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719号 2016年2月2日

信頼のリセットボタン

(今日のお話 2339文字/読了時間2分半)
■おはようございます。紀藤です。

昨日は4件のアポイント。
来年度の研修計画、また次世代育成などについて、
お客様とディスカッションでした。

”リーダーシップ”や”主体性”は、
確かに大切で必須だけれども、
何となくフワフワしていて見えづらいもの。

また、いかにして研修で、

”『知っている』ことを『している』”にするか、

これは人材育成の最大のテーマなのだろうと実感。

そして、だからこそ、私の介在価値があるのだろう、
と改めて気持ちを強くした次第。

私の中の結論(持論)はありますが、
これまた長くなりそうなので、
またの機会にお伝えさせていただきたいと思います。

■さて、本日のお話です。

少し前からちょっとずつ読み進めていた
『運命の人』(著:山崎豊子)が、
ようやく読み終わりそうです。

ドラマや小説を通じてご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
『運命の人』は、沖縄返還時の日米密約を題材に、
国家権力とジャーナリズムの戦いを描いたものです。

山崎氏の綿密な取材により、
実際にあった史実を元に描かれた社会派長編小説。

ですが、この小説の凄いところは、
歴史や社会問題を考えるだけでなく、
その中で描かれる”人間模様”が非常に考えさせられるということ。

今日はこの小説から

「信頼の儚さ」、

について、私自身、戒めと感じたことを、
皆様にも共有させていただきたいと思います。

それではどうぞ。


■『運命の人』で、こんなエピソードが描かれます。
(ネタバレがあります。
 差支えがある方は、お読み飛ばし下さい)


~~~~~

特ダネ記者である毎朝新聞政治部の弓成亮太は、
大詰めとなった沖縄返還の取材中に、
日米間で進められている密約の存在に気付く。

激しいスクープ合戦の中、
弓成記者は証拠となる機密文書を
外務省事務官の三木昭子から入手する。

この二人は関係が深く、男女の仲でもあった。
事務官の三木は、弓成記者に協力的で、
「なんとかこの記者の為に役に立ちたい」そう思っていた。

ところが、外務省事務官の三木から
弓成記者に渡された重要な機密文書が
ふとしたことをきっかけで明るみに出てしまった。

これによって、重要な問題として、
国会でも取り上げられ、事態は戻れなくなった。

この沖縄返還のプロジェクトは、
当時の田淵角造首相の、
集大成ともいえるプロジェクトであったため、
弓成記者、ならびに三木昭子事務官は、
政治的な恨みを買うこととなる。

その結果、検察からこの2人は、
「機密情報漏洩」の罪で訴えられることになる。



新聞記者は、情報のソース元は必ず守らなければならない。

弓成記者は使命感を持ち仕事に臨み、
そして三木という情報ソース元も守るという気概で挑んでいた。

しかし、その想いとは裏腹に、不運にも、
情報ソース元である三木が訴えられてしまうという、
形になってしまった。

~~~~~

そして、話はこう続きます。

~~~~~~

この事件を詫びるために、
弓成記者が三木昭子事務官の元へ訪れた。

「すまない」と、
弓成記者は心から申し訳ない気持ちで詫びを入れる。

しかし、三木事務官の言葉は、このような内容だった。

『私たちの信頼関係は、あの瞬間に終わったの。
 もう、関わらないで』

そして二人は二度と、
言葉を交わすことも、目を合わすこともなく、
裁判で被告人として並ぶ関係だけになってしまった。

~~~~~


と、こんなお話でした。


■このシーンを読んでいて、強く思ったこと。

それは、

”信頼”とは非常に脆く、儚く、
壊れやすい繊細なものである”

ということでした。

弓成記者は悪気があったわけではない。
寧ろ、三木を大切に考えていた。

しかしながら、たとえ、

相手のことを大事に思っていたとしても、
共に歩んできた時間があったとしても、
親しい間柄だった思っていたとしても、

「絶対やってはいけない、信頼の損失たった1つ」
によってその”信頼関係”が一瞬にして壊れることもある、

そんなことがあると、知らしめられた気がしたのです。

(もちろん、男女の関係ということもありますが、
 それは一旦置いておきます)

と、考えると、

”信頼”とは、まるで浜辺に作られた砂の城のように、
時とそして一瞬にして流され、消え失せてしまう、
そんな性質を持つもの、

と言えるのでないだろうか、
『運命の人』の2人の人間関係を見て、

そのように感じたのです。


■「7つの習慣」でも、
”信頼の原則”について語っています。

それを『信頼残高』と表現しています。

私たちは見えない銀行口座のような、
『信頼残高』というものを持っている。

信頼を得る行為をすれば、「信頼の預け入れ」になり、
信頼を失う行為をすれば、「信頼の引き出し」になる。

そんなイメージで、”信頼”という見えない貨幣が、
増えたり減ったりする、というのが信頼の特徴である、

というわけです。

そして恐ろしいのが、
信頼は次のような特徴を持つ、ということ。

「もし、たくさん信頼を「預け入れ」したとしても、
 信頼の「引き出し」をしたときインパクトの方が、遥かに大きい」

ということなのです。

信頼を積み重ねるための行動、
例えばありがとう言う、相手の期待に応える、
約束を守る、プレゼントをする、などが「+1」だったとしたら、

約束を破る、相手を無視する、
相手をぞんざいに扱う、などをした事は、
「―(マイナス)3」ほどのインパクトを持ってしまうわけです。
(約3倍のネガティブな破壊力(!)です)

そして、もし仮に、

「絶対踏んではいけない地雷」を踏んでしまったとしたら、
相手の心に彫刻刀で掘ったような深い傷をつけてしまったとしたら、

恐らく、それは「- 3」どころではなく、

「―(マイナス)100」、または
「―(マイナス)1000」、はたまた
「―(マイナス)10000」もの、

一生かかっても返済しきれないほどの負債を持ち、
二度と関係は修復不能になることだってあり得るわけです。


■そのように考えると、
人間関係と言うのは、非常に繊細であるとともに、
常に真剣に誠実に向き合わなければいけないのではないか、

そんなことを思うのです。

感情的になった時、つい言ってしまいそうになる一言。
仲が良いからこそ、働いてしまいそうになる無礼。
親しいからこそ分かる、相手の弱点。

そんな「誘惑」が仮に頭をよぎったとしても、
下手をすると、その一瞬が「信頼のリセットボタン」になるかもしれない、

そんな風にも考えられます。

私も、自分の考えに固執するあまり、
関係各所に迷惑をかけてしまったり、
相手の気持ちを汲み切れなかったりすることがままあります(恥)。

ですが、弓成記者と、三木事務官のように、
大切な関係に、一瞬でリセットボタンを押してしまうような、

大きな愚だけは犯さないように、常に心しておかねばならない、

そう、強く自戒した次第です。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今日も、皆様にとって素晴らしい1日になりますように。

【本日の名言】 足を滑らせてもすぐに回復できるが、
口を滑らせた場合は決して乗り越えることはできない。

ベンジャミン・フランクリン

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