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1827号 2019年2月18日

今週の一冊『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』

(本日のお話 2564字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、ムエタイジムでスパーリングなどを含め10ラウンド。
その後、ストレングスファインダーのコーチ仲間とともに勉強会でした。

企業後、色々なワークショップなどに、頻繁に参加しますが、
その中でも、このストレングスファインダーの仲間たちは特に貴重。

”違う組織に所属しているけれど、同じ志を持つ仲間”というのは、
人生の中で本当に重要なものになるだろうと感じる今日この頃。

もっと大切にしていきたいと思いますし、
私自身も渦をまいて、そういった繋がりを作っていきたいと思います。



さて、本日の話です。

毎週日曜日は、オススメの一冊を紹介する「今週の1冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』
(著:北野唯我)


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です。


■タイトルから、一体どんなことが書かれているのだろう、
と疑問に思ってしまうような意味深なこの本。

しかし、

「非常に深くて、学びの多い一冊!」

この一言に突きます。

リーダーシップとか、人間関係の本というと、

・相手の話を聞く
・傾聴が大事
・自分から動くこと
・ビジョンを持つこと

というような、乱暴に言ってしまえば、
「手垢のついたテーマ」が多い中で、
この本は別の”質”を持つ本です。

あえて言葉にするのであれば

”「集団心理(=天才が凡人に殺されてしまうロジック)」と、
 「人間の才能(=天才・秀才・凡人の3種類の特質と役割)」という、
 これまでにない切り口で、人と組織を考察した社会心理学的な本”

と言えるかもしれません。


■、、、などと、逆に私がよくわからなくしてしまいましたが(汗)、
内容は非常にシンプルなストーリーです。

以前、ドラマにもなった『夢をかなえるゾウ』のような、
そんな親しみを持てる小説仕立ての本です。

「90分で読める」のがウリ。
しかし、その内容は実に深い。
このギャップがたまりません。


ちなみに、Amazonの本の紹介では、以下のように説明されています。
(以下、引用です)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あなたは凡人?秀才?それとも天才?公開瞬く間に30万PVを超えた、
大人気ブログ「凡人が、天才を殺すことがある理由。」が物語となって書籍化!

<ストーリー>
天才肌の女性創業者社長に惚れ込み、起業に加わって10年。
会社は大きくなったが、新事業は振るわない。
「社長は終わった」などという声も聞こえてくる――。

そんな悩みを抱える広報担当の青野トオルは、謎の犬ケンと出会う。
関西弁と東北弁がまざった珍妙な言葉を使うケンは、トオルの疑問に当意即妙に答えていく。

人間の才能とは何か、なぜ人はすれ違ってしまうのか、
私たちは自分の中にどのように才能を見い出し、どうやって伸ばしていけばいいのか。
今最も注目されるビジネス作家が90分で読める物語にまとめた、超・問題作!

※引用:Amazonブックレビューより
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とのこと。


■天才=女性創業社長。
秀才=切れ者の役員。
凡人=主人公・青野トオル。

この3種類の人間
「天才・秀才・凡人」が織りなす組織の未来は?

それぞれ考えの特質、力の発揮の仕方、

”天才・秀才・凡人の価値観と戦い方の違い”

の中で、

「どのように天才が葬られていくのか?」
「凡人が持つ最強の武器とは何か?」
「秀才が活躍するフィールドとは?」

等々の、人間関係の悩みと、
組織における自分の活かし方を、
見事に書き表した小説兼ビジネスなのです。


■人は感情の生き物。

そして、その考え方の対立によって、
衝突し、葛藤し、戦争すら起こってきました。

ゆえに歴史の中でも、”少数の天才”が、
その創造性ゆえに大衆に理解されず、葬られてくることも、
いくつも起こってきました。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズが、
自分が作った会社を追いやられ一度離れることになった、
という有名な話がありますが、

それも天才の独創性が理解されず、

「天才が凡人に殺された(殺されそうになった)」

エピソードの一つかもしれません。

天才の考えが理解されず、凡人の「多数決」に殺される、、、

これは何度も繰り返される
「集団と化した人間に起こる習性」と言えるかもしれません。


■実はこの話、ずっと昔から議論されています。
スペインの哲学者オルテガ(1883-1955)は、著書『大衆の反逆』にて、
このような話を語りました。

”私たち人間は、「選ばれた優秀な少数」と「大衆」に分かれる。
たとえ「選ばれた優秀な少数」の意見が正しくとも、
「大衆」が集まることで、すなわち大衆の多数決によって「選ばれた少数」を殺す”

、、、と。
(注:私の解釈で意訳をしています)

1930年、今から100年近く前の話です。

オルテガの伝えるメッセージは、
更に深く、より考えさせられるものですが、
根底としている考えは、同じなのだろう、と私は思います。


■繰り返しますが、結局、人も組織も、
「何度も同じことを繰り返している」のです。

そしてその過ちを繰り返す理由は、
【その構造を我々が学んでいないから】なのです。

創造性が高い人は、多数決で理解されない。
”出過ぎた杭”として叩かれ排除される、、、

その構造を私たちは知るべきだろう、と思うのです。



■どうすれば「天才」を殺さずに生かすことができるのか。
そして、「凡人」「秀才」の役割とは何なのか。


天才の意見は、天才だけでは広がる事はないのです。

共感し、間に立つ「凡人」がいること、
そして「サイエンス」を仲介する秀才がいることにより、
市民権を獲得することができる。

どれがいい、悪いではなくあくまでも「特質」の問題。

また、100:0ではなく、
誰の中にも、「天才・秀才・凡人」がそれぞれの割合で存在する。


■私達にとって大切な事は、『知ること』です。

・自分がどのような才能持っているのか、を知ること
・そして、その才能という武器の活かし方を知ること

もそう。

・天才(創造性)、秀才(再現性)、凡人(共感性)の違いを認識すること
・アートとサイエンスの特徴を知ること
・凡人が多数決で天才を殺す構造を知ること

そのような事実を「学ぶ」ことが、
自分自身を生かし、天才を生かし、
組織の全ての人を活かすことに繋がる、、、

そのようなメッセージを感じる一冊です。


■これまで、いろいろなキャリアの本や、
リーダーシップの本を読んできましたが、
このような切り口の本は初めて。

・組織論
・人間心理・集団心理
・人の才能

これだけ行間がある個々の考えを
きれいに、シンプルにまとめた本は珍しいな、と思います。

なんとも説明しづらい本ではありますが、
非常に面白い一冊です。

よろしければ、ぜひ。

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<今週の一冊>

『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』
(著:北野唯我)


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