル。

日本の大企業は、伝統的にこの「競争移動」に近い形をとってきました。小池和男氏はこの方式を「遅い選抜方式」と名付け、日本経営の合理性を説明しました。

■3. 日本独自の「遅い選抜方式」とその合理性

「遅い選抜」とは、具体的にどれくらい遅いのでしょうか?

データによると、アメリカやドイツでは入社後4年弱で昇進に差が付き始めますが、日本は平均7.85年かかります。
さらに、「昇進の見込みがない人」が5割に達する時期は、欧米が10年前後であるのに対し、日本は22.30年です。

つまり、日本の社員は30代後半まで「自分もまだ上を目指せる」という期待を持ち続けられるのです。
これには明確なプラスとマイナスがあります。

◯【プラスの機能】
・モチベーションの長期維持:決定的な選抜を遅らせることで、多くの社員が長期間、能力向上への意欲を持ち続けられる。
・評価の適正化と納得感:短期間の評価で決めつけず、複数の上司による長期的な評価データが蓄積されるため、選抜結果に対する社員の納得感が高まりやすい。

◯【マイナスの機能】
・幹部育成の遅れ:経営トップや部門長を育てるのに膨大な時間がかかり、若手の抜擢が難しい。
・教育投資の非効率:全員を「遅く」選抜するため、少数のエリートに資源を集中投下できず、教育投資が分散してしまう。
・過度の競争ストレス:長期間にわたり同期との微妙な差を意識し続ける競争状況が、社内に過度な緊張感を生む可能性がある。

■4. 昇進システムの存立条件が揺らいでいる

しかし、この「遅い選抜」も今、転換期を迎えています。
なぜなら、このシステムを支えてきた条件が失われつつあるからです。

・⑴ 昇進確率の低下:企業の成長鈍化や組織のフラット化により、役職ポストそのものが削減されている。
・⑵ 能力伸長のバラツキの拡大:大卒採用の増加により、入社時点での潜在能力や訓練可能性のバラツキが以前より大きくなっている。
・⑶ キャリア志向の多様化:男性社員も含め、同期横並びの意識や役職昇進への志向が弱まり、専門職志向や私生活重視の傾向が強まっている。

これに対応するため、企業は「抜擢人事の実施」や「役職定年制によるポストの回転」など、昇進ルールをよりメリハリのあるものへ変えざるを得なくなっています。

■5. 専門職制度の「新旧交代」:処遇から活用へ

昇進の複線化として期待される「専門職制度」についても、非常に重要な指摘がありました。かつて1970〜80年代に導入された「第1世代の専門職制度」は、実は多くの問題を抱えていました。

◯第1世代の課題
ライン管理職のポスト不足を補うための「処遇用ポスト」としての性格が強く、実態は「管理職不適任者」の受け皿のように見なされることもあった。結果として、専門職に配属された社員の意欲低下を招いていたのです。

今、求められているのは「第2世代の専門職制度」とされます。

◯第2世代の特徴
単なる処遇のためではなく、経営環境の変化に対応するための「高度な専門能力の有効活用」を目的とする。

◯適性発見期の設置
入社後の一定期間を「適性発見期」とし、マネジメントに適した人材はラインへ、特定の職能で専門性を活かす人材は専門職へ、と本人の適性を見極めてからコースを選択させる仕組みが望ましいとされています。

■6. ポジティブアクション:性別職域分離をどう解消するか

最後に、現代の昇進管理において避けて通れないのが「女性管理職の拡大」と「ポジティブアクション」です。
日本の管理職に占める女性比率は徐々に上昇していますが、部長級で見ると依然として極めて低い水準です。

背景には、妊娠・出産での退職だけでなく、「性別による職域分離」という構造的な問題があります。
女性が配置される仕事が補助的なものに偏り、管理職へつながる基幹業務(例:営業の現場経験など)を経験する機会が少ないことが、昇進を阻んでいるとのこと。

ポジティブアクションを実効性のあるものにするためには、単に「数を増やす」だけでなく、以下の5つの視点が必要だと本書は説きます。

◯<ポジティブアクションのための5つの視点>
・⑴ 阻害要因の解消:昇進・昇格の運用面で、無意識に女性の推薦を避けるような傾向がないかを見直す。
・⑵ 能力開発の機会提供:これまで男性に偏っていた営業業務などに女性を積極的に配置し、必要な教育訓練を行う。
・⑶ ロールモデルの提示:女性管理職が自律的にキャリアを描けるよう、モデルとなる先輩を示す。
・⑷ 両立支援策の充実:育児や介護に直面しても、キャリアを中断せずに済む仕組みを整える。
・⑸ 意識改革:経営トップや管理職が持つ「男女の役割分担意識」を払拭する。

■まとめと感想

本章を読み終えて感じたのは、昇進管理とは単なる「ご褒美」の分配ではなく、「社員のキャリアの可能性をどこまで信じ、どう引き出すか」という経営思想であるということでした。

日本の「遅い選抜」は、これまで多くの社員を「脱落」させずに走り続けさせる仕組みでした。
ただ、読書会でも「遅い選抜」によって、いつまでも”塩漬け感”が違和感があるという声や、能力がある人ほど早く機会を与えられる環境に飛び出してしまう、という話も出てていました。

改めて、こうした葛藤を感じるたびに(これまでも言われていることではありますが)時代は変わっており、それに合わせて仕組みも変えていく必要があるのだな…そんな事を考えさせられた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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