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2770号 2021年9月21日

「学ぶってなんだ?」の理論と歴史(後半)ー認知主義と状況論ー

(本日のお話 2253字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日月曜日は、1件のミーティング。

また妻とともに
映画「竜とそばかすの姫」を
観に行ってまいりました。



さて、本日のお話です。

昨日、

「学ぶってなんだ?」の理論と歴史(前半)
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/3971522/

とのことで、

学習研究100余年の道のりの前半、

「初期記憶研究」と「行動主義」の
お話をお伝えさせて頂きました。

今日も続けてまいります。

タイトルは、

【「学ぶってなんだ?」の理論と歴史(後半)ー認知主義と状況論ー】

それではどうぞ。

■「学ぶ」こと。

日々、
当たり前のように行っていますが、
実際にどのように私たちは”学んで”いるのか?

このことを調べたのが
学習研究でした。



昨日は

・エビングハウスの忘却曲線
(初期記憶研究/1900年)

・パブロフの犬の実験
(行動主義/1920年)

の話をしましたが、

1970年代になると、

”人のアタマの構造”

に関心が移っていきます。

つまり、

・アタマの中に何が蓄えられていて
・どのように動いているのかを知りたい

ということで、
理解の仕方に、研究の焦点が
うつっていきます。

■そして、人の学びとは

”頭=コンピュータ”
(Atkinson & Shiffrin 1971)

という仮説で、

1、情報の入力

2、視覚、聴覚、触覚などでキャッチ

3、短期貯蔵庫(STS):一時的な作動記憶

4、長期貯蔵庫(LTS):永続的な記憶の貯蔵庫

という理解の構造になっているのでは

と考えられるようになっていきます。

そしてこれが、
「認知主義」と呼ばれるものです。

■「認知心理学」の実験により、
様々なことがわかりました。

例えば、
「3,短期貯蔵庫」→「4,長期貯蔵庫」という
考え方から、

『リハーサル(復唱)をすることで
記憶が促進される』

というテクニックが
生まれましたし、

あるいは、短期貯蔵庫の特徴を
探求することで、

『マジカルナンバー7±2』
(短期記憶に一度に覚えられる数は7±2)

など、いわゆる

「記憶術」と言われる考えも
発展していったのでした。

■、、、と、ここまでの
「学習研究」の歴史は

・初期記憶研究(1900年)
・行動主義(1920年)
・認知主義(1970年)

の特徴からわかるように

”学習とは
「個人の頭の中で起こる」こと”

が前提なのでした。

■ゆえに、
教師の教え方もそうなります。

つまり、

「知識を生徒のアタマに入れる」

となるわけです。

『導管モデル』ともいわれ、

あたかも、ガソリンスタンドのホースで
ガソリンをドボドボ車に流し入れるように、

「生徒の脳に、知識を
ドボドボ注ぎ込むことで学習は起きる」

という”詰め込み教育”にも
繋がる考えになっていたのでした。

■しかし、
1990年になると違った観点から、
学習が考えられるようになります。

それが

【状況主義(1990年)】

です。

この考えは、

”人の有能さは
「状況」に埋め込まれている”

とされる考え方です。

つまり

・人の有能さは、
「個人の頭の中だけ」の、
処理能力や記憶の量などではなく、

・人の有能さとは、
「個人の周りの人や道具」などを含めた
システムとしてのアレンジ力にある

とするのです。

■ちょっとわかりづらいですが、
具体的に考えるとわかります。

私(紀藤)の例で恐縮ですが、

”私がクライアントの質問に答える”

という場面で、
しばしばこの状況主義を感じます。

つまり

”「周りの人や道具を含めた有能さ」を
発揮している”

と感じるのです。

■例えば、人材課題や組織課題など
お客様から相談をされたとします。

そこで、

コーチングの理論とか
リーダーシップの理論など
質問をいただいた、

とします。

そうすると、私(紀藤)は

「◯◯リーダーシップって、
キーワードは思い出せるんだけど、
その先が思い出せない、、、(汗)」

となったりします。

■しかし、
そこに「道具」が登場します。

それは、

・ノートパソコン
・メルマガのバックナンバー

です。

以下のメルマガサイト(道具)に、
https://www.courage-sapuri.jp/

過去自分が学んだことを
自分の言葉で記述をしています。

「前、この理論について、
メルマガで書いたんだよなー」
(でも、書いた内容も忘れた)

という状況で、

このメルマガサイトは「道具」として
自分の「外部記憶貯蔵庫」の役割をはたします。

「キーワードからバックナンバーを探す」で
打ち込み、その内容を5秒眺めれば、
記憶を呼び起こされるのです。

■つまり、

”「私(紀藤)の断片的な記憶」と
「外部記憶貯蔵庫としてのメルマガサイト」が
システムとして駆動して、質問に回答できる”

ことができているわけであり

これが、私のある一分野における
”有能さ”へと繋がっている、、、

となります。

■その他にも、

”誰かの助けを借りて
自分の能力を発揮することができる”

というのは、

「自分以外の人」を巻き込んだ
状況論としての学習の方法です。

これはロシアの心理学者ヴィゴツキーが
「最近接発達領域」として提唱をしました。

また、レイブ&ウェンガーは

「正統的周辺参加」として、
職場での学習とは、

”コミュニティーの周辺から
徐々に中心部に関わっていき、
トレーニングがなくても学びが深まっていく”

という学習モデルを示しました。

■、、、と

学習の系譜をさかのぼってきましたが、
いかがでしたでしょうか。

この学習研究の話も、
私も何度も聞いているはずなのに、
(やっぱり何度も)忘れております。

ゆえに、今回、

・認知主義
(メルマガによるリハーサル(復唱)により
長期記憶へ転換)

・状況主義
(メルマガという”道具”に
記録することで思い出せるようにする)

という工夫も含めて
記載をしてみました。

すぐに役立つヒントには
なりづらいかもしれませんが、

基礎的な考えを知っておくと、
色々と応用もできる(かも)知れませんね。

皆さまの参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

大学とは、学習の場である。ビジネスも、学習の場である。
人生そのものが、学習の場なのだ。

トーマス・エジソン

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