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3475号 2023年8月29日

チームを知るためのお勧め論文!「チームメンバー交換関係(TMX)」ってなんだ?

(本日のお話 2995字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は7件の個別コーチング。
また夜は10kmのランニングでした。



さて、本日のお話です。

「チームの人間関係」は
私たちの仕事の上で重要である

ということに否定される方は
少ないのではないかと思います。

その中で、今日は
チーム内の人間関係に関する代表的な理論、

「Team member Exchange」
(チームメンバーの交換関係=TMX)

について、あるレビュー論文を
ご紹介させていただければと思います。



ということで早速まいりましょう。

タイトルは

【チームを知るためのお勧め論文!「チームメンバー交換関係(TMX)」ってなんだ? 】

それではどうぞ。

■チームの関係性に関する理論に

「Team member Exchange」

と呼ばれるものがあります。

これは、

”チーム内の人間関係の質に関する
個人の認知”

を意味しています。

多くの研究で、
チームプロセスの重要性は指摘されている一方、
この分野の研究はまだまだ少ない様子。

その中で本日ご紹介する論文、

Chen, Zheng.(2018).
『チームメンバー交換関係に関する文献レビューと展望』
”A Literature Review of Team-Member Exchange and Prospects.”
International Journal of Biodiversity Science, Ecosystems Services & Management

では、

・チームメンバー交換関係に関する研究を網羅的にレビューし、
本理論の将来の方向性を検討する

というテーマで書かれています。

チーム内の人間関係って
やっぱり大事なんだ、、、!

とも思わされますし、

どのようなことで
チームメンバー交換関係が高まるのかが
整理されている論文です。

■ということで、以下
本論文の内容をまとめてみました。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【『チームメンバー交換関係に関する文献レビューと展望』まとめ Chen, Zheng.(2018).】

<要旨>

・チームメンバー交換関係(TMX)に関する研究を網羅的にレビューし、
本理論の将来の方向性を検討すること

<研究の原点>

・1989年にTMXの概念が対照される以前は
「Leader Member Exchange」(リーダーとメンバーの交換関係)のほうが
注目されていた。

・LMXは、従業員のパフォーマンス、職務満足度、組織市民行動、
組織コミットメント、離職以降に大きな影響を与えていることが知られている

・しかし、シェアド・リーダーシップや、セルフマネジメントチームなどが出現し
リーダーシップの影響は相対的に弱くなっている可能性がある。
つまり、チームの影響が強くなったとも言える。

・その中で、TMXのコンセプトが注目された。
その理由としては

1,TMXによってチーム内部の交換関係を包括的に理解できるから
(LMXの垂直関係ではなく、チームの水平関係を理解できるため
LMXの補完的な役割も果たすことができる)

2、「チーム」は実践的・学術的な領域で高い関心を集めているため

<概念>

・TMXとは、チームメンバー間の相互交流のプロセスを意味する。
メンバーへの支援、アイデア、フィードバックの提供や
他メンバーからの情報、助け、承認を得ることを意味する

・TMXの質が高ければ高いほど、メンバー間の互恵性は強くなる。
つまり、他のメンバーから認められ報われるため、
チームの目標を一緒に達成するための貢献意欲が高まる。

・TMXには、2種類のタイプがある。
-タスク志向の交換: アイデアの共有、フィードバック、情報、知識の共有
-関係志向の交換: 助け、ケア、サポート、類似した価値観や基準、親密さ、プライベートな共有、友情、励ましなど

・低品質のLMXは、タスク志向の交換しか含まれないが
高品質のLMXは、タスク志向、関係志向の交換の両方が含まれる。

<TMXの次元と測定方法>

・Seers(1989)はTMXの3つの次元として、以下を挙げた
-「ミーティング(Meeting)」:チームミーティングの有効性のこと
-「交換(Exchange)」:メンバーとチームの双方向の相互行為(サポートやフィードバック、アイデア共有など)のこと
-「凝集(Cohesion)」:協力、集団の同一性、コミットメント、積極的な相互依存などの共通の帰属意識のこと

・Seers(1995)は、TMXの質を測定するために10個の測定項目を挙げた。以下の通りある。

1,より良い仕事の方法について、他のチームメンバーに提案する頻度はどれくらいですか?
2,あなたのチームの他のメンバーは、あなたが自分の仕事をやりやすく(あるいはやりにくく)するようなことをしたとき、たいていあなたに知らせてくれますか?
3,自分の仕事をやりやすくする(あるいはやりにくくする)ために、他のチームメンバーが何かをしたときに、それを知らせることはどれくらいありますか?
4,あなたのチームの他のメンバーは、あなたの潜在能力をどの程度認識していますか?
5,あなたのチームの他のメンバーは、あなたの問題やニーズをどの程度理解していますか?
6,他のチームメンバーが仕事をしやすいように、あなたはどの程度柔軟に職務を転換できますか?
7,忙しいとき、他のチームメンバーはどれくらいの頻度であなたに支援を求めますか?
8,忙しい状況の中で、あなたはチームの他のメンバーを助けるために、どれくらいの頻度でボランティアとして自分の努力を捧げていますか?
9,他の人に任された仕事の仕上げを手伝う意欲はありますか?
10、あなたのチームの他のメンバーは、あなたに割り当てられた仕事を終わらせるのに、どの程度積極的ですか?

<TMXの背景理論>

・互恵性理論(人は他者が自分にしてくれたことに同じように応えようとする)
・役割理論(メンバーは自分の役割の認知に従い、適合した行動を学習する)

<TMXを予測するもの>

◯個人レベル
・感情的知性
・職場の友情
・組織的公正
・チーム志向
・リーダーとメンバーの交換関係(LMX)

◯チームレベル
・チームの特徴(新規チーム・解散間際チーム・長期のチーム・一時的なチーム)
・グループの凝集性
・リーダーとメンバーの交換関係の分化(LMXD)※リーダー-メンバー間の交換関係に差があること

◯状況要因
・リーダーシップスタイル
・タスクの特徴(複雑性がある方が相互協力が必要になり、TMXが高くなる)

<TMXの影響(効果)>

以下、TMXが与える影響である。
一次成果としては、個人レベルとチームレベルにまとめる。

◯個人レベル
・知識の共有
・チームコミットメントと組織コミットメント
・仕事への参加と関与
・援助行動
・内発的モチベーション
・自己効力感

◯チームレベル
・チームの凝集性
・チームの協力

また二次成果として、

・チームメンバーの職務遂行能力、職務満足度、組織コミットメントを向上させる
・TMXが高いと、従業員の離職傾向が少ない ことがわかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■実にシンプルかつ、
わかりやすくまとめられており、

チームメンバーの交換関係の全体像が
よく分かる論文でした。

個人的な感想ですが、
「強みの相互フィードバック」などは
まさにこのTMXに影響を与えるように思います。

私の想像ですが、
日本はチームの強さはある一方、
謙虚さや恥の文化の影響か、

お互いの相互承認を
なかなかできていないことが
あるように思っています。

その中で、お互いを認め、承認することで
元々日本が持っているチームの強さが
向上していくのではなかろうか、、、

そんなことを感じさせられた次第です。

チームビルディング等の介入前後で
ぜひとってみたい尺度とも感じました。

ということで、本日は論文のご紹介でした!

チームの関係性についても、
こうした研究から見ると
全体像(定義や効果)がわかってとても整理がされますね。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

全く違う知識や考えを持った人と、
まず対話できることこそ大事だ。

盛田昭夫
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